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法人税減税を機に、日本は経済の飛躍的進歩を目指せ!

文/HS政経塾四期生 西邑拓真

◆法人税減税議論

法人税減税について政府内の議論が今、大詰めを迎えています。

先日行われた経済財政諮問会議での安倍首相の指示により、6月に取りまとめる、経済政策の基本指針である「骨太の方針」に、法人税減税が明記されることになっています。

日本の法人税は35.64%(東京都の場合)と、欧州(ドイツ 29.59%, イギリス 23.00%)や、アジア(韓国 24.20%, シンガポール 17.00%)などに比べて高い水準となっています。

高い法人税が、日本の経済の空洞化を促進しかねないとして、法人税率の引き下げを行うべきだとする意見がほとんどである一方、法人税の具体的な引き下げ方などに関しては意見が分かれており、この議論では「総論賛成、各論反対」となっています。

◆法人税減税による経済効果

今、各企業が、その活動領域を自国に留めず他国にまで広げ、経済のボーダーレス化が進んでいることは言うまでもありません。

その中で、日本は、雇用の拡大や、経済成長の促進のため、国内外企業の立地選択や投資を日本に喚起させるための、より望ましい環境の整備を行うことが必要となっています。

しかし、日本の高い法人税が、企業の立地や投資選択の障壁になっているのが現状です。

経済産業省の外資企業に対するアンケート調査(「外資系企業動向調査」(2012年))によると、「日本のビジネスコストによる阻害要因」の一つを「税負担」と考える企業が60.9%にのぼることが明らかとなっています(3つまでの複数回答によるもの)。

また、日本経済研究センター(『成長を呼び込む税制改革提言』参照)によると、法人税率を引き下げると、対内直接投資が促されるなどして市場開放が進み、それが企業の生産性を向上させ、経済成長に貢献するとしています。

実際に、OECDの2008年の論文(『税と経済成長』)は、法人税率の35%から30%への引き下げで、企業の全要素生産性(企業の生産要素をその重要性に応じて加重平均して算出された、企業の生産性の指標)が0.4%向上するとしています。

このように、法人税の減税は、国内外企業による日本への立地選択や、投資の促進、あるいは、生産性の向上などといった効果を期待することができるわけです。

◆課税ベースの拡大議論

法人税減税を行うメリットが明らかな一方、どのように引き下げるべきかが問題となります。

現在の法人税体系では、「特定の政策目標を実現するための政策手段(森信茂樹『日本の税制』参照)」については、優遇措置として、課税ベースからの除外が認められています。

その中で、法人税収の引き下げによる法人税収の低下分を穴埋めするために、課税ベースの拡大を行うべきだという意見があります。

確かに、日本の経済発展の目的にそぐわないものに対する優遇を取りやめ、それが租税の中立性に寄与する点で、課税ベース拡大論に対し、一定の評価を与えることはできるでしょう。

しかし、現在の議論では、企業の研究開発や設備投資などを、課税ベースの拡大対象にすべきとする意見もありますが、それは日本の経済成長にとっては、必ずしも好ましいものでないでしょう。

◆法人税のパラドックス

法人税減税のもう一つの効果が、法人税率の引き下げによる税収の向上、いわゆる「法人税のパラドックス」です。

1998年から2007年にかけて、欧州主要15か国の法人税率の平均が36.9%から28.7%に引き下げられた一方、名目GDPに占める法人税収が2.9%から3.2%へ増えており、法人税のパラドックスの発生が、実際に確認されています。

また、嘉悦大学の真鍋雅史准教授は、2014年3月に行ったシミュレーション分析(『法人課税、設備投資と財政収支』)で、日本では、「法人減税1円あたりの設備投資誘発額が6.01円となり、それを通じ、税収が1.85円増加する」としています。

欧州での事例が、「課税ベースの拡大」をパラドックスが生じた一つの根拠としているのに対し、真鍋氏の研究では、出発点として、課税ベース拡大議論が行われていないということは注目に値します。

つまり、仮に課税ベースを拡大しなくても、法人減税による投資の促進により、GDPが押し上げられ、それが税収増につながりうるというわけです。

◆法人税減税の基本的なあり方とは

以上から、法人税減税は基本的に、国内への投資の促進、経済の活性化、及び経済の拡大による税収増を目指すべきものであると考えます。

ここで、法人税減税が、単に企業の内部留保の拡大につながることを避けるために、法人税減税と一体で規制緩和を促進するなど、投資環境の整備が同時に行われるべきでしょう。

一方で、社会保障費など、国の財政の歳入部門の増大を賄うために、消費税は上げるべきだとする意見が多数を占めています。

やはり、税収の向上は、経済の拡大を通じて実現するべきです。法人税減税については歓迎しつつも、経済のパイを縮小させる消費税のさらなる増税は、弊党が一貫して主張してきたように決して行うべきではありません。

西邑拓真

執筆者:西邑拓真

政調会成長戦略部会

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