Home/ 中野 雄太 中野 雄太 執筆者:中野 雄太 幸福実現党 静岡県本部幹事長 貿易赤字に一喜一憂する愚かさ 2012.02.29 貿易赤字が48年ぶりに赤字を記録 2月8日、財務省は平成23年度の国際収支統計を発表しました。 経常収支(貿易収支+所得収支+経常移転収支の合計)は9兆6289億円の黒字を計上していますが、黒字は対前年度比43%減、経常収支の中で最も有名な貿易収支を見ると、1兆6089億円の赤字となり、48年ぶりの貿易赤字への転落です。 信州大学の真壁昭夫教授の分析によれば、今回の貿易赤字転落の原因は二点に集約されます。⇒http://bit.ly/xxEAg8 第一は、昨年の東日本大震災によって主に東北地方の生産拠点とサプライチェーンが破壊された影響で、輸出は対前年度比で1.9%の62兆円余りに減少したことです。 さらに、原発停止などにより、液化天然ガス(LNG)などの輸入が増加し、対前年度比15%プラスの約64兆円強となり、輸入総額を押し上げました。 第二は、主力輸出品の国際競争力の低下です。しかしながら、真壁教授は、国際競争力の定義を明記していません。国際競争力を企業に適用される場合は、製品の品質や世界的なシェア、製品コストが安いことなどが挙げられます。 実際、製品コストとシェアが中国などに奪われたと考えれば説明はつきますが、国際競争力には、製品のイノベーションや商標、特許などの知的財産権まで含めて議論するものです。 よって、一概に日本企業の国際競争力の低下が貿易赤字の原因だとは言えません。 経常収支黒字をもたらす所得収支黒字 日本の経常収支黒字は、所得収支が大幅な黒字(14兆円)でもたらされています。所得収支とは、海外からの利子や配当の受け取りから、日本企業が海外への利子や配当を支払った差額です。 黒字ということは受け取りの方が大きいことを意味していますが、近年の円高で海外でのM&Aや現地生産、直接投資や証券投資を通じて、「日本企業が海外で稼いでいる」ことが主な原因です。 よって、経常収支は、貿易赤字となっても巨額の所得収支黒字があるため、当面は赤字に転落することはありません。 ただし、今後は経常収支が赤字となる可能性は高いでしょう。なぜなら、経常収支は、国内貯蓄と投資の差で決まるからです。 少子高齢化に直面する日本では、高齢者による貯蓄の取り崩しが始まり、次第に経常収支黒字幅を縮小させます。 国内での貯蓄が吸収できなくなれば、当然海外からの資金でファイナンスする必要があります(専門的には、経常収支の赤字化=資本収支の黒字化と呼ぶ)。 経常収支赤字化は問題なのか ところが、経常収支が赤字化することで国内外の投資家が日本国債を売却=金利が上がると煽る記事が一定数あるのも事実です。 金利が上昇すると、国債の利払い費が増えるために財政が破綻する。そのために、消費税増税が必要であると。関連記事⇒http://bit.ly/xr9YSN しかしながら、データを見る限り、たとえ日本が経常収支赤字に陥ったとしても、必ずしも国家の衰退や財政破綻を意味しません。 なぜなら、アメリカ、イギリス、カナダは経常収支赤字国です。特にカナダは、100年間、ほとんどが経常収支赤字でも十分発展しています。 嘉悦大学の高橋洋一教授によれば、赤字国であっても高金利と低成長とはなっていない事実を指摘しています。 つまり、政府によるマクロ経済運営が安定していれば、経常収支が赤字でも問題は小さいというのが結論です。詳細はこちら⇒http://bit.ly/xwdpte 財団法人国際貿易投資研究所の研究によれば、日本の所得収支額は世界五位です。 対外資産負債残高だけ見れば、日本は世界第一の債権国ですが、対直接投資に占める投資収益率をみると米英の約半分の4.6%にしか過ぎません。 経常収支が黒字を計上している間に、対外資産を効率的な直接投資に振り向けることができれば、所得収支をさらに大きくできます。 貿易赤字で一喜一憂するのは愚か 要するに、問題の本質は経常収支(より正確には、資本収支を加えた国際収支)全体で考えるべきであり、貿易赤字で一喜一憂するのは愚かです。ましてや、将来の経常収支赤字を盾に取った増税論議など論外です。 むしろ、今必要なのは「投資大国・日本」を目指して、国民の富を大きくすることです。(文責・中野雄太) アメリカのTPP参加は中国封じ込めが目的 2012.02.22 今回は外交と知的財産権からみたTPP(環太平洋経済連携協定)の効用について論じます。 知的財産権とは、著作権や特許、商標などを指します。主には、音楽CD、映画やDVDなどが主な対象です。背景としては、違法コピーなどの、いわゆる「海賊版」が世界市場で出回っていることが問題視されているためです。 まずは外交面から見たTPPの効用です。特にアメリカは、アジア太平洋地域での貿易自由化を推進しており、2006年の段階では、APEC(アジア太平洋経済協力)の拡大版であるFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の創設を訴えていることから見ても、関心の高さが伺えます。 しかしながら、アメリカはアジアの成長を取り込むことだけをもってTPPに参加するわけではありません。アジアでは、マレーシアやインドネシアなど10カ国で構成されるASEAN(東南アジア諸国連合)があります。 ここに日本、中国、韓国を加えたASEANプラス3、さらにインド、オーストラリア、ニュージーランドを加えたASEANプラス6という連合が形成されています。 つまり、アメリカは、自分たち抜きの経済圏創設に対する不満と警戒を持っているわけです。