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製造業こそ国の根幹 「ものづくり大国」日本を取り戻そう【幸福実現党NEW172号解説】

幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子

幸福実現党NEW172号

https://info.hr-party.jp/newspaper/2025/14897/

◆日本のものづくりが衰退している

日本経済に元気がありません。
昨年、日経平均株価が史上最高値を更新したり、昨年度の賃上げ率が33年ぶりの高水準だったりしたことをもって、政府与党は「わが国の経済には着実に明るい兆しが現れている」などと言っています。

しかし、大半の日本人は、経済がよくなっているという実感を持てないでいるのではないでしょうか。賃上げといっても、電気代やモノの値段の値上がりに追いついていません。

何とか生活はできているけれど、負担ばかりが増えているのが実態ではないでしょうか。

実際、日本の経済成長率は横ばいで、経済規模を示すGDP(国内総生産)は他国に比べて増えていません。その結果、日本のGDPはドイツに抜かれ、今年中にはインドにも抜かれ、世界5位に転落する見込みです。

GDPは、日本国内で生み出されたモノやサービスの付加価値の合計です。

単純に言うと、モノを作ったりサービスを提供したりする時にかかった費用よりも、高いお金を払っても欲しいと多くの人が思うような価値の高いモノやサービスを生み出せたら経済は大きくなるわけです。同時に、私たちの収入も増えて豊かになっていくわけです。

その中でも製造業は、付加価値の金額が大きい産業です。
https://www.stat.go.jp/data/kkj/kekka/pdf/2023youyaku2.pdf

かつての日本は、製造業が非常に強く「ものづくり大国」と称されており、「メイド・イン・ジャパン」は高品質の代名詞でした。

しかし現在では、日本の製造業の多くは海外に工場を移し、GDPに占める製造業の割合は減り、今では2割を下回っています。

◆日本の製造業はなぜ衰退したのか

では、なぜ日本の製造業は元気をなくしてしまったのでしょうか。

製造業が海外に生産拠点を移すことは、ある程度は自然なことです。

既存の製品を組み立てるなら、人件費の安い国で作った方が利益は出ますし、為替や関税のことを考えると、例えばアメリカで売る製品はアメリカで作った方が効率はよいからです。

ただ、本当は国内で作りたいのにそれが難しいという事情もあります。

例えば、中国でのものづくりは、重要な技術の漏洩、社員が危険にさらされる、日本に利益を戻せないなどのリスクが顕在化していきました。

そこで、国内に工場を戻そうという動きも出てきたのですが、これにブレーキをかけているのが日本の事情です。

具体的には、高い税金、社会保険料、高い電気代、脱炭素、複雑な規制などです。

まず、企業を苦しめているのは、経営状態が苦しくても払わなければいけない多額の社会保険料です。

昨年10月から、従業員数51人以上の企業で、正社員だけでなく、一定の要件を満たすパートやアルバイトなどの短時間労働者についても社会保険の加入が義務づけられました。

さらに社会保険の加入対象を拡大しようという議論も進んでいます。

この社会保険料は労使折半ですから、従業員だけでなく企業も払わねばなりません。雇用に対する課税のようなもので、人件費を押し上げます。

こうした状況では、中小企業などは新規の雇用を控えるようになり、ものづくりの技術を継承する人材が育たなくなります。

そして特に製造業にとってダメージが大きいのが高い電気代です。

特に鉄鋼業や半導体の製造には大量の電気が必要で、北海道に建てられた半導体製造企業ラピダスの工場で使われる電気は、北海道の電力需要の2割ほどを占めることになると言われています。

電気代が高ければ、ものづくりのコストが押し上げられます。

現在、日本の電気代は世界的なエネルギー価格の高騰と円安のダブルパンチで高くなっており、企業は高い電気代の支払いを余儀なくされています。

原発の再稼働を一日も早く進めていかなくてはいけません。

さらにここに「脱炭素」の取り組みが追い打ちをかけます。大量のエネルギーを使うモノづくりは、結果として大量のCO2を排出します。

そして、来年度から日本では、企業ごとのCO2排出量に「枠」を設け、その排出枠の過不足を企業間で取引する「排出量取引制度」を全国で本格稼働させることになっています。

しかし、前回171号の解説でもお伝えしたように、世界はむしろ、脱炭素の取り組みから離れつつあります。百害あって一利なしの脱炭素政策は、一早く撤回すべきでしょう。

それから、各業界を縛る細かい規制や慣習が山のようにあります。

例えば昨年6月、トヨタ自動車をはじめとする自動車メーカー5社で「型式認証試験の不正があった」と報じられました。

この「型式認証試験」とは、自動車を大量生産する上で必要な、国が定めたルールなのですが、よく調べてみると、国の基準よりも厳しい基準で安全性に関する検査をしていたら「国土交通省の基準にのっとっていないから不正」という指導が入ったということです。

詳細は、「ザ・リバティ」2024年9月号の記事をお読み頂きたいのですが、この件のみならず、複雑なルールを守るために、企業のコストや労力が相当奪われている実態があります。

