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沖縄独立と台湾独立、正当性があるのはどちら?

文/HS政経塾スタッフ 遠藤 明成

◆今後の安保政策の争点――普天間基地移設問題

米軍普天間飛行場の移設に関して、翁長雄志・沖縄県知事は10月13日に辺野古沿岸への埋め立て承認を取り消しました。

政府は、以下の二つの措置で対抗しています。

(1) 取消処分の効力停止

翁長知事の承認取り消しに対して、移設を担う防衛省が県知事の取消処分の効力停止を国土交通相に申し立てました。

この主張が認められ、防衛省は作業を再開しています。

(2) 代執行

また、政府は、国交相に知事の代わりに事務手続きを行わせようとしています。

これは知事に代わって取消処分を撤回する手続きです。

(大臣の是正勧告に知事が従わない場合、高等裁判所で訴訟をし、これに国が勝てば代執行となる)

防衛省の作業再開と「代執行」が同時に進められる背景には、移設に際して、裁判所のお墨付きを得たいという意図があります。

これに対して、沖縄県は取消処分の効力停止を不服とし、第三者機関の「国地方係争処理委員会」に審査を申し出ています。

ここで否認された場合は、沖縄県は訴訟に持ち込むことでしょう。

◆「沖縄の自己決定権」?

この「辺野古の闘争」に際しては、「沖縄の自己決定権」という標語が用いられています。

例えば、連載記事をまとめて『沖縄の自己決定権』と題した書籍を刊行した琉球新報社は、「日本政府は、主体的生き方を法律でつぶそうとする。その象徴が辺野古の闘いだ」(大城立裕氏・作家)という発言を紹介し、この書籍をPRしています(※1)。

しかし、そもそも、「自己決定権」とは何なのでしょうか。

これは、「自分自身に関する重要な事柄を自分自身で決める権利」(※2)のことです。

「個人の人格的実存にかかわる重要な私的事項を公権力の介入・干渉なしに各自が自律的に決定できる自由」(※3)とも言われます。

治療拒否や尊厳死、出産や堕胎、学生の髪型や服装の自由などの問題で、この権利が争われることがあります。

しかし、基地の移設は日本の外交・安保政策や国全体の安全保障に直結するので、個人的な事柄とは到底言えません(※4)。

そのため、「沖縄の自己決定権」を掲げて基地反対闘争を正当化するのは、論理的には無理があると言えます。

◆沖縄と台湾の政治運動を比較する

「沖縄の自己決定権」だけでなく、もう一つ、注意すべきなのは「沖縄独立論」です。

これは、翁長知事が県議会での答弁で、沖縄独立論について「そういう方は多くない」と答えているほど、少数派の主張だと言えます(※5)。

12年1月1日の意識調査で沖縄の取るべき立場を問うたところ、結果は「現行通り日本の一地域(県)」が61.8%、「特別区(自治州など)」が15.3%、「独立」が4.7%でした(※6)。

しかし、「台湾の独立」という政治課題を比較してみると、15年の世論調査で台湾が最終的に独立することに賛成した人は51.3%、反対した人は32.7%です(※7)。

中国は「沖縄独立」を持ちあげ、「台湾独立」を封じ込めようとしていますが、この二つの「独立」の内情は、これほどまでに違うのです。

地域の分離独立は、主権者は誰で、領土はどこかを決める議論を伴いますが、沖縄独立論には、そこに至るまでの民意の支持がありません。

◆台湾が民進党政権になった時、日本からの支援が必要になる

一方、16年1月16日の台湾総統選では、民進党の蔡英文氏の勝利が予測されています。

以前の民進党政権は、「台湾の未来は、台湾2300万国民のみが決定する権利を有する。これは台湾の国家主権地位の最も固い基礎である」(08年)と声明を出したこともあります(※8)。

中国の影響力も拡大しているので、民進党が以前ほど強い姿勢を取れるかどうかは未知数ですが、日本は、台湾が自由民主主義の側に立ち続けられるように、支援を続けなければなりません。

「東アジアで自由の領域が拡大するか縮小するかの問題は、最終的に日本の未来に対しても大きな影響を及ぼす可能性があるから」(※4)です。

 

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『宗教こそが民主主義を発展させる』 立木秀学編著/幸福の科学出版

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1561

 

(注)
※1:『沖縄の自己決定権』琉球併合の不正から道標探る 琉球新報(15/6/21付)
※2:岡田信弘著『事例から学ぶ日本国憲法』
※3:芦部信喜著『憲法 第六版』
※4:立木秀学編著『宗教こそが民主主義を発展させる』
※5:翁長知事、沖縄独立論に否定的「そういう方は多くない」沖縄タイムス15/10/4付
※6:「方言話せる」5割切る 琉球新報 県民意識調査(12/1/1付)
※7:TISR台灣指標民調「2015年2月上期、台灣民心動態調、與本期議題調結果摘要」
※8:陳水扁総統が「台湾主権地位」に関する4点の呼びかけを発表(台湾総統府08/4/17付)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

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