さらに、近年アジアを中心にアフリカやオーストラリアにまで食指を伸ばしている中国がASEANを取り仕切ることに対する懸念を強めています。 すなわち、外交的側面から見た場合、アメリカのTPP参加は、中国へのけん制だと言えるのです。 近年は米中関係が親密ですが、中国は人権意識が低くて民主主義国ではなく、コンプライアンスを軽視するため、信頼するパートナー(credible partner)ではありません。 ビジネスパーソンから政府関係者までが口をそろえているのが、「中国は信用できない」ということです。なぜなら、契約を平気で破り、外国企業の資産などの没収が頻発しているからです。 その意味で、中国は、依然として世界の「問題児」であり、真の資本主義国になり得ていません。 次に知的財産権に関しての側面です。現在、知的財産権を最も強力に推進しているのはアメリカです。アメリカが知的財産権強化に動くには明確な理由があります。 『TPP知財戦争のはじまり』(草思社)の著書である渡辺惣樹氏の分析によれば、アメリカは貿易赤字国ですが、サービス貿易は黒字を記録しており、オバマ大統領の輸出倍増宣言は、当分野にあると明言しています。 金融サービスや知的財産権だけを見れば、輸入が32兆円であるのに対し、輸出は43兆円で、12兆円の黒字を記録しています。特に、知財部門だけでは、特許使用料で7兆円、金融サービスは18兆円も輸出しているのです。 製造部門は赤字で農業分野がなんとか黒字とは言え、2兆円程度です。そうなると、輸出倍増の焦点はサービス分野であることは一目瞭然です。 アジアには、中国、ブルネイ、ベトナムが知財権侵害大国として君臨していることも見逃せません。 ブルネイとベトナムはTPP参加国ですので、まずは小国である両国の知的財産権を守るように仕向け、最終的には「世界最大の知財権侵害大国」中国を包囲することにあります(前述の渡辺氏は、アメリカが中国で失った知財権侵害は4兆円程度だとしている)。 こうした知財権保護強化は、日本にもメリットがあります。財務省が公表している国際収支統計におけるサービス収支は、2011年(速報値)では1.6兆円の赤字ですが、2003年から特許使用料は黒字化しており、2011年の速報値では7878億円となり、黒字を計上してから最大となっています(対前年度13.4%増)。 世界には、日本発の特許や商標などがブランドとなっているものが少なくなく、知財権保護と知財戦略が必要である何よりの証拠です。 アメリカは、自国の法律や制度を押しつける悪しき面もありますが、TPPを通じて海賊版の取り締まりや特許・著作権侵害を強化することは、日本企業を守ることにもなります。 その意味で、日米同盟の強化によって安全保障を担保し、同時に知財部門でも日米での対話と研究を深めることが大事になるでしょう。 日本でも知的財産権に関する法案や専門機関は存在しますが、「中国などの違法を繰り返す国からいかに日本企業を守るか」という視点が弱いと言わざるを得ません。 TPPは、知財戦争の始まりです。日本は、TPP参加を表明した以上は、アメリカ任せではなく、知財部門の一層の強化と人材育成を進めるべきであり、日本が当分野で積極的なリーダーシップを発揮する立場にあるということを自覚するべきでしょう。 (文責:中野雄太) 日銀のデフレ脱却政策は本物か 2012.02.15 日本銀行こと、日銀が14日の金融政策決定会合で追加金融政策を発表しました。実質上のインフレ目標1%と資産買い入れなどの基金を10兆円積み増しました。 具体的な骨子として、当面は消費者物価指数の上昇率1%を目指すこと。1年ごとに物価が安定しているかどうかを点検すること。ゼロ金利を当面維持し、デフレ脱却に向けて政府、民間企業、民間金融機関が協力していく旨が述べられています(日本銀行「金融緩和について」)。 デフレ脱却と追加金融緩和という姿勢を強く打ち出したことは、これまでの消極的な日銀からすれば大いなる進歩と言えるでしょう。 また、インフレ目標の導入をかたくなに拒否していた白川方明日銀総裁の「豹変」も大いに注目されることです。 この裏では、先月インフレ目標を決定した米連邦準備理事会(FRB)の動向があるのは間違いありません。同時に、10月から12月のGDPが2期ぶりのマイナス成長となったことへの緩和措置もあります。 もう一点、特筆するべき点があります。1月末に発売となった『日銀総裁とのスピリチュアル対話』の発刊、幸福実現党の党員や学生によるビラまきが徹底して行われていた事実を無視することはできません。 もちろん、かねてから日銀の金融政策を批判してきた嘉悦大学の高橋洋一教授や学習院大学の岩田規久男教授のような学者の存在、デフレ脱却を政府に進めてきた評論家の活動もあります。 こうした地道な活動が日銀を動かしてきたことは事実であり、ある意味一定の成果につながっているのは間違いないのです。 日銀の政策が発表されたことで外国為替市場も反応しています。14日午後の円相場は円売りドル買いが進み、一時は1ドル78円を超えました。それまでは、77円付近だった水準から円安が進んだことになります。 東京市場で78円を記録したのは昨年末の12月27日以来です。加えて、海外の外国為替市場でも1ドル78円台を記録、ユーロに対しても103円台まで円安が進んでいます。 今後、日銀が徹底した金融政策を断行するならば、さらに為替相場に影響を与え、次は株式市場へも影響を及ぼすと考えられます。 ただし、今回の日銀の金融政策を手放しで喜ぶことは慎むべきです。まず、デフレ基調は1998年から始まっており、まだ改善されていません。