Home/ 2011年 August 2011年 August 日本国債格下げをどう見るか 2011.08.24 米国の格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは、日本国債を21段階の上から三番目の「Aa2」から「Aa3」へと格下げしました。同社による日本国債格下げは、実に9年3ヶ月ぶりとのことです。 格付け会社による評価には、各社による独自の推計法があるために、客観的な指標とは言えない面はあるでしょう。 しかしながら、米国格付け会社の情報が国際金融市場に与える影響は無視できません。 興味深いことに、同社による格付けの見通しは「安定的」とされています。 多くの方は、格下げをしているのに「なぜ?」と思われるでしょう。 結論は後ほど述べるとして、まずは安定的という言葉から見る必要があります。 まず第一に、日本政府には累積粗債務が1000兆円ほどありますが、その一方で700兆円弱の資産があること、国債購入者の95%が日本人によるものであるため、対外的なリスクからみて「安定的」だといういうことができます。 第二に、今後も日本は国債を消化する能力があるかどうかという視点があります。 拙著『日本経済再建宣言』第三章196ページには、日本国のバランスシートを掲載しています(出所:日本銀行の資金循環統計2010年3月末時点)。 統計を見れば、家計には、資産から負債を引いた純資産は約1010兆円あります。また、国債を購入する金融機関の純資産は約11兆円あります。この二つをあわせた(家計だけを原資とする意見もある)1021兆円が国債購入の原資と考えられます。GDPの2倍強の原資があれば、まだまだ日本には体力があると判断できるわけです。 要するに、わが国は、政府と企業以外は黒字体質で、国家全体では268兆円もの純資産を持っています。政府の財政状態は決してほめられるものではないにせよ、日本国全体としては黒字なので、まだまだ「安定的」に国債を消化することが可能なのです。 客観的に分析すれば、日本国債の格下げは解せない点が多いのですが、格下げをされたということは、上記の指標以外の要因があるのです。同社の発表では、粗債務の累積額とデフレ基調、そして総理が頻繁に変わる政治的不安定さを挙げています。これは予想された見解ですが、もっと大事な論点が隠されています。それは、適切なマクロ経済政策が打たれていないことや、震災復興に向けての具体的なビジョンと方法論が定まっていなことの結果として成長率低下を招いているという事実です。 日本の経済政策とパフォーマンスの貧弱さは、国際機関の見通しも暗くしています。 例えば、IMF(国際通貨基金)は、4月末時点では1.4%の成長率を予測していましたが、6月にはマイナス0.7%へ下方修正しています。一方、OECD(経済協力開発機構)は、4月時点では0.8%の予測に対して5月末にはマイナス0.9%へと、やはり成長率の見通しを大幅に修正しました。両者は、日本の債務に対して増税を主張するなど、一概に納得できない点も多数あるとはいえ、日本経済のトレンドとしては低成長であることを指摘しています。 今後も低成長が続けば、所得と企業収益が伸びないため、税収の伸びも緩慢となります。同時に、子ども手当てなどのバラマキが継続した場合、赤字国債の発行も嵩みますので、ますます日本の財政は逼迫することも予想されます。よって、現時点の経済状況と政策の貧弱さを見る限りは、格下げされても仕方ない面もあることは認めるべきでしょう。 ただ、格付け会社は国際機関が発表している数字や日本政府の経済政策の動向も見守っています。 よって、まずは政府がデフレ脱却と経済成長への決意を表明し、且つ実行に移すことが先決です。 次に、成長率や債務GDP比率の低下など、具体的な数値が付いてくれば、再び日本国債が格上げ要因となります。 まもなくはじまる民主党の代表選。 増税や原発への対応など、さまざまな論点が出ています。 やはり、デフレと円高の是正や経済成長は欠かすことはできません。 米格付け会社によって、わが国の国債が格下げされたなら、「1年以内に格付けを上方修正させます」と言い切る人材が総理でなくてはなりません。現在の代表選候補からは何もコメントは出ていないのは誠に心もとない限りです。 幸福実現党は、既に日本経済再建の道筋を提示しました。 私たちの使命は、先人たちが築き上げてきた繁栄を守り、未来につなげていくことです。 このまま、格下げに意気消沈するわけにはいきません。 今こそ、日本を再建する経済政策を断行する時です。 (文責:中野雄太) 蓮舫議員「日本の若者への歴史教育が足りない」 2011.08.24 「日本は歴史上において中国を侵略した歴史がある。これは非常に痛ましい事実。しかし一部の日本人はこれを認めていない。日本の内閣メンバーはたまに中国の人たちを傷つける発言をしている。学校にしても家庭にしても、日本の若者への歴史に関する教育が足りないと思う。日中戦争のころの歴史に関して、多くの学校は自習という形をとっている」 今月21日に北京で開催された「第7回北京―東京フォーラム」(中国日報社と日本のNPOが主催)での蓮舫首相補佐官の発言です。 