原発再稼働に見る民主党政権の統治能力の欠如――政府は他の原発の再稼働を即刻、決断せよ!
関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働が、16日正式に決まりました。しかし、3、4号機が両方フル稼働するまでには6週間が必要なため、7月中に電力不足に陥る危険性は排除できません。
関電は7月2日以降に準備している「計画停電」の設定は維持し、引き続き供給力不足に備えます。関電管内の企業は依然として、計画停電のリスクを抱え続けており、政府の決断は遅きに失したと言わざるを得ません。(6/16 日刊工業新聞「7月末フル稼働は不透明、計画停電への備え必要」⇒http://goo.gl/90u65)
また、大阪市の橋下市長や、滋賀県の嘉田知事は「電力不足なら今年の夏だけで期間限定で再稼働を行うべき」と要請しましたが、野田首相は「場限定の再稼働では国民の生活は守れない」と語り、今夏に限定した再稼働を否定しました。(6/9 読売⇒http://goo.gl/44ZFa)
橋下市長の大阪市のピーク電力時に限って「原発の再稼働を許してやっても良い」という矮小な御都合主義は論外であり、日本全体を考えれば「夏限定」と言っている余裕はなく、野田首相のメッセージは至極当然なのですが、いかんせん遅すぎました。
今年の夏は東日本大震災発災後、二度目の夏であり、このような電力不足は100%予見されていたにもかかわらず、その間、民主党政権が行ったことは、法的根拠のない浜岡原発の停止要請、突然の全原発へのストレステスト実施の決定等により、結局、最も避けるべきであった全原発全停止の事態に至らしめました。
このように迷走した挙句、時間切れ直前で、なし崩し的に原発再稼働を決定する。しかも、大飯原発3、4号機を除く52基の原発については、現在のところ、再稼働の目処は全く立っていません。
現在、保安院がストレステストの審査が終わった四国電力伊方原発3号機、北海道電力泊原発1、2号機、九州電力川内原発1、2号機、北陸電力志賀原発2号機等が次の再稼働の候補に挙がってます。(6/19 日経BP⇒http://goo.gl/d6vyH)
次の原発の再稼働は9月に発足する原子力規制委員会が打ち出す安全基準によって判断されることになります。(同上)
原子力規制委員会は、経済産業省原子力安全・保安院や原子力安全委員会などを集約し、独立性を高めた三条委員会として規制委員会を設置して原子力安全規制行政の一元化を図るというものです。(6/18 電気新聞⇒http://goo.gl/5VVZc)
規制委員会は委員長を含めて5人の委員で構成されますが、細野大臣はその条件として高い専門性と共に、「危機管理ができる人格」を挙げました。(NHKクローズアップ現代6/18)
これは、危機管理が出来ない異常人格者により日本の原子力行政が危機に晒されたことへの反省であることは明らかでしょう。あえて名前は明記しません。
2011年は前年に比べて4.4兆円も燃料(原油・LNG・石炭)の輸入金額が増えています。2011年の日本の貿易収支は2.5兆円の赤字となり、31年ぶりの赤字に陥りましたが、赤字の最大の要因は「脱原発」による燃料輸入コストの増大です。(2/3 みずほ総研⇒http://goo.gl/3hKUr)
すなわち、民主党政権が原発の再稼働を決定しないという怠慢・放置・無作為により、日本から日々100億円以上の国富が流出しているのです。
残る52基の原発に関しては、政府は安全が確認された原子力発電所より即刻、再稼働を決断し、ほとんどの原発が停止している異常事態からいち早く脱すべきです。
(文責・加納有輝彦)