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沖縄マスコミと田中前防衛局長更迭事件

民主党政権は発足当初、「対等な日米関係」を目指すため、核持ち込みをめぐる日米間の「密約」を国民に暴露し、かつ親密な日中関係を築き、「友愛精神」に基づいた「東アジア共同体」構想を掲げ、「日米中の正三角形」等距離外交を展開しようと試みました。

この動きは、米国の「核の傘」から離脱し、かつ中国に対しても核兵器削減を要請することによって、日本主導で「アジア・環太平洋の平和を演出する」という夢想がもたらしたものだったのではないでしょうか。

当然、中国は我が国の要求に応じるはずがありません。12/5の産経は「中国の核弾頭は3000発?学生暴く 推計大きく上回る可能性」という記事を掲載し、中国が従来の推計(400発)を大幅に上回る数の核ミサイルを開発していることを明るみにしています。⇒http://p.tl/oZ5P

そして昨年5月、民主党政権は現実に立ち戻らざるを得なくなりました。鳩山元首相は「学ぶにつけ、沖縄に存在する米軍全体の中で海兵隊は抑止力を維持できるという思いに至った。(認識が)甘かったと言われればその通りかもしれない」と自らの誤りを完全に認めました。

その時、米国から我が国につきつけられたのは「あなた方は本当に約束を守る気はあるのか?」ということでありました。

その約束とは2006年の「在日米軍再編合意」であり、その後、民主党政権がまた振り出しに戻した後に、再度合意に戻った2010年5月の「日米共同宣言」にある普天間飛行場の辺野古移設の履行を指します。

法律的には、「日米合意」に基づいて辺野古沿岸部の埋め立てを申請する前提として、年内に環境影響評価書を県知事宛て提出しなければなりません。

さて、県議会の米軍基地関係特別委員会が11月9日に開かれ、翌日の沖縄の新聞は「(県議会は)政府への環境影響評価書提出の断念を求める意見書案を決めた」と報じました。驚くことに、議決されるのは11月14日であるにかかわらず「全会一致で採択される見通し」となっておりました。

とても異様に感じたのは、一面トップを飾った新聞の見出し。大きく「評価書断念県議会要求へ」という文字でした。

11月14日に開かれる臨時県議会に提案される議案の採択がなぜ事前に分かり、しかも全会一致などと報じることができるのでしょうか。大変不思議でなりませんでした。

これが本当に民主主義なのだろうか?私には、今では名護市民の半数以上が「辺野古移設容認」だという肌感覚があります。

それなのに、県議会議員は全員が(民意を代表して)評価書提出に反対するといいます。

私には、この裏には「県議に対するマスコミの脅しがあるのではないか?」という疑念が湧いて仕方ありませんでした。

報道関係者は「報道」を通して「公共の福祉に資する」と言いますが、本当にそれが「公共の福祉」なのでしょうか?

「全会一致とあらかじめ報道したのだから、反対票を投じれば次期選挙で落選するぞ、新聞の読者が監視しているぞ」という脅しなのではないでしょうか。沖縄のマスコミは「民意」よりも上位に立つ「第一権力」と化しています。

そのように思っていた矢先の11月29日、「田中防衛局長更迭」という号外新聞(『琉球新報』)が配布されたのです。東日本大震災が起きた翌日でさえ、号外は発行していないと聞いています。

事の発端は、11月28日夜の田中聡前局長と記者団との懇親会でした。田中前局長は、完全にオフレコという約束で、10社の報道記者と居酒屋で飲んでいました。

酒も進んだ前局長は、記者からの「評価書提出はいつごろでしょうか」という問いに、「(女性を)犯す前に犯しますよと言うか」と暴言を吐いたと報道されています。

しかし、防衛省が公表した内容によりますと、評価書をいつ提出するのか、に関する話題の際、前局長は「私から『やる』前に『やる』とか、いつ頃『やる』とかいうことは言えない」「(略)乱暴にすれば、男女関係で言えば、犯罪になりますから」という趣旨の発言をした記憶があるとしています。

更に、「少なくとも『犯す』というような言葉を使った記憶はない」とのことです。

前局長の発言を擁護する気はありませんが、完全なオフレコの約束であるに関わらず、お互いの会話が聞き取れなくなることもあり得る、にぎやかな居酒屋という場所で、しかも酒に酔ってなされた発言を、号外を配布するほどの大事件として報道しているのです。

その記者はその場では田中局長に抗議をせず、こっそり帰って沖縄紙にとって都合良い形で記事にする。はっきり言って、これは道義にもとる行為であります。

さらに、県議会が全会一致で評価書提出断念を政府に要求したことを「県民の総意」だとして、女性や県民を侮辱した役人が評価書を無理やり提出しようとしていたことを批判し、「民主主義が泣いている」として、自作自演で「民意の代表」たる立場を騙っております。

田中前局長は米軍基地問題に精通し、普天間移設をめぐる環境影響評価(アセスメント)の評価書提出に向け、準備作業を指揮していた中心人物です。同氏の更迭により、辺野古移設が更に遅れる可能性が出て来ました。

今は、沖縄のローカルメディアに振り回されている時ではありません。沖縄の新聞社が「日本やアジアの安全保障」の責任を取れるはずがありません。

米豪両政府は、米海兵隊をオーストラリア北部に駐留させることで合意しました。来年半ばをめどに200~250人の海兵隊員を配置し、将来的には2500人規模まで拡大する予定です。

この件について、クリントン大統領時代に日米同盟の大切さを強調し、アジアの安全保障体制に深く関与したジョセフ・ナイ元国防次官補は、県民が受け入れがたい現行の移設計画ではなく、制約の多い沖縄と比べ訓練や演習が自由にできる豪州に海兵隊が移ることは「賢明なことだ」とエッセーを寄稿しています。

この意見は、「国の安全保障政策は政府の専権事項である」という認識すらない日本政府に対する「あきらめ」とも取れます。

沖縄県という一自治体が、アジアの平和に関することまでを決定する権限を有しないのは当然のことです。

その意味で、辺野古移設の環境影響評価書の提出という政府方針は、国民を守る責務の上で決定されることでなければなりません。

野田首相は「沖縄県民を守るためにこその辺野古移設」という当たり前のことを粛々と推し進めて頂きたいと思います。
(文責・沖縄県本部副代表 金城タツロー)

金城 竜郎

執筆者:金城 竜郎

幸福実現党沖縄統括支部代表

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