会議には、中日両国の政治界、ビジネス界、学術界、メディア界など各界から約600人が出席していました。 台湾人の父と日本人の母を持つ日本の議員で唯一の中国系(父親が台湾人)の女性議員ということで、ただでさえ中国メディアの注目を集めただけでなく、内閣府特命担当大臣を経て、国民啓蒙宣伝大臣(消費者及び食品安全担当)を歴任した「元大臣」の今回の発言は、外交上、日本の国益を大きく損ないかねず、決して看過できないものがあります。 何よりも、昭和12(1937)年7月7日の「廬溝橋事件」から、昭和20年8月15日の終戦まで続いた「日中戦争」が、日本の侵略戦争であったかどうかは、その立場によって様々な歴史的見解があり、歴史的にも、外交的にもまだ確定していない問題です。 中国はこの戦争を日本軍国主義による「中国侵略」だと主張し、日本に対して、繰り返し「過去の戦争責任」の追求と「正しい歴史認識」を強要してきました(靖国神社問題、教科書問題などがその典型です)。 その一方で、日本を戦後占領したマッカーサーが昭和26(1951)年5月、アメリカ上院の軍事外交合同委員会で証言したように、先の大戦は日本の侵略戦争ではなく、「自衛戦争」であったとする有力な見方も存在しています。歴史は多面的に見ていくことが大切です。 こうした歴史認識に関する問題は「国益」に深く関わるものであり、日本国民を代表する、しかも元大臣である現職の与党議員が、公の場で軽々しく発言すべきものではないはずです。 百歩譲って、もし蓮舫氏がそうした「自虐史観」を自らの信念として、普段から日本国民に向かって発言し、主張してきたのなら、一政治家の政治信条の発露として、許されるかもしれません。 しかし、蓮舫氏がそうした発言を国内で、日本国民に向かってしたという事実を寡聞にして知りません。 普段は日本国内で、日本国民に向かって言えない、そうした発言を、なにゆえに外国で、外国人に向かって発言するのでしょうか? それが日本の国益に関わることであることを知っての上での発言しょうか? そうした政治家は歴史上、「売国政治家」と言われています。 もしそうでないとすれば、2009年に「事業仕分け人」として、スーパーコンピュータの予算を削減するにあたって、「世界一になる理由は何があるんでしょうか?2位じゃダメなんでしょうか?」と発言、国民の猛反発と失笑をかった時と同じように、「思わず本音が出た」のでしょうか? いずれにしても、今回の発言によって、日本の「国益」を担う責任も自覚もなく、外国に阿(おもね)ることで、自らのパフォーマンスとする同女史の政治家としての素性が、また一段と明確に明らかになったと言えるかと思われます。 いずれにしても、蓮舫氏には、是非とも「中国の侵略の歴史」も学んでいただきたいものです。 1949年にウイグルを侵略し、1951年にはチベットに侵攻して併呑し数百万人を虐殺、1979年にはベトナムを武力侵略。また1989年には中国天安門で学生による民主化運動を軍隊で強行鎮圧。 さらに1992年領海法を制定し、95年にフィリピンが領有してきたミスチーフ環礁を占領。そして、2009年の尖閣諸島中国漁船衝突事件では、日本が固有の領土である尖閣諸島の領有を主張し、日本に対して様々な報復措置を実施した中国――。 まず、日本の子供たちを批判する前に、日本の政治家として、こうした中国の「侵略の歴史」を勉強すべきです。そして、正しい歴史教育がなされていないのは、「反日教育一色」の某国であることを勉強すべきです 「民主党にしても、自民党にしても、日本の政治家への歴史に関する教育が足りなかった。日中戦争のころの歴史に関して、多くの政治家は自習という形をとっていた。そして日本という国を滅ぼした」と、後世の日本人から非難されないように……。 しかし、この蓮舫氏の問題発言を報道したのは中国のチャイナネット(中国網通)一社のみ。日本のマスコミは一体全体、何をしているのでしょうか? (文責・矢内筆勝) 後手にまわる円高対策 2011.08.23 急激に進む円高に対して、日本政府の対応が後手後手にまわっています。 21日にようやく緊急経済対策において、2011年度予算の予備費を使用して輸出企業への資金支援をする方向で調整に入ったところです。 一方、日本銀行(以下日銀と明記)も22日以降、円高が進行した場合は追加金融緩和を政府に平行して行うことを明言しています。 政府が動いたことに対しては一定の評価はできますが、問題は、対応の遅さです。 円高基調は、3月11日以降から続いており、震災から5ヶ月が経過しても史上最高値を記録しています。トレンドとしては円高であることは明確なのですが、政府の「予想」に反して円は強くなっています。 日本政府は、「なぜ円高が進行しているのか」という根本原因を理解できていません。現在、円高が進んでいるのは、日本が他国と比較して通貨供給量を絞っているからです。 もちろん、欧米経済の不調により、資金の行き場がないためい、「少しはマシ」だという理由で円が買われている側面はありますが、国際金融市場の気まぐれさを考慮すれば、円高の根本原因ではありません。 根本原因が通貨供給量の不足にあるならば、通貨供給量を増やすことです。伝統的な金融緩和として、買いオペ(日銀が民間の債券などを購入すること)があります。