「今こそ国防!」――朝日新聞の世論誘導と沖縄の危機
5月9日、朝日新聞は沖縄タイムス社との共同世論調査の結果として、「沖縄の米軍基地が減らないのは『本土による差別だ』と答えた人が、沖縄では50%に上った」と報じました。(5/9 朝日「基地集中は『本土の差別』沖縄で50%」⇒http://goo.gl/t9KEA)
記事には「沖縄では2010年ころから、米軍基地の押し付けを『差別』と捕らえる見方が広まってきた。《中略》復帰40年、本土は米軍基地を沖縄へ押し付けたまま、結局のところ何もせずに傍観してきた」と報じています。
このようにして、本土や沖縄の左翼マスコミ主導で「米軍基地撤退」に向けた世論が形成されている現状は大問題です。
沖縄に米軍基地が集中しているのは、本土による「沖縄差別」でも、「沖縄への負担の押し付け」でもありません。純粋に、日本とアジア防衛の「要衝の地」であるという沖縄の地政学的理由によるものです。
現在、沖縄に米海兵隊基地があるという「プレゼンス」そのものが、沖縄侵攻を躊躇させる抑止力となっています。
沖縄に米軍基地がある限り、沖縄に対する攻撃は同時に「米軍への攻撃」と見なされ、米軍による反撃が行われるため、米軍基地自体が「トリップワイヤー(仕掛け罠)機能」を有しているのです。
また、沖縄から、海峡有事が予想される台湾までは約600km、半島有事が予想される韓国のソウルまでは約1300kmの近さにあり、沖縄の米軍基地こそが一触即発の極東情勢勃発を抑止している「蓋(ふた)」の役割を果たしています。
したがって、米軍を沖縄県外・国外に撤退させれば、平和がやってくるかと言えば、逆に中国による台湾・尖閣・沖縄侵攻を呼び込み、次には九州、日本全域が中国の属国になる日がやってきます。
中国は1974年、ベトナム戦争で米国が撤退すると、「力の空白」に乗じ、ベトナム統治下のスプラトリー(南シナ海南沙)諸島に進出。抗戦の末、ベトナム兵70人を殺害し、軍事力で実効支配しました。
更に92年、米海軍がフィリピンから撤退すると漁船に偽装した海洋調査船を多数派遣、95年にはフィリピンの排他的経済水域のパラワン島近くのミスチーフ環礁に軍事建造物を建設しています。(6/8産経「『尖閣』危機 南シナ海に学び『空白』を作るな」⇒http://goo.gl/ocGZt)
先日も中国の漁業監視船が尖閣諸島周辺の接続水域を航行しました。東京都の同諸島購入方針表明以降2度目であり、今年5回目になります。(6/6産経 「挑発?尖閣周辺に中国監視船 都の尖閣購入方針表明後2度目」⇒http://goo.gl/cX9za)
昨今の中国海軍の尖閣・沖縄侵出の活発化は、第一列島線(九州・沖縄・台湾・フィリピンを結んだ線)内にある南シナ海、東シナ海を「中国の海」にするという、一貫した海洋戦略(「戦略的辺彊」論)に基づく計画によるものです。
したがって、南シナ海で起きたことは、東シナ海でも起きます。日本は「南シナ海の教訓」に学ぶべきです。
フィリピンから米軍が撤退したきっかけは、国内で「米軍反対運動」が起こったからでした。今の沖縄と酷似しています。
一方、中国の海洋進出の野望に気づいたマレーシアは、85年に領有を主張するラヤンラヤン島に人工島を増設し、滑走路を建設し、海軍を常駐させました。これに対して中国は「漁船保護」の名目で武装漁業監視船を派遣、更にガス田海域で資源探査を開始しました。
マレーシアもこれに対して、近隣地へ哨戒ヘリを配備する航空基地を建設。また、兵器の近代化によって中国に対抗しています。こうした毅然たる態度によって、マレーシアは軍事的均衡を保ち、自国を守ってきたのです。(前掲、6/8産経)
別の角度から見ると、「地方分権」を進めて来たフィリピンと、「中央集権」による国家統治が強いマレーシアとの違いでもあります。「地方分権」だと政府の力が弱まり、フィリピンのように地域の反対運動で国防政策が左右されることになります。
こうした教訓からも言えるように、日本の安全を守るためには、中国の海洋覇権の野望を見抜き、決して米軍を撤退させ、「力の空白」を作ってはならないということです。また、民主党や橋下市長らが推し進める「地域主権論」などは許してはなりません。
国難突破のためには「日米同盟」強化、並びに憲法9条改正を通じた「自主防衛強化」こそが、中国の覇権主義を抑止する最も有効な施策です。
「今こそ国防!」――私たち幸福実現党は、それを強く訴えて止みません!
(文責・佐々木勝浩)