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自由主義と国防強化は両立するのか

幸福実現党は2009年の立党以来、国防の強化を主張しています。その一方で徹底した減税路線を実現し、日本を自由からの繁栄に導く政策提言を行っています。今回は、自由主義と国防強化は両立するのか否かについて論じていきます。

第一に、国を守るということは、生命・財産・安全を守ることと同義です。

仮に、中国や北朝鮮からのミサイル攻撃や侵略をされたらどのようになるか想像をしてみたらわかります。チベットや新疆ウイグルの例からは、言論の自由、表現の自由が奪われていることが見て取れます。最終的には、言語や国旗・国歌まで奪われているのが現実です。そして、仏教やイスラム教が国教となっていた国から信教の自由すら奪っているのです。

軍事的な覇権を握ろうとする中国が、実際に戦争や侵略行為を行えば、当然統制経済と全体主義へと突き進むことでしょう。その際、侵略を受けた側には営業の自由や財産権は一方的に略奪され、最後は全く自由が許されない暗黒社会となります。

現在、東アジアには社会主義や共産主義の名のもとに覇権主義・軍拡主義を続けている中国と北朝鮮があり、現時点では彼らが民主化を受け入れる様子はありません。むしろ逆に、一層軍事力を拡大して東アジアの制空権と制海権を掌握し、日本を締め出す方向に動いています。最近は、フィリピンやベトナムまでもが防衛に力を入れていることからもわかる通り、中国が平和を愛する国ではないことは明らかです。さらに言えば、国際社会のルールを無視してミサイルを発射し、核実験を強行する北朝鮮も、まともな国とは言えません。

安全保障全体に言えることですが、地味で何事もなければ国民はそのありがたさを実感することができないのは事実です。まるで空気や水道の水のように平和があると錯覚しているのが現代の日本人ですが、これは非常に甘い認識だと言わざるを得ません。国の安全はタダでは獲得できないのです。経済学では、フリーランチ(タダ飯)はないということが原則となっていますが、安全保障においても全く同じです。日本は立派な独立国である以上、相応の防衛力を持つのは当たり前であり、自衛隊を明確に軍隊に位置づけるべきでしょう。これは軍国主義でもなんでもなく、世界標準の考え方です。

だからといって、左翼が主張するように、自衛隊員が「暴力装置」にはなりません。むしろ逆で、戦争をいかに回避するかに全神経を使っているのです。どんなに勇気がある幕僚長がいても、部下が死ぬ可能性がある紛争や戦争を積極的進める人はいないのです。自衛隊は、国の安全を守っているだけではなく、自由をも守っているということは忘れるべきではありません。

国防と自由に関連して、古典的名作を紐解いてみましょう。この論考で何度も登場するL・V・ミーゼスの『ヒューマン・アクション』には、次のような記述があります。

自由を保持したいのであれば、独立を守る備えをしなければならない。(中略)ためらわずに侵略し奴隷化する者たちが満ちている世界では、完全な無条件平和主義は最も冷酷な侵略者に無条件降伏するに等しい。自由でいたい者は、自由を奪う意図を持った者たちに対して、最後まで戦わなければならない。(307p)

自由主義思想の最高峰に位置するミーゼスは無政府主義者でないことは、この文章を見ればよく分かります。ミーゼスは、国防に対する支出は市場経済と両立する旨を同書において展開しております。

同じく、1979年から1990年までイギリスの首相を務め、「鉄の女Iron Lady」とも呼ばれたサッチャー首相は、国防の充実を第一に上げていました。サッチャー首相は、1974年にノーベル経済学賞を受賞したハイエク教授の考え方を政策に応用したことで知られていますが、国防の重要性を誰よりも強固に主張していたのです(ハイエクも国防の重要性を認めていた)*参考文献 The Iron Lady John Campbell著(2009)

第二に、国防のような公共財と呼ばれる分野にも自由主義哲学は必要です。

いくら国の専権事項だからといって、税金を垂れ流して技術やサービスの向上を怠ることは許されません。世界一の軍事大国であるアメリカでさえ、「財政の壁」の影響もあり、軍隊の効率化を進めています。その意味では、今後は自衛隊の装備や兵器購入にあたって増税や国債の乱発が当たり前だと考えてはならないのです。安易に国債発行に頼らないためにも、今後は防衛産業を活性化させて国の負担減少を両立させる道筋はつけるべきです。

経済成長による税収増と防衛産業の発展は、今後の日本経済再生とも密接に関わっています。言い換えれば、幸福実現党が主張する「防衛力」と「経済力」の主張は、現代版の「富国強兵」「殖産興業」策だということです。当然のことですが、防衛産業は国家の主導ではなく民間主導で技術力と競争力を高め、将来的には技術を民間にスピンオフさせていくことまで考えるべきです。この流れは、科学立国とも連動しています。

今回は、主に思想面から自由主義と国防強化は両立できることを見ました。そして、国防強化と経済成長は密接に関係しており、安易な増税や国債発行に頼らないことを述べました。日本が独立国にふさわしい強国となるためにも、経済と軍事力の関連性について今後も研究を続け、政策提言していく予定です。
(文責:中野雄太)

中野 雄太

執筆者:中野 雄太

幸福実現党 静岡県本部幹事長

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