さらに、昨年は東日本大震災や原発事故、円高の高進、失業率の上昇などが明確になっています。 雇用が24万人創造され、失業率が下がったアメリカ経済でも、まだまだ回復の途次にあります。欧州は、ギリシャ債務危機によって揺れており、内外の経済情勢が厳しさをます昨今、今回の日銀の決定は遅すぎたと言っても過言ではありません。 もう一点、資産の買い取り基金として10兆円を積み増したわけですが、これでは物足りないということです。現在、デフレギャップは20兆円以上あるとの試算があるわけですから、日本経済を震災復興から回復させるためには、10兆円では少なすぎます。 また、実際に10年物などの長期国債を購入するかどうかも甚だ疑問です。これまでの日銀の行動を見る限り、基金は積み上げたが実際に購入するかどうかは極めて未知数なのです(同様の内容をクレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストも指摘している)。 さらに、FRBのようにいつまで金融緩和を続けるのかという時期が設定されていないこと。そして、政策としての拘束力がないことを指摘することができます。日銀には、イングランド銀行のように、目標を達成できなかった場合の責任問題がありません。 これは、1998年に日銀法が改正されて、日銀が政治圧力から独立しているとう法律の問題とも関連があります。 本格的に日銀のデフレ脱却を推し進めるならば、日銀法の改正を見据えた目標設定権限を強化するべきでしょう。⇒白川総裁のデフレ独裁――政府は日銀法を改正し、金融政策の目標設定権限を確保すべき とまれ、腰の重い日銀が動き出したことはよいことです。課題は政策のタイミングが遅いこと、資金提供の規模が小さいこと、政策の拘束がないために責任問題が曖昧なことです。 要するに、「日銀がデフレ脱却に本気かどうか」を判断するのは時期尚早だということです。 引き続き、日銀をウォッチしていく必要があるのは言うまでもありません。(文責・中野雄太) 日本政府よ ギリシャのデフォルト危機を救出せよ 2012.02.08 再びギリシャのデフォルト(債務不履行)が取りざたされています。 理由としては、ギリシャ政府の財政赤字削減計画が予想以上に遅れていることと、3月20日には144億ユーロ(約1兆4100億円)にのぼる国債償還日が近づいていることが主な原因です。 ギリシャは、「トロイカ」と呼ばれる欧州委員会、欧州中央銀行、国際通貨基金との債務削減交渉が合意に達しないと融資が受けられず、国債の返済もできなくなる恐れがあるのです。いわゆるデフォルトが現実感を増しているわけです。 昨年9月に実施する予定だった融資は三カ月後に先送りされました。こうした影響で、昨年末に予定されていた50億ユーロ(4900億円)の融資は再度3月に延期され、3月に予定されていた100億ユーロ(約9800億円)の融資も6月にずれ込むことが発表されています。 加えて、難航している交渉状況を鑑みると、上記の融資が実行されるかも依然不透明です。 欧州でギリシャ支援を積極的にリードするフランスのサルコジ大統領とドイツのメルケル首相は、ギリシャのユーロ存続を望みながらも、ギリシャ政府が債務削減交渉に合意する件に関しては、「もはや猶予はない」という発言をしており、いら立ちを示し始めています。 ただし、ギリシャ政府にとっても交渉をすんなり受け入れられない事情があります。労働者の最低賃金20%カット、年金削減、公的部門の整理による1万5千人のリストラ策に対して、労働組合が激しく反発。7日には、首都アテネでは労働組合による1万3000人が集まり、緊縮財政への抗議集会とストライキを敢行しています。 ギリシャ議会は、民衆の激しい抗議や経済状況もあり、債務削減に関する会合を結局延期しました。その結果、ユーロ圏の首脳たちを不安に陥らせています。 ギリシャは、融資を受ける代わりに厳しい財政削減を義務付けられていますが、これで問題が本当に解決できるのかは極めて疑問です。 ギリシャのシンクタンクIOBEのヤニス・ストウナラス氏によれば、ギリシャ経済は対前年度比でGDPは6%以上低下することが必至だと分析しています。 確かに、失業率も2011年の段階で19%と高く、このまま債務削減が継続されれば、一層高くなるでしょう。 ギリシャ経済が低調であれば、税収も減ります。同時に、支援しなければいけない国は、イタリアやポルトガルスペインと多数にのぼっており、ユーロ圏の経済に足枷をかけています。全体的にもユーロ圏経済が一層冷え込めば、ギリシャ支援どころの話ではなくなります。 「トロイカ」が求める財政赤字削減案は厳し過ぎるとの意見もあり、欧州から世界不況を起こす懸念があることを指摘する投資家もいます。実際、その可能性は否定できません。 さらに、経済学者の中には、ユーロの構造的欠陥を指摘しているハーバード大学のJ・フランケル教授がいますが、同教授は、ユーロ離脱ということも十分考えられるべきだと述べています。詳細はこちら→ 「EU離脱なし」のギリシャ救済は本当に可能か 日本政府は、国内の消費税増税法案に熱心ですが、欧州発の世界不況を回避するためにも、ギリシャ政府に対して直接融資をすることも検討するべきでしょう。 国際通貨基金(IMF)を通すことなく、直接融資することが大事です。金額は、「トロイカ」との交渉によって決めていく柔軟な外交を展開することも考えるべきでしょう。 少し論点はそれますが、昨日、財務省は覆面介入として1兆円強の為替介入をしたことが記事になりました。