「ザ・リバティ」2024年9月号
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=3038

◆国内での高付加価値のものづくりはなぜ大切か

企業は、このような二重、三重のハンディを背負いながらものをつくっています。

現在は、IT産業も人気が高いのですが、IT産業を成り立たせるためにはコンピューターやスマートフォンが必要です。

また、今はやりのAI、人工知能の開発においても、高性能のコンピューターが必要です。
ものづくりがなければ、私たちの生活は便利で豊かにはならず、IT産業も成立しないわけですから、製造業は非常に大事な産業です。

そして、ものづくりの技術は日本の平和・安全を守る上でも重要です。宇宙産業や防衛産業における技術力の差は、国防力の差となって現れます。

いくら鍛え抜かれた軍隊を持っていても、相手国が性能の高い戦闘機やミサイルなどの武器を持っていたら、そちらに軍配が上がります。

また、サイバー戦争を制するには、高いサイバー技術や情報収集能力が不可欠ですが、コンピューターの処理能力に差があればそれだけでハンディが生じます。

現在の戦争は、ものづくりの技術差で決まる面も大きいわけです。国内で宇宙産業、防衛産業を育てていくことは、安全保障の面からも必要なのです。

◆「ものづくり大国」を取り戻すために必要なこと

では、日本が再び「ものづくり大国」になるためには何が必要でしょうか。

一言でいえば、世界の人が望むような新しい価値を生み出し続ける土壌づくりです。これが、製造業の国際競争力を保つために必要です。

日本の製造業は、安全で燃費がよいクルマ、ソニーのウォークマンのようなまったく新しい製品などを生みました。

現在、「産業のコメ」と言われ、世界情勢にも影響を及ぼす半導体産業においても、日本は1980年代、世界の半導体市場で50%強のシェアを取っていました。

しかし、その後の日本はなかなか新しいものを産み出せていません。

外交力や国際競争戦略の欠如という要因もあったでしょうが、様々な規制や税金、社会保険料などが企業の足を引っ張った面もあります。

安定した安い電力の供給、法人税の減税などで企業の経済活動のコストを下げ、研究開発に割く余裕を生み出すことが大事です。

また、今なら空飛ぶ車や自動運転車などの規制がものづくりのネックになっています。

たとえば、4月から始まる大阪・関西万博においては、ドローン技術を応用した「空飛ぶクルマ」が、来場者を乗せて飛ぶ日本初の商用運航を目指していました。

しかし、安全性を証明する手続きに時間がかかったため、来場者を乗せることができず、デモ飛行のみを行うことになりました。

そして、働き方改革も、新しいものを生み出す足かせになっています。

長時間働けば業績が上がるわけではありませんが、やはりスキルを身に着け、質の高い仕事をするには、まずはある程度の時間、仕事に打ち込まなくてはなりません。

残業時間を規制され、何時までに帰れとうるさく言われれば、新しいものを生み出す研究開発には没頭できないでしょう。

こちらに、日本の年間労働時間とGDPの関係を示したグラフを掲載しています。

日本の高度成長期は、一人当たりの年間労働時間は、ピーク時で2400時間を超えていました。

しかしこれについて、アメリカが「日本は国民に長時間労働を強いて、対外競争力を高めている」と口を挟み、日本国内でも「日本人は働きすぎだ」という世論が高まりました。

そこで政府は1992年、労働者全体の平均労働時間を年間1800時間までにし、完全週休2日制の導入を目指す「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」を制定しました。

このようにして「長時間働くことをやめよう」というメッセージを発した時と、日本経済が停滞し始めた時期は見事に重なっています。

◆製造業の人材養成を

このように、経済をもう一段発展させるには、日本が大切にしてきた「ものづくりの精神」を育てていくことが必要です。

そのためには、教育においては、前例のないことにチャレンジする精神、コツコツと努力する勤勉の精神、また「多くの人に便利さ、豊かさをもたらしたい」という愛の思いなどを育てていくことが大事になります。

そうした思いをもつことで、宗教的に言えば「インスピレーショナブルな頭脳」をつくることになり、この世になかったアイディアを受け止めることができるようになります。

一方、政府の仕事としては、公平な競争環境を整え、中国などに新しい技術やアイディアを盗まれないよう「スパイ防止法」などを整備することに集中し、減税や規制緩和によって企業の仕事の足かせになっているものを取り除くことが必要です。

大川隆法総裁は、著書『創造する頭脳』のあとがきで次のように述べています。

役人の発想は、基本的に、「なぜ、できないのか」「なぜ、ダメなのか」を中心に回っており、それをいかに整然と説明するかに知力を使っているのである。(中略)これは、勇気・責任感・積極性・行動力を中心に形成される経営者マインドの正反対のものである。

いくら税金を投入しても無駄である。むしろ小さな政府を目指して、倒産の恐怖を自分で背負いながらチャレンジしていく民間に任せるべきだ。「創造する頭脳」は未来を積極的に切り拓こうと決断できる勇気の持ち主にこそ与えられるのだ。
(引用終わり)

政府がお金をバラまいて経済が繁栄することはありません。

幸福実現党が言っている「小さな政府、安い税金」の考え方に基づく自由と自助努力の精神が、日本復活の原動力になっていくのです。

小川 佳世子

執筆者:小川 佳世子

幸福実現党政務調査会長代理

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