未来産業を見据えた理数系教育の充実を
日本は「ものづくり」大国と呼ばれています。
高い技術力を持った製造業が存在するわが国では、国際的にも重要なサプライチェーンとして不可欠の国であることは、2011年の3月11日に発生した東日本大震災によって改めて明らかとなりました。
言い換えれば、従来のIT産業や航空宇宙産業などに必要不可欠な部品を製造する企業が、東北地方に多数点在していたということです。
近年では、円高の影響と低コストを売り物にして国際市場に輸出攻勢をかける中国やベトナム企業の存在がクローズアップされています。
ただ、依然として技術力の高さと国際市場への供給網を維持しているということは、日本のものづくりの質がいかに高いかを証明しています。
翻って見れば、昨年から円高と原発停止による電力不足懸念が製造業を中心にあるわけですが、もっと根源的な問題を考える必要があります。それは、技術力の基礎になる理数系教育です。
幸福実現党の支持母体である宗教法人と学校法人幸福の科学学園では、英語教育の強化を掲げています。国際社会で通用する若者を育成していく上では大事な政策です。
英語による情報発信力と交渉力は、今後の日本経済、外交にプラスに働く可能性は高いと言えます。国際言語は英語ですので、英語教育の重要性は、しばらくは衰えることはないでしょう。
ただ、忘れてはならない視点があります。英語以外に国際言語となっているのが、実は数学なのです。
ノーベル経済学者として、経済学会最高峰に位置すると言われたP・サムエルソンは、教科書の中で、「数学は言語である」という表現を章の扉に明記しています。数学は、万国共通であり、「第二の国際言語」という視点は、時代が流れても変わることはないでしょう。
さて、問題となっている日本の数学教育に視点を向けてみましょう。
2月25日に各新聞で発表された記事では、大学生の24%が平均の考え方を理解していないということが発表されました(日本数学会が昨年4月7月にかけて、全国6千人の新大学1年生を対象にした数学テスト)。
平均を問う問題は、小学6年生のレベルであるにも関わらず、理工系の学生も18%も間違えていたということであり、大学生の学力低下の象徴として浮き彫りになったのは記憶に新しいでしょう。関連記事はこちら→http://bit.ly/Jb5cLx 問題の正答例はこちら→http://bit.ly/KucLvv
今回の対象となった大学生は、平成10年の学力指導要領で学んだ、いわゆる「ゆとり世代」です。授業時間を減らし、基礎学力習得を目的として始められたゆとり教育は、明らかに学生の学力低下に影響を及ぼしました。
また、数学の試験にも関わらず、記述式問題では日本語自体がおかしい答案も散見されたことを指摘する識者もいます。昭和大学の小野博客員教授は、「数学以前に日本語の文章力ができていない」とします。
政府としては、「脱ゆとり対策」として平成20年改正の新学習指導要領で授業時間を3割増やすことや、マークシート方式ではなく「書かせる」試験を増やすようにしていますが、全面実施は小学校で今年度、中学校で来年度からになり、対策は遅きに失したと言わざるを得ません。
今回の試験を実施した日本数学会理事長の宮岡洋一東大教授は、「数学は科学技術を支える基盤であり、数学で育まれる論理力は国際交渉でも不可欠」と発表しています。
宮岡理事長が指摘しているように、国際社会ではディベートが基本です。言いたい放題ではなく、冷静で客観的な分析と論理的展開に熱い情熱が説得力を生みます。
さらに付加すれば、数学を理解するためにも、やはり母国語の文章読解力も大事です。数学は難しい概念を数式やグラフによって表現しているに過ぎません。経済学でも高度な数学が多用されていますが、複雑な経済事情を数式モデルによって表現する手段です。
幸福実現党は、英語教育の充実と歴史教育の重要性にはかなりのメッセージを発信してきましたが、ロボットや航空宇宙産業などの未来産業育成を提言している以上、今後は理数系教育の重要性も訴え続けていきたいと思います。
これは、日本の伝統である高い技術力維持と未来社会創造のためにも避けられない道なのです。
(文責:中野雄太)