「為替介入をどう見るか」でも紹介した通り、円高是正のための為替介入自体を否定しませんが、金融緩和を同時に発動していなければ効果は限定的です。 また、わざわざ「覆面介入」という姑息な手段に対して資金を使う余裕があるのなら、同額程度をギリシャ政府に融資しても問題ないわけです。 さらに言えば、昨年から始まった日欧EPA(経済連携協定)を円滑に進めるためにも、今は欧州に恩を売っておくことも大事です。 また、中国が執拗に欧州に対して金融支援を行う意思表示をしている以上、外交・安全保障の観点からも欧州を味方につけることは極めて大事になるでしょう。 日本政府は、内政ばかりに目を向けず、上記のような国際的視点からの政策も視野に入れて行動するべきです。相応の努力を怠ると、最悪の場合は日本が孤立することになります。 日本は欧州の危機を救う力を持っているのですから、日本政府は、堂々とギリシャ支援を実施するべきです。(文責・中野雄太) 財政赤字削減にみる日米の認識格差 2012.02.01 野田首相は財政赤字削減と社会保障関係費の財源確保の躍起になっていますが、海の向こうのアメリカでも財政赤字問題が大統領選を左右する経済問題となっています。 日本語のサイトでもいくつか取り上げられていますが、より詳細な論点をみるために、Wall Street JournalのDamian Paletta記者のDeficit is again set to Top 1 $Trillion という記事をベースにして日米両国にみる財政赤字削減の議論をレビューします。 4年連続1兆ドルの財政赤字を記録 アメリカ議会予算局(以後CBOと明記)は31日、2012年会計年度(2011年10月から2012年9月)の財政赤字が1兆0790億ドルとなり、4年連続で1兆ドル(約80兆円。日本の約2倍強)を超える見通しを発表しています。 昨年の9月では9730億ドルという見通しから大幅に引き上げられた形となりました。加えて、議会が給与税減税延長を要求した場合は、本年末までに追加1000億ドルも赤字額が上昇します。 なお、CBOは給与減税が2012年末まで延期された場合の経済成長率は2.3%としていますが、2013年には形式上ブッシュ減税などの失効と昨年合意に達した歳出削減計画が2013年1月に実施される関係もあり、来年は1.1%へ減速することも明記されています。 さらに、今後の議会での審議で減税や歳出削減計画が合意に達しない場合には、失業率が2012年には8.9%に、2013年には9.2%へと跳ね上がると発表しています。 言い換えれば、財政赤字削減も大事ですが、政策次第によって経済成長率低下と失業率の上昇というコストがかかると言っているわけです。 白熱する議会の攻防 共和党は、CBOの予想を受けて、オバマ大統領の経済政策を 「歳出削減ができず、経済を拡大できなかった証」 として厳しく追及する姿勢を示しています。 ティーパーティを含めた共和党保守派は大胆な歳出削減を求めると同時に、経済成長を低下させないために「ブッシュ減税」維持を主張。 一方、民主党は短期的な財政支出は経済を押し上げること。その代り、富裕層への増税によって税収を増やすことを主張しており、激しい論戦が行われています。 しかしながら、大統領選再選を目指すオバマ大統領は、明確で具体的な歳出削減や増税を簡単に口にすることができず、あいまいで抽象的な発言に終始している感があります。 依然として共和党と民主党による激しい議論が続いていますが、共通認識としてあるのは、2013年1月に発動される増税と歳出削減計画が経済を減速させるというもの。 つまり、アメリカの共和党と民主党は、どちらも経済成長をおろそかにはできないことでは意見が一致しているのです。 日本の民主党と自公両党の野党では、増税で意見が一致しているところをみると、財政再建に対する日米間の認識格差は大きいと言わざるを得ません。 財政赤字削減とは別に、景気悪化を懸念するFRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長は、インフレ目標2%をはじめとした金融緩和政策の見通しを発表しました。 緊縮財政を急激に推し進めることで、更なる景気悪化となるリスクを緩和するには、通常金融緩和を使います。FRBは雇用にも責任を持っていることを考慮すれば、増税や緊縮財政が敢行された場合のショックを和らげるために金融緩和第三弾QE3は避けられないと言えます。 アメリカでも苦悩する社会保障費 増税と歳出削減は、どこの国でも政治的困難が伴います。また、高齢化社会対策として社会保障関係費が上昇するのはアメリカでも同じです。 CBOのエルメンドルフ局長は、今後10年の主要な費用項目はアメリカの高齢化であるとし、2012年の連邦赤字44%を占める社会保障費は、2022年には54%に跳ね上がると推計しています。毎年1兆円規模で膨らむ日本と同じ構造が進行しているわけです。 しかしながら、上記で見た通り、必ずしも増税で財源を確保しようとしているわけではありません。アメリカでは、経済成長や雇用に十分に配慮していることが見て取れます。 一方、民主党政権は税と社会保障の一体改革を推し進めていますが、対立する野党の自民党・公明党も増税を主張しています。 ましてや、日銀はインフレ目標や国債の直接引受も拒否。増税と歳出削減、消極的な金融政策では、経済成長は期待することはできません。 このままでは、日本経済は景気循環とは異なる人為的な「政策不況」が深刻化するリスクが高くなります。 経済成長を積極的に肯定せよ 日本語のサイトでは、アメリカの財政赤字削減だけに焦点を当てた不完全な記事が多く見られました。