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全ての子どもたちに未来と可能性を与えられる社会を 

文/HS政経塾1期生  兵庫県副代表  湊 侑子

◆子供たちを取り巻く問題

親に捨てられた子供を“ポスト”と呼ばせる。擁護施設の施設長が子供たちに、「お前たちは、ペットショップの犬と同じ」と言う、などで様々に批判を受けたドラマ「明日、ママがいない」。このドラマが扱った問題、親に捨てられた子どもたちは今の日本にとって大変デリケートで重い問題です。

現在、事情があって親と一緒に暮らせない子どもは4万6千人います。原因は、親から虐待を受ける、親との死別や行方不明などで、この子たちは児童養護施設(乳児院)に入ります。

一方で、子供が欲しい人たちもたくさんいます。日本には、不妊治療患者数が約50万人存在します。しかし、不妊治療を行ってもすべての人が子供を授かるわけではありません。実際に不妊治療にかかる期間は平均2.5年、費用は100万円で決して簡単なものでもありません。
 
子どもを望んでも授からない夫婦に、この子たちを引き取ってもらえたら、お互いにとって幸福であるのでは…と思うのですが、なかなかうまくいきません。

子どもの一部は里親に引き取られますが、日本においては里親に委託される率が極めて低く、平成24年度末で14.8%に留まっており、ほとんどの子供は施設に行きます。(4/6 産経「家庭的養育」は社会の責務)

◆里親が広がらない理由

里親の割合が少ない理由は、一つは日本人が血縁を重視しすぎることにあります。これには、この世で出会う“縁”の大切さを社会に浸透させないといけないと思います。明治時代には養子は当たり前でしたし、養子になったことで新しい道を歩むことができた湯川秀樹などの例もあります。

また、法律においても血縁を重視するあまり実親の親権をかなり強く設定しすぎていることにも問題があります。実親が申し出れば、たとえ特別養子縁組を組んで養親が引き取っていたとしても子供を戻さないといけないなど、様々な障害が立ちはだかっていることにあります。

もちろん、実親が子供を育てることが一番よいのでしょうが、子供の虐待の割合が急増するだけでなく殺すまでいってしまう親が出てきている今、子供の命を守るためには、実親と離す基準をはっきりと定めて線引きしなければならない時期が来ています。

◆地元のNPO・宗教の必要性

熊本の慈恵病院は赤ちゃんを預かる「こうのとりのゆりかご」を行っています。この“赤ちゃんポスト”によって、子供を捨てる人が増えたように感じますが、実際はそうではありません。

この6年間に預かった子どもは92人ですが、同時に全国のお母さんの相談にものっており、面談をすることで198人のお母さんに子供を手放すことを思いとどまらせました。(同上 産経新聞)

子どもを置いていく保育器の中には、「いつでもいいから当院に連絡してください。一緒に問題を解決しましょう。協力は決して惜しみません」というお母さんへの手紙もおかれています。

ゆりかご事前相談として24時間365日体制の「SOS赤ちゃんとお母さんの相談窓口」も開設していました。これらはキリスト教精神に基づいて行われています。

この他にも、天理教の教会主は、他人の子どもの世話をするのも当たり前と、家庭に実子以外の子どもをひきとって“ファミリーホーム”を営んでいるケースが多くあります。

現在、引き取られる子供の1.5割は天理教関係者が引き取っており、行政からも大いに感謝されて頼りにされているようです。

実際は行政が行うことを、NPOや宗教がボランティア精神で行っているのが現状であるならば、感謝の気持ちとして税金の免除などは行うべきですし、これらに対する偏見や蔑み、悪口を控え、社会が彼らに対する信頼や尊敬の念を持つ方向に持っていくことが行政の仕事です。

親がいない子供たちの声は小さく、彼らのために声をあげてくれる親もいません。しかし、彼らも未来の宝であり可能性なのです。弱きものを守り育てることも、私たちの使命であると感じています。

みなと 侑子

執筆者:みなと 侑子

HS政経塾1期卒塾生

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