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進撃の「狂人?」の核開発への対策――消去法で見た「残りの選択肢」とは

文/HS政経塾スタッフ遠藤明成

◆北朝鮮の“進撃”が止まらない?

北朝鮮は1月6日に核実験、2月7日にミサイル発射実験を行いましたが、核ミサイル開発は、それだけで止まっていません。

産経ニュース(2016.2.10)では、クラッパー米国家情報長官が2月9日に上院軍事委員会に提出した報告書の内容が取りあげられています。

・北朝鮮は、寧辺の実験用黒鉛減速炉(原子炉)を再稼働させ、使用済み核燃料を用いて数週間から数カ月内にプルトニウム抽出を始めることができる。

・寧辺でウラン濃縮施設が拡大。プルトニウムと高濃縮ウランを用いて核兵器の追加生産が可能になる危険性がある。

ここでいう、「黒鉛減速炉」は通常の原子炉とは違い、核兵器をつくるための原子炉です。

要するに、飢えた国民を見殺しにして軍拡を目指す、「人を食った」独裁者は、ウランを濃縮し、軍用原子炉を動かして、核開発に向けて「進撃」する構えを見せているわけです。

◆核ミサイル開発を止められない「具体策」の一覧

北朝鮮に対しては、90年代から様々な「対策」が講じられましたが、過去の経緯を見れば、実際に核開発を止める効果は乏しいことがわかります。

1:95年~00年までに累計108万トンのコメ援助と引き換えに開発停止を要求
→98年にテポドンミサイル発射実験

2:2003年から08年に行われた六か国協議(日、米、韓、中、露、北)
→09年に核実験と長距離ミサイル発射実験、12年に長距離ミサイル実験。

3:「対話」路線(14年に日本は制裁緩和)
→15年に無回答。16年に核実験とミサイル実験で「返答」

4:経済制裁
06年以降、日本は北朝鮮籍者の入国禁止、北朝鮮籍船の入港禁止、北朝鮮に送る貨物の輸出禁止、北朝鮮からの貨物の輸入禁止などを講じてきたが、今日まで北朝鮮の核ミサイル開発が続く。

制裁強化は必要ですが、過去の経緯を見る限り、これだけで北朝鮮の核開発が止まるとは考えにくいのが現実です。

◆本当に有効な「対策」として残るのは何?

実際は、日本が外交で北朝鮮に行使できる影響力は限られています。

しかし、抜本的な防衛力の強化を図ると「軍国主義者だ」「東アジアの緊張を高めている」等とマスコミから批判されるので、支持率低下を恐れた過去の政治家たちは、前掲の対策を講じて、国民に「努力している」姿を見せようと試みてきました。

ただ、この繰り返しだけでは、もはや、どうにもなりません。

なぜかと言えば、北朝鮮は1月のブースト型原爆実験で核の「小型化」技術を高め、2月の実験では長距離ミサイルの技術水準を高めていることが明らかになったからです。

北朝鮮が弾道ミサイルに核弾頭を搭載するには、小型化技術を向上させ、大気圏外に出たミサイルがもう一度大気圏内に入るための「再突入技術」を確保すればよい、という状況になりました。

ミサイル防衛システムもありますが、百発以上の弾道ミサイルが日本に迫った時、これですべてを落とすことはできません。

そのため、北朝鮮の核開発に対抗するには、核兵器を持った米軍の部隊を日本に展開させるか、日本が北朝鮮からの攻撃を踏みとどまらせるための「抑止力」を持つしかないのです。

◆もしも米軍の核部隊が日本に展開したら?

この場合、1)非核三原則の「持ち込ませず」をなくす、2)NATОと同じように米軍の核を日米で共同運用する、という二通りのパターンが考えられます。

後者は「核シェアリング」と言われますが、この仕組みには、主導権が米軍にあることと、NPT違反にはならない、という二つの特徴があります。

ただ、沖縄返還を契機に核部隊を日本領土から引き揚げた米軍(非公式には、その後も核持ち込みはありましたが)に、このプランを要求することには、高いハードルが待っているでしょう。

◆自国の抑止力を強化するためには

そのため、実現可能性が高い策として、アメリカからの「巡航ミサイル」の導入を提言する人もいます。

米シンクタンクで海軍アドバイザー等を務める北村淳氏は、自衛隊艦艇には1000発程度のトマホークミサイルを搭載可能であり、そのための予算は1200億円程度だとも指摘しています。

これは抑止力強化の一例ですが、他の領域も含めて、日本が広く抑止力を強化するには、防衛予算のGNP1%枠の打破が必要になります。

防衛関係費の多くは人件費や維持費等に費やされるので、平成27年度予算で見ると、主要装備品等の契約に使える金額は、約5兆円の中の1兆円ほどです。抑止力を根本から強化するためには総額を増やさざるを得ないでしょう。

フランスやイギリス、インド、トルコ、シンガポール、韓国などは、2014年に、GNP比で2%以上の軍事予算を使っています(世界銀行HP)。

中国やロシアなどの核保有国に包囲された日本が、GDP比で見て、これらの国々と同じ比率の防衛予算を使ってはいけない合理的な理由は見当たりません。

本年は選挙があるため、自公政権は「外交的な努力」でお茶を濁し、本来、必要な防衛政策の実現には踏みこまない可能性が高いのですが、こうした時だからこそ、幸福実現党が訴える抜本的な防衛強化の具体策が必要だと言えます。

※政策の例(「幸福実現党政務調査会政策提言集2015」より)

・防衛費倍増による抑止力強化

・近隣国の核ミサイルに対処するため、巡航ミサイルなどの敵基地攻撃能力を保有

・非核三原則の撤廃、日米核シェアリングの実施についても検討

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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