「自主防衛の気概」が導いた、日米防衛協力のためのガイドライン改定
文/HS政経塾1期卒塾生・逗子市政を考える会代表 彦川太志
◆日米防衛協力のためのガイドライン
10月8日、日米両政府の間で改定交渉が進む、「日米防衛協力のためのガイドライン」の中間報告が発表されました。
「ガイドライン」とは、特に日本の周辺で発生する有事において、日米両政府が取りうる協力体制について、まとめられたものです。
今回の改定の特色は、今夏の集団的自衛権行使容認の閣議決定を反映し、「米軍に対して自衛隊が連携できる内容と範囲が大幅に拡大した」と報道されている点にあります。
このような防衛協力の拡大について、自主防衛に関する日本国民の意識の高まりがあった事を、用語と共に解説させて頂きます。
解説する用語は、「アセット(装備品等)の防護」と、「切れ目の無い、実行的な政府全体に渡る同盟内の調整」です。
◆「アセット(装備品等)の防護」とは
集団的自衛権の行使容認により、自衛隊は武力攻撃を受ける米軍の軍艦や軍用機、基地を守れるようになりました。
アセット(装備品等)とは、この米軍の軍艦や軍用機、基地のことを指す言葉です。
これで日米安保条約の「片務性」が解消されることとなり、日米安保協力がより強固なものとなりました。
◆「切れ目の無い~同盟内の調整」
これは尖閣諸島などの離島防衛を念頭に置いたものです。
わが国の防衛について、米軍と自衛隊の役割はこの「ガイドライン」で明確に分担されております。
現行の「ガイドライン」では、以下の3点について取り決めを作っています。
(1) 平素から行う協力
(2) 日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等
(3) 日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合(周辺事態)の協力
現行のガイドラインの問題は、この3点に含まれない「脅威」については何の取り決めもなされていないため、日米両政権の相性や政治的環境の変化によって、ケースバイケースの対応がありえたと言うことに尽きます。
例えば、(3)の「周辺事態」は、朝鮮半島や台湾有事を想定した「非戦闘地域」での協力を想定したものであり、尖閣諸島についての取り決めではありませんでした。
また、(2)の「武力攻撃」については、すでに戦争が起きてからの話であり、中国公船や漁民が尖閣諸島に上陸を試みるような、「戦争以前」の小競り合いは対象外でした。
何かが起きた時、日米両政府がどう対応するのか、その事前の取り決めがなかったのです。
これがいわゆる「グレーゾーン」であり、ここに目をつけたのが、中国でした。
日米関係が悪く、日本に自主防衛の意志が無い状態にあって、「ガイドライン」の取り決めがない隙間を突けば、日米安保の片務性を暴露することができます。
平たく言えば、「ガイドライン」に含まれない「グレーゾーン」を突けば日米関係を破壊できると踏んで、2010年の漁船衝突事件が起きたのです。
◆「グレーゾーン」を埋めたのは、自主防衛の気概
漁船衝突事件では、中国船の恣意的な衝突映像を隠蔽しようとした民主党政権に対し、勇気ある海上保安官が情報をYouTubeに公開しました。
これによって、誰の目にも中国による海洋進出の脅威が明らかとなり、幸福実現党の主張する自主防衛の気運が、全国に広がり始めたのです。
このように、全国に広がった自主防衛の気運が、夏の集団的自衛権の行使容認や、今回のガイドライン改定に影響を与えたことは間違いありません。
防衛協力の「グレーゾーン」を埋めたのは、国民ひとりひとりの意識の高まりだったのです。
本ガイドラインの改定について報じる9日の五大紙は、いずれも改定の背後に中国の脅威があることを認めています。
今後は、自衛隊がひとり自国の防衛のみならず、世界の平和と安定のために、積極的な役割を果たす必要がある、と言う論調を主流とさせる努力が必要となるでしょう。