中国漁船衝突事件から1年、益々高まる尖閣危機
7日、尖閣諸島沖で起きた海上保安庁巡視船に中国漁船が衝突した事件から1年が過ぎました。
野田新内閣の藤村修官房長官は記者会見で「尖閣諸島は歴史的にも国際法的にもわが国の領土であることは全く疑いない」「尖閣を含め、わが国の領域をしっかりと保全していくことは政府としての基本的な責務だ」と答えています。
しかし、尖閣諸島問題の現状はもっと深刻です。7日付の読売新聞は次のように報道しています。
「周辺海域では今も多い日には約50隻の中国などの漁船が確認され、8月には中国の漁業監視船が領海に侵入した。地元漁師らは『領土や領海を守る姿勢を国がしっかり示さなければ状況は変わらない』と不満を募らせている。
海保によると、尖閣諸島周辺で今年、外国漁船が領海に侵入し、退去警告を行ったのは29件(8月末現在)。昨年同期の137件と比べて減少しているが、昨年は9月以降300件近くの退去警告を行っており、海保幹部は『今後急増する可能性もあり、予断を許さない』と警戒する」
日本の領海周辺での中国漁船の不法操業は今や(かなり以前から)当たり前になっており、そうした中、漁船や漁業監視船による領海侵入が「戦略的」に繰り返されているわけです。
また、中国空軍の戦闘機が8月中旬、東シナ海の日中中間線を越え、海上自衛隊の情報収集機を追尾していたことも明らかになっています(9月7日付産経新聞)。
菅首相が政権から退くことが明らかになった、言わば「政治空白」の時期に、空からも中国軍戦闘機による威嚇が行われていたわけです。
これが今、日本が直面している国防問題の現実です。
藤村修官房長官が「尖閣諸島は、わが国の領土である」と述べたことは、民主党政権にあっては珍しくまともな発言だと評価をする向きもありますが、それはただ単に「お題目」として、当たり前の、紙に書かれたことを読み上げただけであり、それ以上、何ら具体的な国防政策も、中国への抗議も一切触れられていません。
そこに、国防や主権への問題意識が欠落している民主党と、野田政権の本質が透けて見えます。
中国をはじめ、周辺諸国はそうした民主党の実態を、これらの発言から読み取り、次の手を着々と練っているはずです。
(文責・矢内筆勝)