「揚げ足取り」の報道は民主主義の危機を招く――「高市発言」について
批判の発端となった高市氏の発言とは
ある自民党議員が原子力発電所の再稼働問題について触れたところ、その発言を朝日新聞等のマスコミに批判的に取り上げられ、発言について「撤回」と「謝罪」を行うという展開となりました。
発言の主は、自民党政調会長の高市早苗衆議院議員です。
問題とされたのは6月17日に神戸市内で行われた講演で、その内容について、東京新聞は以下のように要旨を伝えています。
「日本に立地したい企業が増えているが、電力の安定供給が不安要因だ。原発は廃炉まで考えると莫大なお金がかかるが、稼働中のコストは比較的安い。
東日本大震災で悲惨な爆発事故を起こした福島原発も含めて死亡者が出ている状況にない。そうすると、最大限の安全性を確保しながら(原発を)活用するしかないのが現状だ。
火力発電も老朽化し、コストがかかる。安いエネルギーを安定的に供給できる絵を描けない限り、原発を利用しないというのは無責任な気がする。(神戸市での講演で)」(6/19東京新聞朝刊)
放射能によって亡くなった人はいない
このような高市氏による発言の意図は「福島第一原子力発電所から漏れ出た“放射能”によって亡くなった方はいない」という事実に立脚し、「安定した電力供給の観点から、原子力エネルギーを簡単に捨てるべきではない」という主張を伝えるものでした。
これは、2011年以来、原子力発電所の必要性を訴え続けてきた幸福実現党の主張を後追いするものであり、「正論」です。
放射線に関する幸福実現党の主張は、世界保健機構(WHO)や国連科学委員会調査結果の科学的な調査結果によっても裏付けられています。
「日本内外の一般住民への予測されるリスクは低く、識別できる自然発症率以上の発がん率の増加は予想されない」(2/28 世界保健機関(WHO)“Global report on Fukushima nuclear accident details health risks“)
「福島第一原発事故の放射線被曝は、即座の健康被害を引き起こさなかった。そして将来にわたって一般市民、原発事故作業員の大半の健康に影響をおよぼす可能性はほとんどないだろう」(5/31 原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)“No Immediate Health Risks from Fukushima Nuclear Accident Says UN Expert Science Panel”
高市発言を意図的に捻じ曲げた報道
ところが、報道では「死者が出ていない」という言葉のみがクローズアップされると共に、それが「原子力発電所再稼働の理由」として捻じ曲げられて伝えられたため、与野党から高市氏に対する感情的な批判が巻き起こりました。
このため、高市氏は一転して自身の主張を「撤回し、お詫び申し上げる」と謝罪の姿勢を表明せざるを得なくなります。(6/20 東京「高市氏 撤回し謝罪『原発事故で死者なし』発言」)
もちろん、大震災に伴う大津波にそのものによる死者や、長期の避難生活によって体調を崩され、お亡くなりになってしまった方々がいらっしゃることは事実あり、そのような方々に配慮を尽くさなければならないのは当然です。
しかし、「福島第一原子力発電所から漏れ出た放射性物質」による人体への影響はと言えば、国際機関の調査の通り、「将来にわたって一般市民、原発事故作業員の大半の健康に影響をおよぼす可能性はほとんどない」ことは事実です。
政治家は、感情論で“事実”を変えようとする左翼の論陣に迎合すべきではありません。
政府やマスコミの過剰な報道が「2次被害」を生んでいる
むしろ、放射能による被害よりも、政府の方針による避難の長期化やマスコミの恐怖心を煽る報道による“ストレス”の方が健康被害を生む要因となっています。
だからこそ、幸福実現党は参院選に向けたマニフェストにおいて、「福島第一原発事故に伴う避難住民の早期帰還に向け、放射線量がすでに低く、居住可能な区域に対しては避難指示を解除する」ことを掲げています。
経済学者の池田信夫氏は「いま福島県で行われている『追加線量が1ミリシーベルト/年に下がるまで除染する』という方針には科学的根拠がなく、コストも何兆円かかるか分からない。それが終わるまで帰宅させないと、16万人の避難民のほとんどは家を失い、2次災害の被害はもっと増える。
すでに福島県の大部分の地域の実効線量は20ミリを下回っており、帰宅を阻止しているのは科学的根拠もなく恐怖をあおるマスコミである。」として、放射能よりも、政府の方針やマスコミの過剰な報道による『2次被害』こそが問題であることを指摘しています。(6/20 JBPRESS「高市発言で始まった原発再稼働をめぐる情報戦」)
「揚げ足取り」報道は、民主主義を破壊する
福島の放射線に関する科学的な事実を無視し、さらに前政権の復興政策のまずさを隠蔽した上で、「死者がいないから原発を動かすとは何事か」といった感情論に持ち込むマスコミの手法は、国民の良識によって支えられている「民主主義の基礎」を破壊する行為です。
ジャーナリズムの使命とは、国民に「正しさ」を選択する基準や、その判断材料を供給する事であるはずです。決して、恣意的な報道で国民の目を眩ますことではありません。
世論に大きな影響を与えることができる立場にいるからこそ、マスコミ各社には責任と良識ある報道を行って頂きたいと考えます。
そして、政治家は「正しい」と確信を持った政策については、世論に迎合することなく、逆風に向かってでも、断固、信念を貫き通すべきです。
幸福実現党は立党以来、一ミリたりともブレない「正論」を訴え続けて来た政党として、参院選において「先見力」ある政策を訴えてまいります。
(文責・幸福実現党神奈川4区支部長 彦川太志)