チベットの「信仰の自由」を奪う中国に対して、日本政府は毅然として抗議せよ!
チベットで1月23日、ダライ・ラマ14世のチベット帰還を求める住民のデモ隊に中国武装警察が発砲し、3人が死亡しました。続く24日にも、同デモ隊への発砲が行われ2人が死亡、けが人も多数出ている模様であることをチベット亡命政府が発表しています。
これに対して、中国当局は24日、暴動のきっかけは「『チベット人僧侶3人が焼身自殺する。遺体を政府に渡すな』とのデマと扇動だった」と発表しています。
今回のデモの発端は、昨年5月22日にチベット自治区ラサ市などで行われた「チベット平和解放60周年」の記念行事に遡ります。
この記念行事は60年前の1951年5月23日、中国中央政府と中国共産党の意向を受けたチベット地方政府が「チベットの平和解放の方法についての協議書」を交わしたことを祝ったものです。
しかし、実際には「平和解放」とは名ばかりの「中国によるチベット侵略」が行われました。
「チベット平和解放60周年」の記念行事の機に及んで、チベット独立とダライ・ラマ14世の帰還を訴える若い僧侶たちを中心とした中国政府への抗議を表明した焼身自殺が相次ぎました。中には中国政府の手によって遺体すら帰ってこない現状があります。
中国は、世界からの人権侵害に対する抗議をかわすために、仏教寺院を再建し、その中で礼拝することを許可しています。
しかし実際には、共産党の許可を受けた少数の人達だけが僧侶となれるだけで真の仏教信仰者の修行や布教活動は禁止されています。
中国政府への抗議は「国家反逆罪」も適用され、チベットでは5人以上の集会も認められていません。
したがって、「信教の自由」を奪われた若い僧侶たちの唯一の抗議は集会ではできず、単独行動で行う焼身自殺しか残されていないのです。
中国に自治区化されたチベットでは「ダライ・ラマ法王14世による五項目和平プラン」(1987年9月21日の米国議会における演説)によれば、過去数十年間に渡り、総人口の6分の1に当たる100万人以上のチベット人が中国人によって殺され、少なくとも同数のチベット人が信仰を持ち自由を求めたために投獄されてきました。
また、ウイグルもそうであったように中国の侵略は、大量の中国移民を送り込むことによって「民族浄化」(民族の殲滅)が行われることも共通しています。
一方で中国のチベット住民への発砲やチベット僧侶の焼身自殺が続いている報道について、米国チベット問題担当調整官を務めるオテロ国務次官は1月24日、「深刻な懸念」を表明を発表し、中国政府がチベット族の宗教や文化、言語の存続を脅かす「非生産的な政策」を実行していると批判しました。
また、国務省のヌーランド報道官も定例記者会見で、2月14日にホワイトハウスで実施されるオバマ大統領と習近平中国国家副主席の会談で、人権問題が取り上げられるとの見通しを示しています。
ヨーロッパ各国も中国の人権問題に対する関心は高く折りにふれて抗議をしてきたことは広く知られています。
特に天安門事件以降、各国は中国への人権侵害に対する抗議の機運が高まりましたが、これに口を塞いできた国は、先進国ではロシアと日本だけです。
チベットの問題は遠い国の問題ではありません。軍事的な力を背景にアジアで覇権を拡大する中国の侵略の触手は、尖閣諸島や沖縄へと伸びてきています。
中国のチベットの侵略は「チベット自治区」への中国地方政府から始まりました。
既に「沖縄琉球自治区設立」という言葉が中国で踊り始めているように、今日のチベットは「明日の沖縄」「明日の日本」になる可能性も否定できません。
チベットが中国の侵略を許してしまった背景には、争いを好まない仏教の教えの前に中国の「平和解放」の甘い言葉に潜む侵略の意図を見抜けなかったことがあります。
日本は戦後、「平和憲法」を信仰し、周辺国の「公正と信義に信頼して」、自国の平和を守ることが出来ると信じてきました。そして、「日本さえ外国に侵略しなければ、永遠に日本の平和は続く」と教え込まれて来ました。
しかし実際には、北朝鮮のような「核」で脅して食料を援助させる国や、中国のようにチベットやウイグルを侵略してきた「公正」や「信義」もない国が近隣に存在しているのです。
日本の平和は「日米同盟」という核の傘のなかにあって、米国との圧倒的な軍事的力の差の前に北朝鮮や中国が触手を伸ばせなかったに過ぎません。
「平和」とは、外交交渉の努力や国を守る気概と軍事的な背景の上に築かれているのです。日本の平和を守るためには、まず次々と侵略の歴史を重ねてきた中国の本質を知る必要があります。
しかし、中国のチベット弾圧に対して、民主党政権からは抗議する声すら聞こえてきません。
日本は「アジアのリーダー国家」としての自覚を持って、中国の人権問題に対して毅然たる態度で抗議し、中国の民主化をバックアップすべきです。
(文責・佐々木勝浩)