アパレル産業から見る消費構造の変化
HS政経塾第6期生 山本慈(やまもと・めぐみ)
◆百貨店でのアパレル購買量が減っている
10月6日、セブン&アイ・ホールディングスは、百貨店の不採算店舗が増えたことから、傘下のそごう・西武3店舗をエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)に譲渡することを発表しました。
この譲渡を起点に、今後百貨店事業を大幅に縮小する方針です。
昨年まで大賑わいだった中国人の「爆買い」も一変し、現在、デパートでは閑古鳥が鳴いています。
◆百貨店の客足は減ったけど・・・?
百貨店から客足が減った原因は、「H&M」等のファストファッションやネット通販の台頭です。
1998年に設立したベンチャー企業スタート・トゥデイは、2004年にファッション通販サイトZOZOTOWNを開始し、2014年、商品取扱高1000億円を突破し、株価では三越伊勢丹を追い抜いています(2016年9月23日ベース)。
年間購入者数も300万人を突破し、利用者は増加傾向にあると発表しています。
◆最近の消費者志向
ネット通販サイトを利用する層は、「富裕層」でも「低所得層」でもない「中間層」が占めています。どうやら彼らのライフスタイルと購買志向の変化が、ネット通販サイトの台頭を支えているようです。
日経ビジネスのアンケートによれば、仕事の帰宅時間は商業施設が閉店した後で、休日はあまり買い物に行かず、ネットで代替できないライブや美術鑑賞をしているということです。
ネット通販も商品サイズや口コミ、レビューで詳しい商品情報を得ることができることと、家にいても、電車の中でも、仕事の休憩時間でも、手軽に買えるというメリットがネット通販の強みでしょう。
総務省「家計調査」調べから統計された「家計の消費支出の割合の推移」をたどっても、支出の割合がモノからサービスへ移行しています。
このようなライフスタイルの変化が、消費構造がモノからサービスへ移動しつつあると推察できます。
◆最近、違うブランドでも似た服が多い?
アパレルに興味がある人は、すぐ共感されると思いますが、違うブランドでも似たような服が多いことをご存知でしょうか。
他ブランドで類似品が販売されている原因は、アパレル企業がOEMメーカーや商社に製造を発注しているからです。
この商品の同質化も購買量の低下に影響しています。そんな中、GUなど自社独自の製品を売り出しているブランドは、収益が好調という結果を残しています。
◆新創造の努力と製品の差別化がビジネスチャンス
ライフスタイルと購買志向の変化からみえる、モノからサービスへの消費構造変革が起きている時代に、モノでどのようにライフスタイルの提案ができるかが重要となってくるでしょう。
また爆買いの収拾の裏で、中国人による中国向けの個人輸出(仲介人)がでてきており、流通には、まだまだビジネスチャンスが隠れています。
こうした消費構造の変化が起きている中で、必要なことは、「創造の努力」と「製品の差別化」であり、それがビジネスチャンスとなっていきます。
日本の経営者は、中国の爆買いの収束に敗けることなく、創造性を磨き努力をしていくことが大切です。
※参考資料
みなと銀行グループ (株)みなとコンサルティング「【調査】消費構造の変化 ~モノからサービスへ~」
日経ビジネス10月3日号
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