塾に頼らない公立学校を目指して――クラス別のテスト結果の開示と生徒による教師の授業評価制度を導入せよ!
◆学力テストの学校別、クラス別の公開を!
8月27日、全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)の結果が公表されました。小学6年生と中学3年生が対象となったもので、全員参加での実施は4年ぶりです。
公表は都道府県別までしかなされていませんが、市町村別、学校別のデータを得ることもできました。
民主党政権時代には、日教組の圧力により全員調査から3割抽出方式に代えられたことを思うと、最悪の時期は乗り越えたように思います。
ただ、学力テストの実施や都道府県別の公開は必要なことではありますが、これで十分とは思えません。
私は学力テストの学校別、更にはクラス別の公開が必要であると考えます。それは、「教師に勉強をさせるため」です。
学校生活において子供に最も影響を与えるのは、小学校でいえば担任の教師、中学校でいえば各教科の教師です。
同じ学校にあっても教師によって、子供たちが受けるサービスは大きく異なります。
現在は「あの先生に持ってもらえたからラッキー」「あの先生にあたったから、今年は我慢するしかない」というお母さん方の噂レベルでしか、先生の実力を判断することができませんが、学力テストをクラス別に公開することで、全員が各教師の実力を知ることができます。
◆学習する教師を目指せ!
学習塾を経営する高嶋哲夫氏は、『塾を学校に』(宝島社新書)の中で、「子どもに勉強の大切さを説くわりに、『先生』と呼ばれている人間は本当に勉強というものをしない」ことを指摘しています。
また、教師の職業の恐い点として「子供に教え続けると確実に自分の中の何かが減っていく」ことを挙げます。
子供に接する教師はだいたい3年ほどで空っぽになってしまうため、それを防ぐただ一つの方法「勉強して、常に学力・知識で自分を満たしておく努力」をしなければなりません。
しかし、「先生」という職業に胡坐(あぐら)をかき、法律で守られている人ほど勉強をしません。
そうであるならば、その結果・評価を多くの人の前に明らかにし、保護者や周りの教師たちの目を感じてもらう。本当に子供が好きで教師を続けたいのであれば、嫌々でも勉強してもらう。学力テスト公開を自己変革・改善・反省のチャンスにしてもらう。
これが子供たちの学力アップのための一番の近道なのであると考えます。
◆教師の授業評価制度を導入せよ!
もう一点、予想される「成績が先生の実力を示しているわけではない。塾に通う子が多いだけかもしれない。」という反論に対しては、併せて生徒による教師の授業評価を公開することを提案したいと思います。
画期的な取組みをしているのが、東京都の狛江市第三中です。
この学校の特徴は、アンケートでありがちな「授業で質問できますか(抽象的)」「きちんと家で宿題はできていますか(生徒自身への質問)」「きちんと朝食を食べていますか(生徒の実態調査)」など、主語を「生徒」にし、生徒自身の責任をただす質問をすりかえず、教師の授業について真正面から質問をしている点にあります。
国語を例にとると、「【国語】××先生の授業について、(1)授業の目標(その時間にやること)がはっきりしていますか?、(2)先生の説明はわかりやすく、授業の内容は理解できますか?」などです。
これに加えて、自由記述回答用紙があり、各教科の授業について、良い点、意見、お願いなどがあれば、わかりやすく具体的に書くことができます。
狛江市第三中の取り組みの画期的な点は、(1)××先生の授業、という風に教師別に行っていること(英語は、数学は、という形で逃げることができる表記をしていない)、(2)授業の評価を誰でも見ることができるHPに公表していることです。
保護者はもちろんのこと、卒業生や新しい入学生、同僚や自分の家族、第三者にも見られるため大変勇気がいりますが、非常に公平で先進的な取り組みです。
この評価制度を取り入れた、当時の校長が着任した当時は、生活指導上の課題を抱えた学校で、市のテストでも1年生の1割が数学で1桁の点しか取れない学校でありました。
危機感を感じた校長は、生徒の実態に沿った授業改善が解決の一つの手立てだと考えて授業アンケートを導入しました。
反発する教師も存在しましたが、校長以下、全教職員が一つの方向を目指す仕組みをつくるために努力を重ね、今の形になったようです。
2年後には、生徒の問題行動は減り、全国学力テストでは、国語・数学とも全国平均を上回るようになりました。(2007/11/27 読売「学校の通信簿(6)生徒が評価変わる授業」)
このアンケートの結果、教師側がショックを受けたり、子供に正しい評価できるのかという疑いの目を持つことがあります。
しかし、見逃せない点は、先の校長が「実は、生徒の評価は私の評価と近い」と言っている点です。
実際に、狛江第三中においても、評価の低かった教師たちが、はじめは反発したり生徒を疑いながらも、「今は彼らに『正直な目』を感じる」「旧態依然の自分流にこだわりすぎていた」と反省して態度を改めた結果、半年後のアンケートでは「授業がわかりやすい」と答えた生徒は各学年で9割を超えたそうです。
「教師が変わらなければいけない時がある」と謙虚に答えたこの教師たちに育てられる子供たちは幸せです。
逆説的ですが、学校をオープンにすればするほど、保護者・生徒からのクレームは減り、その結果、教師の本来の仕事である授業に専心できます。
今、日本の教育界に必要なものは、正直さ、謙虚さ、透明度、そして「ゼロから学校を立て直す」という、ある意味での開き直りです。
狛江第三中の例に学び、一人でも多くの聖職者が目覚め、子どもの手本となる教師になること。
そして、これを制度として導入することで、公教育を必ず立て直すことができると確信しています。(文責・HS政経塾1期生湊侑子)