日本の発展にむけた行政改革を!――消費税増税にみる国民不在の行政
文/HS政経塾4期生 数森 圭吾
◆消費税増税における国民の反応
4/1より消費税率が8%に引き上げられた。景気回復とセットであるはずの今回の増税ですが、早くもそこにはズレが発生しています。国民は本当に消費税増税について納得しているのでしょうか。
世論調査においては以下のような結果が出ています。
・景気回復を実感しているか?(産経新聞社・FNNの3月末合同世論調査)
「実感していない」 77.4%
・消費税増税が日本経済に与える影響について(同上)
「心配している」 67.3%
「心配していない」 29.8%
・2015年の消費税率10%への引き上げに対する賛否(同上)
「反対」 66.7%
・消費税増税後に節約を行っているか(4/5 TBS世論調査)
「節約している」 58%
「あまり節約していない」 29%
「全く節約していない」 12%
「わからない」 1%
この結果を見る限り、国民にとっては景気回復を感じないなかで増税が先行して行われ、結果、買い控えが発生しているのが現実です。調査結果にもあるように、このような状況での更なる税率アップは国民が望むものではありません。
◆14年7-9月期の経済成長率が重要
OECD(経済協力開発機構)による4半期経済見通しによれば、2014年の日本の実質GDP成長率は、1-3月期4.8%、4-6月期▲2.9%となっています。1-3月期の数値が高いのは駆け込み需要によるもので、4-6月期のマイナスはその反動によるものです。
この半年間のみを見ると駆け込み需要の影響がプラスに働くと予想されていますが、この後の7-9月期の成長率が重要です。安倍首相はこの7-9月の数値によって10%への税率アップを検討するとしています。
国民は4月以降の実績成長率を注視するとともに、8%への増税決定の際のように、「増税ありき」での公共事業による意図的なGDPの数字操作が行われないよう注意しなければなりません。
◆省益を優先する財務省
財政再建における経済成長の必要性と増税のリスクは政府も行政も認識しているはずです。にもかかわらず強硬に増税路線を取る背景には何があるのでしょうか。
最も増税を望んでいるのは財務省です。それは増税が財務省の権力拡大に繋がるからです。財務省は各省庁が使用できる予算枠を決定する権限を持っています(歳出権)。その予算の大枠は財務省が算出する「税収の見積り」によって決定されます。
この際、「経済成長率は税率に関係なく一定」という前提で計算されるため、予算段階の税収見積りは税率を上げた分だけ増加することになるのです。つまり財務省にとっては税率を上げたほうが予算額も増え、その裁量権も大きなものとなります。
財務省の根本的な行動原理にはこの「歳出権の拡大」が存在し、そのための手段として最も有効なのが税率を上げることなのです。
◆国税庁との関係にみる財務省の権力へのこだわり
ここで財務省と国税庁の関係に注目してみましょう。国税庁は国家行政組織法三条に基づいた法律で財務省の外局として規定され、本来は独立性の高い政府機関です。
しかし実態は、過去一度も財務省出身者以外が国税庁長官の座に就任したことがないことからも、国税庁に対する財務省の影響力の大きさがうかがえます。
財務省が国税庁に対する影響力を保持したがる理由の一つに、国税庁が持つ「情報」があります。税金などの「金」にからむスキャンダルを恐れる政治家に対して、それに関係する情報が集まる国税庁は財務省にとって非常に重要な情報源なのです。
このように財務省は「カネ」と「情報」を握ることで各方面に大きな影響力を発揮することができるのです。このような「省益をいかに確保するか」、「いかに権力を維持するか」ということに固執する行政は、内部の都合にばかり目を向けた国民不在の行政となってしまっていると言わざるを得ません。
◆悪しき構造を打破する「理念」と「覚悟」をもった政治家の必要性
過去、橋本内閣、小泉内閣などにおいても行政改革は取り組まれているが、未だ抜本的な改革には至っていません。いまこそ「行政の都合」ではなく「国民の幸福」を真正面から考えることのできる理念と覚悟をもった政治家が必要です。
国民不在の政府や行政のパワーゲームに陥ることなく、真剣に「国民の幸福を実現する!」という公益性のある理念をもった政治家が多く集まり、行政改革を進めていかなければならないのです。