ロシアの挑発行為に「ドジョウの構え」?
野田政権発足後、ロシアの軍事的な挑発行為が活発化しています。
9日付の産経新聞では「露軍、北海道領空付近を訓練空域に 野田政権牽制か」と題し、次のように記載しています。
「ロシア軍は8日、北海道北東部の日本領空に接する形で設定した訓練空域などで演習を始めた。野田佳彦首相が東京電力福島第1原発を視察する時間帯に合わせ、爆撃機が福島県沖を飛行。日本列島を完全に1周するのは極めて異例で、北方領土付近では空中給油機も合流し、露骨な挑発の意図が鮮明になった。」
飛行したのは、通常の偵察機や戦闘機でもなく、TU95という「長距離爆撃機」です。しかも、TU95は空中給油を行いながら、約14時間にもわたって日本領空周辺を飛行しているのです。
防衛省幹部は「前代未聞で今後の動向も予測不能だ」と述べています。
もし、ロシアが同様のことをアメリカやイギリスに対して行なったとしたらどうでしょうか?外交的にも軍事的にも極めて重大な問題になることは間違いありません。
かてて加えて10日には、ロシアの海軍艦艇24隻が北海道の北にある宗谷海峡を新たに通過したことが分かりました。24隻の露艦艇が宗谷海峡を通過したのは過去最大規模で、野田政権に対する露骨な挑発行為と見られています。
更に、ロシアのプーチン首相は9日までに、北方領土開発に31億円を追加拠出する政令に署名。ロシア副首相は国後、択捉両島へのアクセスを改善するため両島で新空港を建設中であることや、色丹島でヘリコプター用空港を建設していることを首相に報告しています。これは明らかに軍民両用の可能性があります。
ロシアは野田政権発足直後に、挑発行為を重ね、野田政権の対応を見極めているものと見られますが、これに対して、野田政権の対応はあまりにお粗末であると言わざるを得ません。
同紙によれば「玄葉光一郎外相は9日、ラブロフ露外相と電話で会談し、『露軍機の動きに対し日本国民の間で疑念が生じている。刺激的な行動は自制してほしい』と要請した。ラブロフ氏は『国際法上、問題ない』と答えた」という対応です。
その事件から5日経過した13日、野田首相は国会で所信表明演説を行い、その中でこの問題に触れることもなく、「日露の関係については、最大の懸案である北方領土問題を解決すべく精力的に取り組むとともに、アジア太平洋地域のパートナーとしてふさわしい関係の構築に努めます」と述べたに過ぎません。
まさに泥に頭を入れて、都合の悪いことは素知らぬ顔――。
しかも、この時期、東シナ海では中国軍のY8の情報収集機型が日中中間線を越え飛行し、日本の安全保障はまさに風雲急を告げています。
「ドジョウの構え」では、日本の国民と領土は守れないことを知るべきです。
(文責・矢内筆勝)