幸福実現党の一貫した主張と脱原発知事の失速
幸福実現党・政務調査会チーフ 小鮒将人
◆「脱原発」のトレンドが変わった
2011年の東日本大震災以来、原子力発電については、左翼マスコミや言論人等の発信の影響もあり、否定的に捉えられ続けてきました。
また民主党菅政権による浜岡原発の停止要請をきっかけとして、一時は全国すべての原子力発電所の稼働が停止しました。
そして、菅政権の下で設置された原子力規制委員会が、2013年7月に世界で最も厳しいとされる安全基準(新規制基準)を策定し、その新規制基準への適合性審査が遅々として進まないこと、一部の地域で「脱原発」を標榜する知事が、原発の再稼働について、規制以上の厳格な対応を国及び電力会社に要求したことから、現在でもほとんどの原発が停止しています。
法的な定めはありませんが、原発が立地する自治体と電力会社は「原子力安全協定」を結び、増設の際の事前協議などを約束してきた関係で、再稼働には事実上地元の同意が必要とされてきました。このため、法令に基づく新規制基準への適合性審査に合格しても、知事が反対した場合には、原発の再稼働が進まないということが起こり得ます。
しかしながら、すでに「原発事故」から5年経過し、新規制基準への適合性審査に合格した一部の原発では再稼働の動きが進められています。そのうち、九州電力の川内原発1、2号機(鹿児島県)と四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)が運転を再開し、電力を供給しています。
◆鹿児島県三反園知事による「脱原発」の活動
7月の参院選と同時に行われた鹿児島県知事選では、元テレビ朝日記者として全国的にも知名度の高い三反園訓(みたぞのさとし)氏が当選しました。
その選挙戦において三反園氏は、川内原発の再稼働を推し進めた伊藤知事(当時)を批判、「脱原発」を推進し、民進党・社民党などの左翼陣営の県組織及び反原発を訴える市民団体、県政に批判的な保守系の県議の支持も受け、初当選を果たしました。
そして当選後、三反園氏はその公約の実現に向け、8月26日に県庁に九州電力の瓜生社長を呼びつけ「川内原発を即時停止し断層調査及び設備点検を行う事」の要請を九州電力に行い、今月にも同様の要請を行いました。
九電による回答は更なる安全性を高める努力を行いながら稼働を継続する、というものであり、即時停止を拒否した形となりました。
また、川内原発の再稼働によって、九州電力の経営基盤が大きく改善されました。
産業の基礎となるエネルギー供給の企業経営が安定することは国益の立場から考えてもよい影響となったのではないでしょうか。
◆新潟県泉田知事は4選不出馬を表明
また、柏崎刈羽原発が所在する新潟県の泉田知事も、福島原発事故以来、一貫して原発再稼働に反対してきました。
3年前の2013年にも泉田知事が突如、「地元への調整がない」という理由で、東電との話し合いを拒否。関係者を大変困惑させただけでなく、地域経済にも深刻な影響を与えています。
泉田知事は一時、10月に行われる新潟県知事選4選出馬を表明していたものの、最終的に不出馬となったようです。
県が出資する海運会社の子会社が、韓国企業とフェリー購入を巡ってトラブルになり、地元紙が「県が深く関与している」と責任を追及する報道を展開していたことが不出馬に至った直接の原因と言われています。
現在、地元である柏崎市・刈羽村では、新知事の元で原発再稼働の実現に向けて、大きな期待が寄せられているようです。
このように、各地で「脱原発」を標榜していた知事が、原発再稼働の大きな流れに抵抗しているものの、この流れを止めることが出来なくなっているというのが現状です。
◆脱原発の危険性を訴え続けた幸福実現党
幸福実現党は、安全が確認された原発については、速やかに再稼働することを求め、一貫して原発再稼働の必要性を訴え続けました。
例えば「原発事故」の記憶も生々しい2012年10月の衆院鹿児島3区補選では、党公認の松澤力(まつざわいさお)候補が、選挙区内に所在し当時は稼働を停止中の川内原発について、自民党公認候補等、4人の候補者の中で唯一、再稼働を主張しました。
また、今夏に行われた参議院選挙において、柏崎刈羽原発が所在する新潟でも横井基至(よこいもとゆき)候補が、泉田知事の判断を批判しつつ、ここでも原発再稼働の必要性を訴え、多くの有権者の支持を広げました。
薩摩川内市 まつざわ力(いさお)webサイト
http://www.matsuzawaisao.jp/
新潟県阿賀野市 横井もとゆきwebサイト
https://motoyukiyokoi.amebaownd.com/
◆シーレーン確保が危うい現在、求められるのは国益の立場からの議論
すでに何回も当ニュースファイルでも訴えてきたとおり、日本は石油や液化天然ガス(LNG)等の化石燃料をすべて輸入に依存しており、その海上交通路(シーレーン)の確保が困難となる可能性が高まっています。
特に、フィリピンのドゥテルテ新大統領が、反米色を出し始めており、南シナ海海域でのアメリカの影響力が低下し、中国の覇権拡大が日本の船舶の通行の自由を脅かす可能性があります。
この事態が進むと、我が党が、何度も警告を重ねてきたシーレーンの確保ができなくなるかもしれないのです。
現在、日本は原油については80%以上、LNGについては3分の1程度を、中東からの輸入に依存しています。
これに加えて、LNGの50%程度、石炭の80%程度を、東南アジア・オーストラリアから輸入しています。
したがって、もし南シナ海が封鎖された場合には、化石燃料のほとんどが日本に輸入できなくなり、突如エネルギー危機に陥る可能性があります。
そうした意味で、幸福実現党はエネルギー資源調達の多様化を主張しており、例えばロシアとのエネルギー資源外交を積極的に展開し、一定量の原油・天然ガスをロシアから輸入し、シーレーンにおける不測の事態に備えることを提案しています。
しかし、電力については、原子力発電を有効活用することによって、シーレーンの影響をできるだけ抑え、安定供給を確保することが可能です。
各都道府県知事の判断も、地域の声を代表する立場として重要であることは言うまでもありませんが、幸福実現党は、国の安全保障を左右するエネルギー政策のような国家的課題に対しては、国益の立場からの判断が重要であることを訴えております。
今後とも皆さまのご理解をいただきますよう、お願いいたします。
執筆者:こぶな 将人