2012年は国家としての「危機管理能力」が厳しく問われる
12月19日の金正日氏の死去から既に「激動の2012年」の幕が開きました。
2012年は、アメリカ、中国、韓国、台湾、ロシア等、日本を取り巻く各国首脳が交代・再選に直面しています。その中で、各国首脳が権力を掌握すべく、外圧を強め、有事を起こす事態も想定されています。
しかしながら、「激動の2012年」を目前に、様々な点から日本の危機管理意識の希薄さと危機管理能力の欠落が浮き彫りになっています。
19日昼。北朝鮮が「特別放送」を予告し、金正日総書記の死去も予測された中、野田首相は「遊説の約束は破れない。何かあれば、すぐに連絡してほしい」。こう言い残して街頭演説に向かいました。しかし、すぐに戻るはめになりました。
その後、閣僚を集めて緊急に開いた「安全保障会議」も、たったの10分で終わりました。議論の材料になる情報がなかったからです。
20日以降も各省庁から野田首相に報告が上げられましたが、「関係国による分析の内容などが多く、目立った情報は入っていない」(首相周辺)という始末です。(12/22日経)
金総書記の死期が近いことは分かっていたのに、政府は情報収集をろくにしておらず、死亡発表後の混乱もお粗末です。
高度情報化社会と言われて久しく、一企業活動においても情報こそが生命線となる現代社会において、国家の存亡と国益を守るための主体的な諜報活動がなく、諸外国の情報収集や分析能力に依存している現状では、国家の重要な意思決定をすることは出来ず、到底、自立した主権国家とは言えません。
危機管理体制のあり方については、北朝鮮ミサイル発射実験などを受けて、安倍政権時に、形骸化して機能不全であると指摘された「安全保障会議」を強化すべく、「日本版NSC(国家安全保障会議)」が提起されましたが、実現には至りませんでした。
今回、日本版「国家安全保障会議」(NSC)創設を目指す民主党の作業チームは13日、既存の「安全保障会議」が形骸化しているとして、廃止を含めて在り方を見直す方針を固めました。
今後、民主党内での結論がどうなるかはまだ不明ですが、国家戦略室と国家戦略会議のように、曖昧で重複する数多くの審議会や組織をつくりながら、何ら機能していない現状を見ると、官僚組織の肥大化が進んでいくことが危惧されます。
危機管理に対応できる国家を築くには、まずは危機管理に対処する官僚組織を掌握する政治家の見識こそが問われています。
また、特にインテリジェンス(情報活動)や周辺有事への即応体制のあり方が問われており、機能強化と再構築が急がれています。
「2012年は予測不能の年」だと言われおり、危機管理能力の欠如は「国家存亡の危機」を招きかねません。
政府は様々な「想定外」の事態に対し、機動力を持って臨機応変な対応を実現できる危機管理体制の構築を急ぐべきです。
(文責・小川俊介)