無策であった政府のいじめ対策――教育システムそのものにメスを!
◆無策であった政府のいじめ対策
2006年、福岡県や北海道で起きた子供の自殺事件を契機に「第三次いじめ多発期」という言葉が口にされるようになり、それから間もなく七年が経過しようとしています。
果たして、その年月は「有効に使われた」と言えるでしょうか?
7月6日の新聞には「奈良県で3月に飛び降り自殺した子供が、実はいじめられていた」と報道されています。
学校側は、自殺との因果関係は「低い」と否定していた事件であり、昨年の大津いじめ自殺事件と同じく、教育現場の実態が全く変わっていないことを示す事件であり、実に残念です。(7/6 産経「中1自殺 いじめ原因か 『死にたい』友人に相談 奈良」)
私、いざわ一明は、2007年から「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」に携わり、これまで3,000件以上のいじめ相談を受け、「いじめ自殺をなくす」という強い決意のもと、日々、「いじめ」と戦って参りました。
「いじめは犯罪!」というポスターは、全国の三分の一の学校に貼られ、その結果、「いじめは犯罪」という言葉が普及したことは、学校に明確な「善悪の価値観」が浸透したという点で前進です。
しかしながら、私たちの活動が、まだまだ政治や教育の現場を変えることができていないことを悲しく思います。
◆いじめの実態を把握していない文科省
文部科学省は「いじめ認知件数」を毎年発表していますが、これは、実態とはかけ離れた数字です。
大津のいじめ自殺事件が大きく報道され、社会問題化したことを受けて、緊急に実施された調査では、全国の小中高校などが認知したいじめは半年間で約14万4千件となりました。(2012/11/22 日経「いじめ認知14万4千件 4~9月で昨年度の2倍 」)
この数値は、前年度に実施した調査(約7万)の約2倍にのぼっています。
とりわけ鹿児島県においては、半年間で3万件を超えるいじめが報告され、その数は全国の5分の1を占めるほどになっています。
この結果を見ると、鹿児島が特別に深刻な印象を与えますが、実は鹿児島の報告件数こそが「実態」であり、子供たちの認識に極めて近いのです。
鹿児島県3万件を単純に47倍すると、おおよそ150万件、年間で300万件のいじめが日本の学校で起きていると考えるべきです。
それは、全国1400万人を超える児童生徒の5分の1以上を占める数字になります。はっきり言うと、5人に1人がいじめを受けていると推定されます。
◆教育システムそのものにメスを!
その意味で、この6年間の政府の「いじめ対策」は無策であったと言うほかはありません。
政府は、私たちの活動にいじめ問題の解決を委ねるだけで、本当に有効な対策を打てていなかったと言えます。
私たち「いじめから子供を守ろうネットワーク」は、この七年間で、5千件以上ものいじめ問題に取り組み、その大半を解決して参りました。
しかし、私たちが解決していくには、あまりにもいじめの件数が多すぎるのです。残念ではありますが、私たちはある意味でまだまだ無力です。
なぜなら、民間の立場では、教育現場で、いじめを解決するだけの権限がないからです。
この七年間の活動で痛烈に感じることは、「教育システムそのものにメスを入れなければならない」ということです。
今国会では「いじめ防止対策推進法」が成立しましたが、同法には、私たちが提言して来た学校による「いじめの隠蔽」に対する処罰規定がないため、ますます「いじめの隠蔽」が進む可能性すらあります。
今こそ、いじめ問題の実態と、その根底にある「学校の閉鎖性」の問題点を知り尽くした政治家の輩出が必要であると考えます。(明日に続く)
(文責・一般財団法人「いじめから子供を守ろうネットワーク」代表 いざわ一明)
執筆者:いざわ一明