新しい企業誘致の考え方で地方の活性化を!
HS政経塾六期生 坂本麻貴
◆リニア開通で地方の人口はどうなる?
リニア中央新幹線の開通が、2027年に品川―名古屋間、その10年後には、大阪までが開通する予定です。
それに向けて、国土交通省は先月24日、経済効果などを高めるインフラ整備や制度設計を目的とした調査プロジェクトを年度内に立ち上げることを決めました。
リニア開業は移動時間の大幅短縮に伴う新たな人やモノの流れだけでなく、ライフスタイルそのものにも変革を起こす可能性があり、国交省は早期に青写真を示し、地方との意思統一も図っていく考えのようです。
リニア中央新幹線は、品川-名古屋間をおよそ40分で結びます。(大阪まで67分)そうすれば地方へ人口を集めることができ、地方の活性化が見込まれます。
一方、逆に都心部に地方の労働人口が吸い上げられ、格差が一層深まるのではないかと言った懸念も指摘されています。
地方を元気にするためには、地方に住む若者を増やすことが課題だとして、政府は「まち・ひと・しごと創生本部」を設置し、「地方における安定した雇用の創出」、「地方への新しいひとの流れをつくる」といった目標のもとに政策を講じています。
◆「亀山モデル」にみる企業誘致の成功と陰り
三重県は全国に先駆けて大規模な企業誘致を行ってきました。クリスタルバレー構想として、シャープ㈱を亀山市に誘致した例で、『亀山方式』とよばれるほど一時期大きな注目をあびました。
『亀山方式』とは、大型の補助金や助成金によって企業にインセンティブを支払うというもので、当時シャープの誘致に県と市が投入した補助金は135億円でした。
また、用水や道路のなど受け皿の準備にも力を入れ、企業のニーズに合った立地条件をつくりました。
県によると、その成果は大きく、関連企業も含めて、2004年の創業から2011年には雇用者数は2.8倍の7100名に増え、税収も315億円になり、投入した補助金以上の効果があったとしています。
しかし、家電業界では工場閉鎖や売却が増えているのが現状です。
例えば、愛知県一宮市に立地していたソニーのテレビ工場は2009年に閉鎖されました。また2012年には大阪府貝塚市のパナソニックの工場も閉鎖しています。
前述のシャープに関しても、今年8月12日には台湾の鴻海精密工業によるシャープ買収の手続きが完了しました。
家電工場中心の誘致政策にも陰りが見えつつあるのが現状です。
◆新たな産業誘致を
今まで企業を地方に誘致する際、『亀山方式』のような、補助金・助成金でのバックアップや、「企業立地促進法」 による税制面での優遇などの処置がとられることが一般的でした。
その際は、地方税収の中で約25% をしめる固定資産税の減免です。固定資産税は地方税ですが、海外を見ると国税である法人税を減免する国も多いのです。
例えばシンガポールは新規企業の法人税は最長15年間免除、タイ王国では8年間免除、その後5年間は5割減免という優遇策がとられています。
外資系企業を誘致するにしても、こうした状況から日本へ誘致するメリットは少ないということが言えます。
工場中心の企業誘致に行き詰まり、外資系企業も見込みが少ないとなると今後、どういう分野の企業を誘致するのかということが非常に重要です。
◆地方が活性化するためには
現在、成長産業と言われる分野には、「航空宇宙産業」、「医療」、「食」が挙げられます。
航空宇宙産業では、既に愛知県の旗振りで「アジアNO.1航空宇宙クラスター形成特区」が行われています。また、医療分野についても「あいち医療イノベーション推進特区」をすすめています。
三重県を例にすると、同県は井村屋製菓㈱(上場)や㈱柿安(上場)、㈱おやつカンパニー(非上場)など、食分野の企業が多く立地しています。また、和牛や海産物にも恵まれ、茶業でも全国3位のシェア を持っています。
今後、三重県において一つの可能性として、食産業を誘致し集積地をつくることで新たな集積地をつくり、世界的な人口増加に伴う食糧問題に取り組んでいくことが上げられます。
地方の活性化の問題は、国内の人口をどう呼び寄せるかという「パイの奪い合い」から視点を変え、「世界で問題になっていることは何か」ということに目を向けることが解決の鍵なのです。