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中国の「アジア新安全保障観」からアジアを救え

文/HS政経塾 第3期生 和田みな

◆中国が提唱する「新安全保障観」

今月20、21日の両日、アジア信頼醸成措置会議(CICA) が中国・上海で開催されます。

この会議には、ロシアのプーチン大統領をはじめ、15ヶ国の首脳や国連の潘基文事務総長も出席し、議長国である習近平国家主席との首脳会談も予定されています。このCICAで習近平が提唱しようとしているのが「アジア新安全保障観」です。

中国による「新安全保障観」は1997年に初めて提唱されたものです。それが、先月開かれた「中国・中央国家安全委員会」の第1回会議において、「中国の特色ある国家安全保障を提示し、それに向かって歩み出す」と習近平国家主席が述べたことで、再び注目を集めています。習氏のこの発言は、オバマ大統領の来日直前のことでした。

◆「新安全保障観」の内容

中国が提唱する「新安全保障観」を簡単に要約すると以下のような要旨になります。

・中国の安全の夢は、世界の安全の夢と同義である
・米国型の第三国を排斥し、仮想敵に的を合わせるような、二国間同盟体制を乗り越えるものである
・「アジアの安全保障・経済は米国頼み」というパラドックスを乗り越えるものである

中国はこの「新安全保障観」をアジア各国に広めることで、「アジアのことはアジアで十分解決できる。アメリカに代わって、アジアを支配するのは中国で、それがアジアの安全を守るものだ」ということを示すとともに、アメリカ・日本の日米同盟を軸としたこれまでのアジアの安全保障体制を牽制する意図があるのです。

◆全世界に影響を与える中国の新安全保障観

中国共産党の機関紙「人民日報」の日本語版サイトは4月17日付けで「全世界に影響を与える中国の新安全保障観」と題する論説を掲載しました。この「新安全保障観」がどのように世界に影響を与えるというのでしょうか。

前述したCICAにおいて中国は2016年まで議長国を務めます。また、今年の秋にはAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議が北京で開催される予定です。中国は、この2つのアジア会議を最大限に活用し、中国主導の「新安全保障観」をアジアに広めるつもりなのです。

中国の外交部は、3月16日の記者会見でも「CICAの最大の大義は『アジアの問題はアジア主導で解決すべきであり、アジアの安全保障もまずアジア諸国自身の協力強化を通じて実現するべきだし、それは完全に可能だ』との声を共同で世界に発することを望んでいるということだ」と述べました。

中国は自身の「新安全保障観」をまず示すことで、各国にも「新安全保障観」の確立を推進し、「アジアの安全保障の協力と新しいメカニズムを積極的に検討することを望んでいる」と発信しています。

この「新安全保障観」は、アメリカのリバランス政策の一環である日米によるTPP推進、安全保障での協力強化などの、対中圧力に対抗するものです。

中国は、アメリカ型の安全保障観の欠点を指摘し、アジアの安全保障は中国主導で行うという強い意思表示を示しました。これからアジア各国は、地域の安全保障について中国主導か日米主導かを迫られることになるでしょう。

◆中国主導の安全保障体制の危険

今月、南シナ海で起きた中国の公船とベトナム船の衝突は、この中国の「新安全保障観」の危険性を露わにしました。アジアにおいて、中国主導の安全保障体制が強まれば強まるほど、中国による強硬な領土・領海侵略が行われる可能性が高まることを世界に示すことになったのです。

このような中、東南アジア諸国連合(ASEAN)は11日、ミャンマーの首都ネピドーで首脳会議を開き、南シナ海情勢などについて協議し、関係国に自制と武力の不使用を求めることを盛り込んだ「ネピドー宣言」を採択しました。

しかし、ここでも中国を直接非難することは出来ず、議長国のミャンマーを含め、中国と緊密な関係を持つ多くの加盟国に配慮したものになってしまいました。

◆日本に求められるリーダー国家としての「公の精神」と具体的な行動

このように、国際社会は中国の野望に対して有効な手を打てないでいます。これまで実質的にアジアの盟主であったアメリカも財政難から国防予算を減らさざるを得ない状況が続き、中国がこれに代わろうと具体的に行動を始めているのです。

昨年10月、ASEAN首脳と安倍首相との会談で安倍首相が、中国の強引な海洋進出を批判しつつ、日本として集団的自衛権の政府解釈見直しや国家安全保障会議(日本版NSC)の創設などの取り組みを紹介したところ、参加国から「日本が世界の平和のために貢献することを支持し、期待する」との声が上がりました。

アジア各国は中国に対抗するために、日本に対して具体的な行動を期待しているのです。

日本には、日米同盟を堅持しながらも、責任を持って地域の安全を守れるだけの早急な法整備や外交戦略が求められていますが、日本の政治家やマスコミの多くには、「世界の平和に貢献しよう」というリーダー国家としての「公の精神」が全くありません。

しかし、私たちは、国際社会の状況や要請を踏まえて、一国平和主義、利己的平和主義で満足するのではなく、集団的自衛権の行使、憲法9条の改正の問題に取り組むべきです。

また、中国の軍事力の脅威からアジアの平和を守ることなしに、日本一国の平和を守ることなどできないことを一人ひとりが自覚しなければなりません。

◆日本の行動が世界を救う

更に日本には、中国の「新安全保障観」に対して、「より多くの国々の自由を守り、共に発展できるアジアをつくる安全保障観」のビジョンをアジア各国に提示していく必要もあるでしょう。

私たち幸福実現党は宗教政党です。「国民を護り、世界の平和に寄与する」という精神を大切にし、「悪を押しとどめ、善を推し進める」という宗教的正義において、国防強化の重要性を訴えています。

日本人がこの精神を理解し、世界の平和と発展のために具体的に行動を開始した時、戦後失ってしまった「日本の誇り」を取り戻すことができるでしょう。そのような日本人の行動が世界を救うことになるのです。

和田みな

執筆者:和田みな

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