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どうなる?スコットランド独立を問う住民投票~日本は何を学ぶべきか

文/HS政経塾部長 兼 政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ

◆本日発表、スコットランド住民投票の結果

スコットランドの独立を問う住民投票が始まっています。開票結果は、本日の午後3時頃までに判明する予定です。果たしてどのような結果となるのでしょうか?

8月以降、独立賛成側が支持を伸ばし続け、今や世界中がその結果に注目しています。スコットランドの主要な三つの世論調査(16日時点)では、反対が4ポイントリードしていますが、約1割の態度未定者があり、依然として賛成と反対が拮抗しています(9/18東京、9/18毎日)。

スコットランドの独立側が勝った場合、2016年3月までに独立への具体的なプランを協議していくことになりますが、確かな見通しはあるのでしょうか。

◆スコットランドの独立の厳しい見通し

独立を選択した場合、その道は険しいものとなりそうです。4つのポイントを挙げたいと思います。

1)使用する通貨が決まっていない

独立した場合に、どの通貨を使用するのかが決まっていません。独立推進派は、ポンドを使用できる通貨同盟を提案していますが、今のところイギリス政府は反対しています。したがって、独自通貨にするか、ユーロを使用するかの選択をすることになりますが、いずれも道のりは簡単ではありません。

◇独自通貨導入の場合

通貨の信用を保つことは簡単なことではありません。当面は十分な外貨準備が不可欠ですが、スコットランドが独立を決めた場合、大手の金融機関は、本社をイギリスに移すことを宣言しており、大規模な資金流出が予想されます。

ちなみに、大規模な資金流出によって、通貨が下落してあっという間に国の財政破綻に陥ったことは、かつてアルゼンチンやアイルランドでも起きたことです。

◇ユーロ導入の場合

ユーロを使用するとした場合は、自分で金融政策をおこなうことができません。

北海油田の収入に頼ろうとしていることからも、これといって経済を牽引する産業がスコットランドにはないので、厳しい財政規律を課せられて、経済が停滞する可能性は高いといえます。

2)債務の利率が上がる

財政面では、政府債務をイギリスとスコットランドで分け合うことになると言われています(9/18毎日8面)。独立したスコットランドへの信用が高まることは考えにくく、債務の利率が上がり、利払い費が上がり、想定よりも社会保障に資金が回らない可能性もあります。

3)当てにしすぎるのは危ない北海油田の収入

北海油田の収入を、財政再建に当てようと考えているようですが、「油田埋蔵量を大幅に水増しして見積もっている」という指摘もあります。

仮に油田埋蔵量が豊富にあったとしても、シェールガスの台頭や、メタンハイドレードの開発も進んでおり、将来的に油田収入がどうなるかは不透明です。

資源国からの収入への過度な依存から脱却しようとしているのがトレンドでもあるので、この点から見ても、油田への過度な期待は危険ではないでしょうか。

4)安全保障上の不透明な見通し

スコットランドには、イギリス海軍の核戦力が配備されており、独立側は2020年までに撤去すると主張しています。

これはイギリスだけの問題ではなく、北大西洋条約機構(NATO)の安全保障にも影響を与える議論となります。独立派は、NATOへの加盟を想定していますが、加盟そのものがスムーズに進まない可能性があります。

◆日本にとっての影響は?

当然のことながら、イギリスは経済面でも安全保障面でも日本にとって大切な国です。
2012年4月の日英の共同声明では、日本の安保理常任理事国入りを支持することを表明していますし、今年の5月の安倍首相の訪英でも防衛装備品の共同開発の推進や、安全保障の協力推進などを確認しています。

日本がとやかく言うべきことではないかもしれませんが、スコットランドが独立することで、イギリスの国際的なプレゼンスは下がることは、日本にとっては望ましいとはいえないと思います。

◇イギリスにも、経済活性化への大胆な構想が不可欠

スコットランドは、伝統的に労働党の支持基盤であり、北欧型の高福祉社会を志向する傾向がありましたが、不満が高まっているのも、経済が停滞している点に原因があります。

キャメロン首相は、独立をしない場合は、スコットランドに対して大幅な権限移譲をすることを提案していますが、それだけではなく、イギリス全体の経済成長を促進する構想が必要ではないでしょうか。少なくとも、金融サービス以外の産業を育てることを早急に検討するべきです。

スコットランドは、経済学の祖アダム・スミスを輩出している地でもあります。

イギリスが、ピンチをチャンスに変えて、21世紀の国富論を実現する方向へと舵を切ることを期待したいと思います。

日本としては、イギリスの苦しみを教訓として、新産業の構想や法人税を大幅減税(小出しではなく)するなどの経済成長政策を推し進めるべきではないでしょうか。

吉井 利光

執筆者:吉井 利光

HS政経塾部長(兼)党事務局部長

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