「集団的自衛権」はなぜ重要か?(2)日本の空が危ない!
◆「集団的自衛権」行使容認もトーンダウンか?
安倍首相は22日、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈見直しの結論について、「いつまでにではなく、議論がまとまるのを見守りたい」と述べ、年内の見直し表明にこだわらない考えを示しました。慎重論が強い公明党に配慮した形です。(9/22 産経「首相、公明配慮と中朝対応ジレンマ 集団的自衛権」)
公明党への配慮も必要なのでしょうが、9月以降も尖閣周辺で、中国による挑発行為が激化しており、日米同盟を強化し、日本の守りを固めるためにも「集団的自衛権」の行使容認は急務です。
私は、前回のHRPニュースファイル「『集団的自衛権』はなぜ重要か?(1)」で、米軍の存在は「日本防衛の一部」であり、「集団的自衛権」は、憲法9条の「わが国を防衛するための必要最小限度の範囲に入る」と解釈するのが筋だと述べました。
◆日本の空が危ない!
ここで、最近の状況を見ておきたいと思います。
昨年2012年は、22年ぶりに自衛隊機の緊急発進回数が500回を突破しました。その内、中国機への対応が約半数で、他の国を引き離しています(計567回の内、中国は306回)。
しかも、一昨年に比べて対中国は2倍に増加しました(2011年は計425回の内、中国は156回)。中国の挑発行動はますますエスカレートしているのです。
今年の4月には、監視船が尖閣周辺の領海に、8隻で押し寄せました。
これだけでも大きな脅威ですが、これと連動して、中国軍の最新鋭戦闘機が40機以上も尖閣近辺に飛来し、海空連携の示威行動を行いました。
航空自衛隊那覇基地のF15戦闘機が緊急発進(スクランブル)で対処しましたが、自衛隊のパイロットの疲弊を狙って絶え間なく押し寄せたことに、防衛省は「前代未聞の威嚇だった」と述べています。(4/27 産経)
ちなみに、尖閣諸島は沖縄本島の那覇から約420キロ(魚釣島)も離れていますので、戦闘機でも発進してから30分程度かかります。往復で1時間です。ですから、尖閣上空に留まれる在空時間は、どうしても短時間となります。
私はこの事件を見て、米軍の空母がなければ、沖縄方面の防衛は難しいと実感しました。
また、中国軍の戦闘機が、米海軍の海上パトロール任務につくP3C哨戒機と空軍のC130輸送機を執拗に追尾した事件がありました。
さらに9月8日には、中国の「H-6爆撃機」2機が、沖縄本島と宮古島の間を飛行。翌9日には、中国の無人機が、尖閣諸島に接近し、いずれも航空自衛隊の戦闘機が、緊急発進しました。
◆「集団的自衛権」を行使できなければ、日米同盟が根底から揺らぐ
米空軍は、尖閣諸島を守るために、空中警戒管制機(AWACS:エーワックス)でパトロールしてくれています。
これらの日本防衛任務についている米軍に対し、現状では、自衛隊は米軍を守ることが出来ません(例えば、米軍の輸送機を自衛隊のF15がエスコート、防御するケース)。
前回も述べましたが、米軍を見殺しにすれば、日米同盟が根底から揺らぐ危機になるかもしれないのです。
ここに面白い調査があります。昨年の12月の総選挙の後、毎日新聞が行った当選した国会議員へのアンケートは、大変興味深いものでした。
なんと国会議員の78%が集団的自衛権の容認に賛成したのです。
この結果からも、国会議員も本音では「集団的自衛権」は、極めて重要であることを、よく理解しているものと思います。
◆尖閣や沖縄を護る日米合同訓練
わが国の防衛は、現状、日米の共同作戦を抜きには考えられません。
今年6月には、尖閣や沖縄などの離島が占領されたことを想定した、日米合同の奪還・防衛訓練が行われました。
これは日本の陸海空の3自衛隊が合同参加する初の演習として非常に注目された演習でした。(防衛省「米国における統合訓練:ドーン・ブリッツ13」)
この日米合同演習は、中国からしっかり中止の要請があったことを付け加えておきます。
この演習で、日本のヘリ空母にアメリカのオスプレイが着艦するという歴史的訓練もありましたが、この訓練の重要性は「日米で共同して尖閣を護る」という強力な意思を内外に示したことです。
もはや「集団的自衛権」を前提としなければ、作戦が成り立たないのです。
例えば、日本のヘリ空母に向かっている米軍のオスプレイに、中国からミサイル攻撃を受けたらどうでしょうか?
オスプレイに自衛隊の隊員が乗り込んでいる場合もありますし、沖縄の民間人の救助、避難のためにオスプレイに同乗させていることだってあり得ます。
こうした様々なケースを想定しても、「集団的自衛権」行使容認がなぜ必要なのかご理解頂けるのではないでしょうか。(文責・岐阜県本部副代表 河田成治)