仮に、日本が増税や歳出削減だけをまねるのは危険すぎるし、絶対にやってはいけない政策です。 前回、「増税しか議論できない政府・マスコミは税金泥棒」で紹介したハーバード大学のアレシナ教授の研究通り、増税に先行した日本の財政再建は失敗パターンにはまりこんでいるからです。 財源確保に躍起になるのは理解できるにしても、日本経済の更なる不況を招くことに対する配慮がないのは片手落ちです。もちろん、アメリカ議会やFRBのやっていることが万能の策だとは言いません。ただ、不況や財政再建をする上で経済成長を考慮していることは確かなのです。 結論は明らかです。日本はアメリカ議会やFRBが取り組んでいるように、財政再建のために積極的に経済成長を肯定するべきです。(文責・中野雄太) アメリカがインフレ目標を導入か 2012.01.25 不況に苦しむアメリカが、打開策としてインフレ目標の導入に踏み切ることを検討しています。「インフレ目標」政策とは、中央銀行が物価上昇率に一定の目標を定めることを指します。 様々な金融政策を通じて市場への通貨量を増加させて、マイルドなインフレを起こす政策ですが、現在では1990年にニュージーランドで導入されて以来、イギリス、カナダ、オーストラリアなどの主要国を含め20ヶ国以上で実施されています。ただし、ドルや円、ユーロなどの主要通貨を持つアメリカ、日本、ユーロ圏では導入されていません。 現在、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)には、インフレ目標推進派のB・バーナンキ議長がいます。学者時代から大不況を克服する重要政策は金融緩和にあることを主張しており、日本のバブル崩壊後の金融政策に関しても批判を展開している方です。 バーナンキ議長は、24日から25日にかけて実施される連邦公開市場委員会(FOMC)において、前月に協議した「金融政策の長期目標と政策戦略に関する声明」に関する草案をさらに踏み込むことが予想されています。 そのため、アメリカの主要メディアでも日増しに注目が高まっています。ただし、共和党の保守派勢力からは、バーナンキ議長の「過剰な」金融政策がインフレを引き起こす懸念があることを批判され、金融緩和第三弾(QE3)を実施する時期が未定でした。 こうした批判に対して、具体的なインフレ目標値を導入することによってインフレ懸念を抑え込み、QE3実施に道筋をつける目論見があるとも考えらます。 現時点(日本時間1月25日18時時点)では、詳細は出ていませんが、もしアメリカがインフレ目標値を導入したらどうなるかを考えてみたいと思います。 結論は簡単です。FRBがインフレ目標値導入と金融緩和に踏み切ると予想したならば、ドルの供給量が増えるわけですから、物価水準が上昇=インフレ傾向となり、同時にドルの相対的な価値が他の通貨に対して下がります。 言い換えれば、「円高ドル安」になるということです。加えて、日本政府は増税路線を鮮明にしていますし、日銀はインフレ目標や国債の日銀直接引受などの大胆な金融緩和を否定しているので、日本経済はデフレが定着すると予想ができます。 その結果、円の価値が高止まりする可能性が出てくるのです(インフレ目標値の是非や上記のメカニズムをもっと知りたい方は、『日本経済再建宣言』のついき党首が担当した第二章を参照のこと。また、より詳しく知りたい方で入門的な解説書は、岩田規久男著『デフレと超円高』講談社現代新書や『ユーロ危機と超円高恐慌』日経プレミアシリーズを参照)。 日本経済はデフレと円高問題に苦しんでいるのなら、政策としては「金融政策」を割り当てるのが筋です。特に、アメリカでは不況打開策として金融緩和をしてドル安へと誘導するわけですから、輸出企業を数多く抱える日本にとってはなおさら対策が必要とされます。 よって、政府は日銀の白川総裁に一層の「金融緩和」を迫るべきです。幸福実現党としては、長期国債の買い切りオペや日銀の国債直接引き受け、量的緩和の拡大などを行い、過度なインフレにならないようにインフレ目標の導入も併せて提言しています。 アメリカがやるから日本もやるといった単純な議論ではなく、既に昨年から「日本再建宣言」の一環として、デフレ脱却と震災復興の打開策として打ち出しているものです。 現状を見ると、本来ならばアメリカではなく日本においてインフレ目標を含めた金融緩和策が議論されなければいけません。日銀の白川総裁は、いったい何をしているのでしょうか。 幸福実現党としても、現在の日銀の金融政策に断固軌道修正を求めていきます。(文責・中野雄太) 増税しか議論できない政府・マスコミは税金泥棒 2012.01.18 今年に入り、「税と社会保障の一体改革」の素案が提出されたことを受け、消費税増税論議が加速しています。 その中で、有力な経済誌の一つであるダイヤモンド誌のオンライン版で目を疑うような記事が掲載されました。 同誌編集部の片田江康男氏による「2012年の論点を読む」では「日本国債の暴落は起こるか?2012年は財政健全化の道筋を国内外に示す年」という論考が掲載されています(1月4日配信記事)。 内容をかいつまんで言えば、日本は財政健全化の道筋を示さないと国債の暴落が起きて、「ギリシャの二の舞」となるということです。 既に「日本のギリシャ化」論は、菅前首相の際に論破されている論点ですが、EUの債務危機が鮮明化してきたことで再燃したと思われます。 実際、安住財務相は「明日はわが身」と言及していますし、野田首相は「消費税増税なくして日本の将来はない」という趣旨の発言をしています。 