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エンジェル投資で日本を元気に!――「既存企業によるベンチャー投資」編

文/HS政経塾4期卒塾生 西邑拓真(にしむら たくま)

◆日本におけるベンチャー投資

前回は、日本の起業立国化にとって重要なプレイヤーである「エンジェル投資家」に着目し、個人投資家によるベンチャー投資の拡大のために、エンジェル税制改革の一環として、その方式を「所得控除方式」から「税額控除方式」へ変更すべきことを提言致しました。

エンジェル投資で日本を元気に!−−−「個人投資家」編
http://hrp-newsfile.jp/2016/2649/

ただ、わが国でベンチャー投資を拡大していくためには、個人投資家だけに留まらず、現在、多額の内部留保を抱える一方で、成長面で「行き詰まり」に直面しつつある「大企業」に焦点を当て、ベンチャー投資の活性化策を打ち出す必要があります。

そこで当稿では、「企業版エンジェル税制」をテーマに、大企業によるベンチャー投資のスキームとしての「コーポレート・ベンチャー・キャピタル(Corporate Venture Capital; CVC)」の推進の可能性を探って参ります。

◆コーポレート・ベンチャー・キャピタルとは

CVCとは、端的に言えば、内部資金を抱えた既存企業が経営支援(ハンズ・オン)などといったベンチャー・キャピタルと同様の活動を伴いながら、ベンチャー企業へ投資を行う主体のことを指します。

大企業側は潤沢な資金力を生かして「新しい事業の種」を獲得し、「行き詰まり」を打開する必要に迫られています。

他方で、「新しい種」を持つ可能性を有するベンチャー企業側は、資金や、経営ノウハウ、販路網といった比較的大企業が強みを持つような経営資源を必要としています。

こうした双方のニーズを満たすのがCVCです。

すなわち、両者のニーズを満たし、双方にとってwin-win関係を構築させるスキームこそCVCであるわけです。

◆企業のベンチャー投資促進税制

日本において、CVCの重要性が認識され、それを推進しようとする動きはあるものの、その動きは、大企業のごく一部に留まっているのが現状です。

この状況を踏まえ、日本商工会議所が「平成26年度税制に関する意見」の中で「法人版エンジェル税制」の必要性に言及したり、あるいは、ベンチャー業界からも、十分な資金量を確保する必要性などから、当税制の実現を望む声が以前から多く挙がっていました。

このように産業界からの「法人版エンジェル税制」実現に対する強い声が上がる中で、2014年1月に安倍内閣において「企業のベンチャー投資促進税制」が実現しました。

これは、国が認定したベンチャー・ファンドを通じて、企業がベンチャー企業へ投資を行うとき、出資金額の80%を「損金算入」とすることを認めることで、法人税の減税措置が受けられるという制度です。

しかし、当税制が施行されて2年あまり経過しましたが、現在、政府から認定を受けているファンドはたったの3つしかなく、当税制が十分に機能せず有効利用されていないのが現状です。

したがって、当税制の問題点を排除することで、税制の活用を推し進めなくてはなりません。

◆税制改革に向けて

当税制の阻害要因の一つに、「出資金額の合計が20億円以上でなければならない」という、ファンド規模に関する対象要件の存在が指摘できます。

これに関し、企業経営者から「この税制を通じて減税措置を受けたいものの、この要件はハードルが高すぎる」という声が挙がっているのが現状です。

この要件を緩和、あるいは撤廃することによって、減税策を受けられる裾野を広げるべきです。

2013年に、安倍政権がアベノミクス「三本目の矢」である「成長戦略」の一環として「産業競争力強化法」を成立させ、その中で「ベンチャー企業への資金供給を増大させる必要性」が謳われています。

しかし、もし税収減等を恐れて対象要件の見直しに着手できないというのであれば、「競争力強化法」本来の意義に沿わないことは明らかです。

またその他にも、ファンドを通じた「間接出資」だけでなく「直接出資」も減税措置の対象に加えたり、2017年3月までの時限立法措置を改変してこれを恒久化させることで、「今後も持続的に、企業によるベンチャー投資を国として広く推進していく」というシグナルを浸透させていく必要があります。

日本は、起業立国の実現に向けて、CVCを推進させる可能性を持つ「法人版エンジェル税制」に当たる「企業のベンチャー投資促進税制」を実質的に機能させるよう、その大幅な見直しに今迫られています。

西邑拓真

執筆者:西邑拓真

HS政経塾4期生

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