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混合診療の解禁から医療産業の発展を

HS政経塾 第6期生 野村昌央

◆4月に創設された「患者申出療養制度」

皆さんは「混合診療」という言葉をご存じでしょうか。

医療保険の効かない医療行為(自由診療)を行う時、保険が適用される医療行為(点滴や入院費用など)を一緒に受けることを「混合診療」と言います。

これまでは混合診療は一部しか認められておらず、自由診療を受ける場合は、保険が適用される医療行為も全額自己負担となっていました。

今年2016年の4月から「患者申出療養制度」が創設され、保険の効かない先進医療などについて患者の希望を起点とした申し入れから、厚労省の審査を経て混合診療の承認を得ることができるようになりました。

医師会などからは、「混合診療の拡大につながる」と懸念が示されてきましたが、こうした反対などから、まだまだ混合診療の解禁は遠いというのが現実です。

◆混合診療で考えられるメリットとデメリットは?

なぜ混合診療の拡大は懸念されるのでしょうか。

混合診療の拡大で、「医療では患者側は医師の勧める治療が効果的かどうか判断できないため、よけいな医療行為が増える」「粗悪な医療行為が保険診療と一緒に行われる可能性」「自由診療を受けられる人と受けられない人の間に医療格差が生まれる可能性」などのデメリットが生じると言われています。

しかし、混合診療の規制緩和はがんじがらめの規制でガラパゴス化していると言われる日本の医療産業の発展に不可欠です。

混合診療の規制緩和によって、自由診療を受けるための患者負担が減ると同時に、自由診療部分におけるサービスの多様化が可能となれば、自由診療部分における市場が活性化していきます。

市場の活性化によって様々なニーズに応える医療機器や新薬の開発、サービスの向上、医師の技術の向上などが期待されます。

また、自由診療分野の民間保険の市場も拡大していきます。

◆デメリットは解消できるの?

まず、医療の質を評価するための情報公開を進めます。

現在公開される情報は、平均在院日数や救急受入件数などのプロセス部分での評価指標がほとんどです。

例えば「○○の手術件数」や、所属医師の実績を公開することで、医療機関の質の評価をできるようにします。

こうした情報が公開されることで、保険会社が医療機関の不正や経営努力を怠っていないかどうかを監視できるようになります。

これによって保険会社を通じて「どの医療機関がよいのか」を知ることができます。

同時に、中医協などの機関が不正を監査し、罰則規定を設けることで、数字の改ざんなどの医療機関と保険会社の癒着を防ぎます。

混合診療拡大での医療格差の問題については、自由診療を受けやすくなるという点では共通しているため、日本においては大きな問題とはならないと考えられます。

◆混合診療の解禁から医療産業の発展を

このままでは、日本の医療費負担はさらに増えていきます。しかし、財政難から将来的に医療保険の範囲は小さくなっていくと予想されます。

医療制度のあり方を見直し、産業を成長させ、自助努力と健康増進を基礎とした抜本的な制度改革を行っていかなくてはなりません。また、社会保険制度と福祉制度を一緒くたにせず、分けて考えることも必要です。

混合診療の拡大は日本の医療産業のサービスの多様化と市場の拡大という点において、発展の道を拓きます。

そのためにもまずは、一定の機能を有する病院、例えば臨床研修指定病院などで混合診療を認めていくことから始めていく必要があります。

これによって選択の自由を拡大し、医療産業の活性化を行っていくべきであると考えます。

「規制緩和で医療を輸出産業に」
http://hrp-newsfile.jp/2016/2946/

野村昌央

執筆者:野村昌央

HS政経塾6期生

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