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日本の林業に新しい風を

文/幸福実現党・宮崎県本部副代表 河野一郎(こうの いちろう)

◆日本の森林の実態

日本は先進国の中でも、有数の森林大国です。

国土面積〈約3,776万ヘクタール〉に占める森林面積(2,512万ヘクタール)にすると、日本は森林率が67%、国土の三分の二が森林となります。これは世界の中でもトップクラスです。

世界の森林面積は40億ヘクタールといわれ、陸地面積の30%が森林となっています。

しかし、熱帯林を中心に農業開発や無秩序に行われた薪炭林の過剰伐採により、毎年約730万ヘクタール(日本の国土の1/5)の森林が減少しています。

ところが、日本はこの30年間、森林の面積は減っていません。

日本の森林資源に対する年間の伐採量は0.53%です。

森林大国のアイルランドは4%以上、フィンランドも3%を越えています。先進国ではダントツの森林率です。日本の森林は高齢化が進んでいます。伐採しないために若齢の森林が少なくなっています。

しかし、見方を変えれば、45年以上の収穫適齢期の森林の割合が多くなっているということです。これは林業においては宝の山です。

◆日本の林業の実態

豊富な森林資源がありながら、日本産の木材は3割、あと7割は外材を使用しているのが現状です。なぜそうなるかはいくつかの問題があります。

日本産の木材はコストがかかり過ぎるといわれていました。

伐採から集材、造材までの生産を海外と比較すると、緩頃傾斜で林業の盛んなスウェーデン、フィンランドのコストは1500円/立方メートル、比較的緩頃傾斜のオーストラリア1800~4500円/立方メートルです。

日本では7500~11000円/立方メートル。しかし、現在は外材との価格の差はなくなりつつあります。

また、一人が一日に生産する量を比較すると、北欧では平均30立方メートル/一人、日本は3~立方メートル/一人で10倍ぐらいの差があります。

日本のこの数値は50年前とそれほど変わらず、50年前では北欧も同じぐらいでした。

林道の問題もあります。林道密度が進んでいるドイツでは、1ヘクタールあたり113メートル、欧州でも急峻なオーストリアで民有林42メートルです。

日本は16メートル、しかも林道台帳に正式に記録されている林道は5メートル、これに公道8メートル、作業道が3メートルという状態です。

何より開発したくてもできない状態として、森林の所有者が分からない山林がたくさんあります。明確な所有区分が分からないため,木を切ることができない土地が全国に半分ちかくもあります。

これ以外にも補助金の問題や高性能林業機械の使い方や操縦者の養成、そして林業習熟者の減少などがあります。

◆日本の林業の未来

京都創世大の萩教授は、木を育てる森林育成業としての林業は大成功しているとしています。

それは、日本の人工林面積は1000万ヘクタールを越して、森林面積の40%近くあります。間伐が遅れているとしても、木自体は年々成長しています。全体から見れば、森林は育っているということです。

萩教授は、人工林から木材を収穫して、加工して商品として売る「林産業」の部分が失敗したとしています。 現在の林業を見ると、儲けるどころか山の手入れもできないところが多くあります。

日本の林業が外材に負けている原因を成功へのヒントとして、規制緩和や安易な補助金政策を止め、自由競争の原理を持ち込む必要があります。

森林所有から伐採、運搬、造林、販売まで行う大型企業も出てきています。いろいろな所で成功している林業家や企業が存在しています。現在国産材は引っ張りだこの状態です。

いろいろな問題がありながらも、国産材が各地で復活し始めています。

また廃棄物となる製材工場の残材や住宅解体材をバイオマスエネルギーとして有効活用が期待されています。廃棄物の削減と循環型社会の形成にも役立ちます。

木材を木質バイオマス発電で電力化するため、今まで山に捨てるしかなかった木材に、値段がつくようになりました。これにより廃材が宝の山になったことになります。

◆林業再生の鍵

森林の危機が叫ばれて久しく、いろいろな問題があるとしても、最終的には自由競争により外材と価格競争しても負けない商品を作ることと付加価値の高い国産材を作ることです。

日本の林業はやり方次第で蘇ります。
森林は消費型資源ではありません。森林は化石燃料などと違い、上手に管理・育成することで永続的資源として活用できます。

成熟した森林 を伐採して資源として使い、次世代に向けて、若い木を植えることで永続的資源となります。

森林大国日本、豊富にある資源を活かし、林業再生の鍵を握るのが、政治的手法主導から経済的手法をもっと取り入れることではと考えます。

古いしきたりの多い林業界へ新しい風が吹くことが林業新生に必要なことです。

河野一郎

執筆者:河野一郎

幸福実現党 宮崎県本部副代表

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