ゼロ金利となっている今、日銀が出来ることといえば、買いオペか量的緩和です。その中には、国債の日銀直接引受もあります。 要するに、今政府がやるべきは財政金融政策です。予算の組み換えや小手先だけの市場介入では不十分です。 特に、円高と震災復興を克服しようとすれば、幸福実現党が「日本再建宣言」で主張している日銀直接引受です。 政府は、現時点では財源を小出しにして第三次補正予算まで見据えているようですが、早急に財源を確保したければ東日本復興債を発行し、日銀に買わせれば済むのです。規模としてはデフレギャップの20兆円分程度は必要ですが、この範囲ならインフレは心配不要です。 加えて、財政法5条の但書きにも明記されている以上、法律的根拠もあります。日銀が拒否をしていますが、震災のような「特別の事由」にあたる事象がある以上、彼らの反論は説得力を欠いたものと言わざるを得ません。 確保できた財源は、早急に東北の被災地復興のために投入するべきでしょう。 間違っても、デフレと不況が深刻化している今、復興財源を増税で行えばさらにデフレ基調となり、円高は止まりませんし、結果として不況が深刻化して復興が遅れる可能性が高くなります。 民主党の次期代表選が近づいていますが、円高対策や復興対策をきちんと対応できる方がならないと困ります。小手先だけの円高対策ではしのげないということを認識し、円高と震災復興の両方が可能となる、国債の日銀直接引受まで見据えた対応をするべきでしょう。 (文責:中野雄太) 前原氏、代表選出馬へ=きょう正式表明 2011.08.23 民主党の前原誠司前外相は民主代表選出馬を本日23日に正式表明する予定で、前原氏が出馬に踏み切れば最有力候補となる見込みです。 実質的に次期首相を選ぶことなる民主党代表選では、増税の可否を大きな争点とすべきです。 次期首相の有力候補と見られている前原前外相、野田財務相の増税に対するスタンスはどうでしょうか。 前原氏は、10年代なかばまでに消費税を10%に引き上げるとした「税と社会保障の一体改革」は堅持しつつ、震災復興増税については、来年度からの実施にこだわらず慎重に対応することを主張するものと見られます。 実際、前原氏はテレビ番組で「復興と言いながら増税するのは日本の景気のみならず、世界の潮流から反するのではないか。1、2年は極めて慎重であるべきだ」と指摘しています。 これに対して、増税路線を掲げる野田氏はテレビ番組で「足りない部分は税で対応するしかない」と語っています。 しかし、「足りない部分は税で対応するしかない」という発想は、財務省の発想、昔で言えば独裁的暴君の発想であって、断じて政治家の発想ではありません。 国民の付託を受けた政治家の発想としては、(増税によって)国民に負担をかけずに、景気回復や経済成長による国民所得や消費の増大による税収増(自然増収)を図る志を持つべきです。 菅政権によって遅れに遅れた東日本大震災の被災地域の復興をできるだけスピーディーに進め、「日本再建」に全力を尽くすことこそ、次期首相の条件です。 円高についても、その大きな原因は日本経済がデフレに陥っていることにあり、今、必要なことは「増税」ではなく、大胆な金融緩和などの「デフレ対策」であることは明確です。 その意味で、増税にこだわり、デフレと円高を放置して来た野田財務相は言われているような“経済通”ではなく、“経済痛”、若しくは“経済オンチ”だと言えます。 万が一、野田氏が次期首相になれば、菅首相時代に輪をかけて日本経済を悪化させる危険性が極めて強くなると言えます。 (文責・黒川白雲) 復興増税反対 議員連盟発足へ 2011.08.22 国会議員有志が、震災復興の財源確保に向けた臨時増税反対の立場から、超党派の議員連盟を発足させることになりました。 同議員連盟では、政府が大規模な臨時増税を検討していることや、自民党執行部が所得税や法人税引き上げを検討していることについて、安易な対応で認められず、反対するとしています。 700名以上いる国会議員の中で、ようやく復興増税に反対する議員連盟が発足されることになりました。 まずは有志の10名から始まるということですが、問題はどれだけの議員が賛成して実行力を持たせるかにあります。 既に「ポスト菅」の第一人者と呼ばれる野田佳彦財務相や自民党の谷垣禎一総裁を筆頭に、国会には増税論者が多いのも周知の事実です。 さらには、復興税とは別に、消費税の目的税化を主張する論調もありますので、油断はできません。 例えば、復興増税は反対しても、消費税の社会福祉目的税化には賛成するとなれば、まったく意味がないからです。 増税論者が多い中で、議員連盟が果たす役割は極めて重要となりますので、党の利害を超えて多数結集してほしいものです。 加えて、デフレ脱却や急激な円高の解消、経済成長による税収の自然増がセット議論されていくことでマクロ経済政策としての議論の厚みがでます。 やはり、経済成長まで見据えるならば、国債の日銀直接引受まで含める必要があるでしょう。 さすれば、全国知事会からの提出された政策提言とも合致します。あとは、議員連盟の実効性を知的にサポートするブレインを注意深く選択すべきです。 いずれにしても、議員連盟の今後の動向には注目したいと思います。 (文責:中野雄太) すべてを表示する « Previous 1 2