さて、当記事の問題点は日本財政の債務だけに目を向けている点にあります。バランスシートの原則を知っている方なら、当然資産にも目を向けるはずですが、見事に無視しています。 それだけではなく、世界最悪の債務水準であるにも関わらず、国債暴落が起きない原因は、国債の90%以上が国内で消化されている点と消費税の低さに求めています。 国債保有率は正しいとしても、なぜ消費税の低さが原因となるのでしょうか。 同記事では、中央大学の富田俊基教授の説を引用して、次のように説明されています。 「国内外の投資家は、日本は消費税を上げる余地がまだあると見ている。だから、財政健全化に向けて消費税を上げて税収を伸ばし、国債償還に問題は生じないと見ている」 富田教授は、野村総合研究所出身で、国債問題の専門家です。よって、これは典型的な「財政規律」を重視する債券投資家の見方です。 しかしながら、増税の余地があるから国内外の投資家が国債を手放さないというのは、あまりにも短絡過ぎます。 投資家には、株式を専門とする投資家や不動産を専門とする投資家、ヘッジファンドまで幅広くいますが、「日本売り」をしないのは、日本の対外純資産が250兆円を超える債権国であること。国内の金融資産残高も250兆円の黒字を計上していることにあります。 また、政府の借金が1000兆円に上ると言っても、政府資産は約650兆円存在しているため、純債務は350兆円程度だということも加味されましょう(議論の単純化のために概数を使っている)。 日本の債務の大きさは懸念材料であっても、増税が控えているから国債暴落が起きない安心材料となっているわけではありません。適切なマクロ経済政策を行えば、十分に財政を維持することができると判断しているわけです。 ギリシャを比喩に使うのは結構ですが、日本はギリシャと違って自由に金融政策が使えることや、EU特有の財政安定化政策を採用していないことを見ても、ギリシャと比較するのはナンセンスです。 もう一つ、議論が必要な論点があります。増税は、理論的にも消費を冷え込ませますが、片田江氏は、これに対しても前出の富田教授の意見を掲載して否定します。 「消費税増税をしない場合、財政健全化への道筋がつかない。そうすると国民はかえって将来の社会保障に対する不安を持つ。金利が上がることになれば、経済活動も抑制される」 この論点の欠点は次のように反論できます。 「税と社会保障の一体改革」では、消費税増税は「社会保障目的税化」として使用されます。 つまり、徴収した税金はそのまま社会保障に使われるので、右から左に流れるだけで財政再建に貢献しません。そのために、政府は所得税や相続税まで増税しようとしているわけです。よって、消費税増税が財政再建の道筋にはなり得ません。 安住財務相も同様の発言をしていますが、これは増税を正当化する財務省のレトリックに過ぎません。 1997年の消費税引き上げによる景気落ち込みをみれば、とても上記のような結論は出てきません。国民は、将来の増税や保険料負担が高くなるために貯金をしていることや、デフレによって消費をしない点が抜け落ちています。 要するに、消費低迷はデフレ不況であり、日本財政の債務額ではないのです。 片田江氏の記事は、とにかく消費税の増税が先決だと結論づけていますが、ここに一つの学術研究を紹介して反論しましょう。 ハーバード大学のアレシナ教授の研究によれば、1960年から1994年までの期間で、OECD20ヶ国の増税の事例を調査しています。 全部で62の事例をみて、成功例は16、失敗例は46ですが、成功した事例の共通項は最初に歳出削減を行っていること。失敗例の共通項は増税が先行していると明記されています。 その意味で、増税だけが先行する野田政権の財政再建策は失敗の道に入り込んでいると言えます。財政再建は大事なことですが、歳出削減や経済成長による税収増、埋蔵金の活用など、政府がやるべきことはたくさんあるのです。 増税だけしかないならば、政府とマスコミは国民に負担を押し付けるだけの「税金泥棒」に等しいと言えましょう。 そうではなく、国内外に示すべき道筋は「震災から日本再建」であり、日本が世界不況を救うリーダーとなることを宣言することです。 世界の政治指導者が変わる本年、日本が果たす役割は大きいのですから、堂々と経済面で貢献していけばよいのです。(文責・中野雄太) 「税と社会保障の一体改革」の正体 2012.01.11 政府は1月6日に社会保障改革本部(本部長・野田佳彦首相)を開催し、「税と社会保障の一体改革」素案を決定しました。 特徴的に挙げられるのは、消費税増税の具体的な時期が明記されたことです。リーマン・ショックなどの世界的な経済危機が起きない限りは、2014年4月に8%、2015年10月には10%へと引き上げることが素案に明記されています。 自民党と公明党が解散総選挙をちらつかせているので、そう簡単に消費税増税法案が可決する可能性は低いと考えることができますが、大事なのは政局ではなく、中身を吟味することです。 もし、自公両政党が、解散を実施しても、素案自体に賛成であれば法案は可決されることになります。野党にとっては、政権交代をする最大の機会ということもあり、野田首相を揺さぶる機会としているのは明らかです。 元々、2009年の麻生政権時代には、自公政権が消費税増税を主張していることからみて、基本路線は賛成と考えるのが自然です。 さて、特筆するべきは、「税と社会保障の一体改革」の増税案は消費税だけではないということです。 例えば、所得税の最高税率を40%から45%へ引き上げ(課税所得5000万円超に適用)、年少扶養控除廃止、相続税最高税率55%への引き上げ、地球温暖化対策税の創設まで触れられています。 