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ノーベル賞受賞者・大村氏にみる理想の「科学者像」

文/幸福実現党・政務調査会 佐々木勝浩

◆日本から二人のノーベル賞

今年のノーベル生理学・医学賞には北里大学・特別栄誉教授の大村智氏が、ノーベル物理学賞には東京大学の梶田隆章氏が受賞しました。

この受賞は日本全体を明るくし、安倍首相も「日本人として誇りに思う」と讃えています。

◆「人のためになることをしろ」

テレビで大村智氏が色紙に書かれた「敬神崇祖」と言う色紙が紹介されていました。大村氏が「信仰心」を大切にされていたことが伺われます。

またインタビューを受けて、祖母の「人のためになることをしろ」という教えを強調されていたことがとても印象的でした。祖母の教えは、大村氏の人生に一貫して流れています。

今回ノーベル賞受賞のきっかけになったゴルフ場の土の中の微生物からつくられた薬は、アフリカや中南米の人々を失明から救っています。その数は年間3億人、それが無償でなされているのです。

また若いころ高校の定時制で教師をしていた時には、「油のついた手」で学ぶ生徒の姿に胸を打たれ、奮起して定時制の教師と両立しながら大学で化学を学び直し刻苦勉励しています。

祖母の教えや教え子の学問へ取り組む姿が、大村氏を次のステージへと導いていきました。後には北里研究所で微生物を分析する手法が買われ米大学に留学するチャンスもつかみました。

誰の人生にも「チャンスは平等」に用意されているものです。そのチャンスが、人生のなかで至る所にちりばめられているものです。今回の大村氏のノーベル賞受賞はそれを教えてくれています。

◆「企業家的才能」を備えた科学者

大村氏のすごいところは、定時制の教師と大学での研究の両立、刻苦勉励だけではありません。

つまり「社会に有用なアイディア」を実用化し、企業から研究資金を募れるほどのネゴシエーション力を持ち、かつ、それを実現していく力を持った科学者であるところです。

それは「日本の細菌学の父」と呼ばれた北里柴三郎を尊敬する大村氏に、『実学の精神』が流れているからでしょう。

科学者としては優れていても、その研究資金がネックとなって思うような研究ができないこともあります。それを克服する方法が「研究を経営する」ことです。

大村氏自身も、36歳で米国に留学した際に、「戻ってきても研究費はない」と言われ、米国の製薬会社を回り、帰国前に年間8万ドルの研究費の提供を3年間受ける契約を結びました。これは、「産学連携」のさきがけでもあります。

「大村方式」は、研究室で有用な科学物質を探し、医薬品開発と販売は米国の製薬会社が独占的に担い、特許を共有し、その特許料で研究室の人件費や設備投資に回す仕組みです。

「企業の下請けとならず、研究室の根幹は自分たちで決める」ことを重視しています(毎日10/6)。その特許料は驚くことに200億円以上にもなりました。

特許収益で建設された北里研究所メディカルセンター(埼玉県北本市)は、病院でありながら絵画数百点を展示しエントランスではコンサートもできます。

◆限られている私大の研究費補助金

ちなみに大村氏のノーベル受賞は、私立大の研究成果で受賞するのは初めてで、赤崎勇氏ら私立大の受賞者もいますが、受賞対象はかつて所属した国立大などでの実績でした。(毎日10/6)

文科省によると、15年度に新規採択された科研費の主要種目636億円のうち、私立大は113億円(17.8パーセント)にとどまります。

大村氏の抗生物質研究には約10億円かかっており、国からの補助は約4億円、残りを企業と組んで工面しています。

◆「他がやらない分野」と「逆転の発想」

また大村氏の成功の要因は「他がやらない分野」に活路を見出したことにあります。

当時、人間の薬を動物へ転用が多かったのですが、動物薬(寄生虫駆除の薬)を人間に転用した「逆転の発想」からアフリカや中南米の人々の失明を救う薬は生まれたのです。

こうした「逆転の発想」は研究方式にも表れています。当時の抗生物質の研究は、天然の化合物から役に立つ性質を見つけ、その後に構造を決定する流れでした。

しかし大村氏の研究はその定石を無視して逆に、化合物を見つけて構造を決定し、その後に性質を解明するというものでした。(産経10/6)

◆研究グループのチーム力

大村氏は、研究所で「他人の成果の上に立って何かをやるのではなく、自分で新しい物質を見つける研究をしよう」と誓い合いっていました。

土の中から薬として役立つ微生物を見つけ出す研究チームは、年間に6000種の物質を分析するといいます。いわば砂山から「砂金」を見つけるような苦労が伴います。

大村氏は、こうした研究チームへの感謝を忘れていません。「いつも数十人で心を一つに歩んできたことは、非常に幸せ」と感謝しています。このチームへの大村の感謝の心こそがノーベル賞に導いたのではないでしょうか。

今回のノーベル賞受賞は、若い科学者に希望を与えたのではないでしょうか。未来の日本にも大村氏のような科学者が出てくることを期待します。

大村氏の特徴は、一言でいえば、『実学の精神』ですが、もう一人の受賞者梶田氏は、『宇宙の解明』です。これについては、また回をあらためて論じることとします。

参考
『未来にどんな発明があるとよいか』大川隆法著
『「未来産業学」とは何か』大川隆法著

佐々木 勝浩

執筆者:佐々木 勝浩

幸福実現党政務調査会 課長代理

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