これでは「増税ラッシュ」であり、日本が重税国家への道を歩んでいるのは明らかです。 一方、低所得者への年金加算や医療・介護保険料の軽減、年金受給資格を25年から10年へ短縮など、国民にとっては甘い「アメ」の部分も用意されています。 国民には、「アメ」でひきつけて、実は「ムチ」としての増税を仕掛ける狡猾さを見抜く必要があります。 確かに、国民は政府からお金をもらえれば嬉しいでしょう。「子ども手当」にせよ、公立高校の授業料無償化にせよ、年金・医療・介護にせよ、国民負担が見かけ上減るならば強く反対しません。 福祉には人命を守るマストの役目もあるので、全てが間違っているわけではありません。 ただし、注意しなければ、必要以上に国民の要求がエスカレートする可能性が高いのです。例えば、子ども手当を毎月あたり1万3000円もらえれば、次は1万5000円欲しいのが人情です。 政治家も、甘い約束をすれば票になるので、バラマキ合戦に乗ります。実は、メディアで報道される「毎年1.3兆円ペース増え続ける社会保障関係費」とは、政府の無駄遣いと国民の要求がエスカレートしていることと関連があります。 さらに、特筆するべきは莫大な公費投入です。拙著『日本経済再建宣言』第3章でも触れましたが、医療保険給付費全体の約4割に公費が投入されています。 特に、後期高齢者医療制度や国民健康保険の給付費の半分は税金です。国民年金でも、2004年以降は国庫負担が3分の1から2分の1となっています。 要するに、保険料収入では足りないために、莫大な税金によって補填されているわけです。 さらに、政府は赤字国債を発行して不足財源を確保しているわけですが、さすがにこのまま維持することは困難です。そのため、「選択と集中」と呼ばれる支出の見直しが急務となるわけです。 やはり、社会保障の改革には、幸福実現党が主張する経済成長による税収増もセットで考えるべきです。 また、家族や宗教による福祉分野への貢献、生涯現役構想に基づく定年75歳社会への移行、積立方式による現役世代の負担軽減など考慮するべきでしょう。 さらには、単なる財源論に終始せず、「生涯現役社会」の建設や「ピンピンコロリ」を迎えるよう人生観や死生観などの普及も視野に入れ、あらゆる角度から検討をしていくべきだと考えます。 様々な視点から社会保障改革を論じてきましたが、最後に結論を端的に述べます。 国民のバラマキへの「タカリ」の精神と政府による私有財産の「ボッタクリ」を助長するのが「税と社会保障の一体改革」の正体です。 そこには、何も「未来ビジョン」もなければ、成長に寄与する政策もありません。単なる所得の再分配だけならば財源は無限に増え、日本は「重税国家」「国家社会主義」へと向かうだけです。 だからこそ今、政府による「増税ラッシュ」に反対をしなければいけないのです。(文責・中野雄太) 消費税増税が解散総選挙の引き金となるか? 2012.01.04 野田首相が進める消費税増税は、3月の通常国会に向けて進められています。 与野党の協議を求め、自民党と公明党への協力を求める方針ですが、自民党の谷垣総裁と公明党の山口那津男代表は解散総選挙を前提とした与野党協議を求めており、難航は必至です。 与野党協議が失敗に終わった場合を考えて、民主党の輿石東幹事長は民主党単独で消費税増税法案の提出も辞さない発言が出てきています。 野田首相も消費税増税法案が不成立の場合は衆院解散総選挙で民意を問う考えも出しており、国会はますます混迷を極め、ここにきて首相や野党のリーダーからも解散総選挙の可能性が相次いで出てきています。 昨年11月5日に東京日比谷野外音楽堂で開催された「増税が国を滅ぼす!国民集会」(幸福実現党は協賛団体として参加)では、増税に反対する学者から草の根運動の活動家まで幅広く集まり、増税反対の声をあげました。 実行委員長を務めた日本税制改革協議会(JTR)の内山優会長は「11月5日の国民集会が、確実に永田町にも届き、現在の消費税増税による政局の混迷につながっている。その意味で、大変意義があった」と筆者に語ってくれました。 本来ならば増税路線の谷垣禎一自民党総裁ですら、増税のトーンが弱くなってきており、私たちが求めてきた「増税をするなら解散をして民意を問え」と言っているほどです。 前述の内山会長以外にも、東京茶会や生涯現役構想を掲げる草の根運動を展開している方々も、続々と「増税反対」の狼煙をあげ、全国で活動を活発に展開しております。 永田町や霞が関では、反対の声を上げなければ「承認」とみなす風潮があります。 昨年11月には、団体の垣根を越えて国民集会を開催したことは、財務省をはじめとする霞が関にも影響を及ぼし始めているとみて間違いありません。 さもなければ、12月に野田首相を使ってまで新聞の全面広告を打つといった行動には出ません。 さらに、ジャーナリストの須田慎一郎氏によれば、元経産官僚の古賀茂明をはじめとする増税反対論者のテレビ出演をさせない圧力をかけているとのことです(『SAPIO』2012年1月18号参照)。 要するに、幸福実現党が立党以来主張し続けてきた「消費税反対運動」が、着実に影響力を及ぼし始めてきたということです。財務省主導の政治家とマスコミによる「増税翼賛会」を打ち破るのは、やはり国民の声です。 ただ、一点だけ注意すべき点があります。国民運動として野田政権の早期退陣と次の解散総選挙によって政権交代が実現したとしても、増税派が幅を利かすようでは、財務省の思うつぼです。 消費税増税が解散総選挙の引き金になるのは大いに結構ですが、それだけでは不十分です。やはり、自由貿易と減税、少ない規制を実現できる政党と政治家が誕生しなくてはダメなのです。 幸福実現党は、その責務を果たす役割があると同時に、他党にも眠っている自由主義者を巻き込む使命もあるのです。 そこまでいかなくては、国論としての自由主義対国家社会主義の流れに勝利したとは言えません。その意味で、本年は「自由からの繁栄」によって国家社会主義を打ち破る最大のチャンスです。 どうか、今年も幸福実現党が発信する経済政策や諸提言にご期待頂ければ幸いです。(文責・中野雄太) 自由主義対国家社会主義の戦い 2011.12.28 今回は、本年を通じて議論が百出した増税とTPP問題に触れながら、経済政策に関する本質的な流れを総括します。 野田政権は発足するや否や、東日本大震災の復興財源としての復興増税、「税と社会保障の一体改革」としての消費税増税を明確に打ち出し、着実に政治工程が進んでいます。 政府による増税路線に対し、主要マスコミのほとんどが「増税やむなし」の路線を扇動しており、日本は重税国家への道を確実に歩みつつあります。 増税に反対する声は報道されることなく、まるで「増税翼賛会」が形成されているのではないかと疑ってみたくもなります。 例えば、去る11月5日に東京で開催された「増税が国を滅ぼす!国民集会」(実行委員長:内山優JTR会長、幸福実現党も協賛団体として参加)に関しては、主要マスコミは産経のみの報道しかなく、増税に反対する声が国民には届きにくい現実を露呈しました。 加えて、共通番号制と給付付き税額控除の推進も同時並行と進行しており、わが国は増税という私有財産の収奪と、今後は政府による国民の監視へと入っていくことになります。 さらに言えば、郵政民営化の逆行現象と東京電力の国有化も進められており、いわゆる「大きな政府」へと進んでいることは間違いありません。 換言すれば、国民の自由が縮小し、政府や官僚の権限が拡大していく国家社会主義が到来しようとしているのです。 本来であれば、民主党政権の危険性や国家社会主義を追及する立場にある保守系団体や政治家までもが、増税や既得権益を守る「守旧派」となり、左翼顔負けの論陣を張っています。 その最たる例がTPP(環太平洋経済連携協定)問題でした。野田首相は、11月11日に、APEC(アジア太平洋経済協力)という国際舞台で日本がTPPに参加することを表明しましたが、国内では反対論が加熱しました。 『TPP亡国論』という本が爆発的に売れている現状を見ると、日本国民はまだまだ貿易や投資の効果に関しては否定的な感情が根強いようです。 加えて、保守系のTPP反対論は過激なものが多く、アメリカによる陰謀説や農業や公的医療崩壊説、さらに言えば、日本の伝統や文化までも崩壊させる「亡国装置」などといった、とても論理的ではない言葉で批判を展開しているものもありました。 TPP反対派の本質を一言で言えば「既得権益の保護」です。農業や公的医療が維持できるのは、必要以上に公金=税金が投入されているからです。 世界のどこの国でも、農業は保護産業となる傾向は存在しますが、さすがに米の778%という関税は高すぎます。 公的医療に関しては、社会保険式による収入は3割しかなく、7割は税金の投入によって成り立っています。 いくら安心・安全を提供する社会保障とはいえ、これでは慢性的な財源不足に直面します。 公的医療制度は、TPPによって崩壊するというよりも、むしろ税金の過剰投入によるコスト増によって崩壊する可能性の方が高いのです。 それを回避するための「社会保障の選択と集中」の議論が必要なのですが、増税論だけが進行しているのが現状です。 TPPに関して言えば、日本は対中包囲網を形成するFTAAP(アジア太平洋自由貿易地域)の強化、貿易と投資促進による国内消費者のメリット増大、ISD条項による国内投資家の保護など、メリットはたくさんあるわけです。 また、懸念される交渉は数十年の時間をかけて議論をすることができることや、参加国の同意なしでは何も決められません。そのため、反対派が懸念されるようなアメリカによる独占的な意思決定は不可能なのです。 加えて、参加国には、多くの途上国が含まれている以上、日本は攻めの交渉を通じて貿易と投資の自由化を促進し、成長に貢献することも可能となります。 ベトナムなどの共産主義・社会主義国がある以上はISD条項によって投資家が保護され、共産主義国・社会主義国を自由主義陣営へと変換していく役目も無視することはできません。 総じて言えば、日本の経済政策は外国との競争を嫌い、TPPに反対する様子は「鎖国論」に近く、ヒト・モノ・カネ・情報が国境を超える国際化社会に逆行しています。 自由で、競争力を高めることは、国内の産業を強化するだけではなく、消費者にもメリットをもたらします。 逆に、保護や規制を強めると、国際競争に勝てない産業が温存され、最終的には高価なコストを消費者に払わせることになります。 現在の日本では、TPP参加に代表される自由貿易と保護貿易、郵政や東電にみる民営化と国営化、復興や社会保障財源としての減税と増税いった対立図式ができつつあります。 残念ながら、現政権はほぼ全て後者を選択しており、国家社会主義へと進んでいます。 一方、幸福実現党は前者の立場をとり、「自由の大国」を目指しています。 このように、現在は「自由主義対国家社会主義」の思想戦も同時並行で行われていると考えることもできるのです。 特に、増税とTPP問題を通じて、経済思想の対立図式が明確になったと言えましょう。(文責・中野雄太) すべてを表示する « Previous 1 … 6 7 8 9 10 11 Next »