世界大戦の新たな火種に。インドvs中国、ミャンマー離島にスパイ基地。【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆存在感を増すインド
ここにきて、インドが存在感を増しています。日本の将来を考えれば、インドとの関係強化は避けられないと思います。
今回は、インドの存在感が高まった背景を見ながら、第三次世界大戦の火種の一つ、中印対立に注目したいと思います。
(1)インドの人口が世界一に
先月、インドの人口は14億2860万人を超え、中国を抜いて世界一になりました。中国は1750年以降、ずっと世界一の人口でしたが、インドに抜かれました。
インドの人口は今後も増え続け、2050年までに16億6800万人に達すると言われています。
ちなみに、中国の人口はすでに縮小段階に入っており、2050年までに約13億1700万人に減る見込みです。
しかも、インドは人口の半分が30歳未満という若い国です。30年前の中国に似ていると思いますが、若い労働力がどんどん供給されるため、経済成長は間違いと思います。
インドのGDPはすでに英国を抜いて世界5位ですが、いずれ上に上がるでしょう。
【参考】2022年GDPランキング上位5カ国
1位(米国)2位(中国)3位(日本)4位(ドイツ)5位(インド)
(2)世界の工場はインドへ
インドにとってさらに追い風であることは、米中対立のもとで企業の「脱中国」が進んでいることです。
アップルはすでに生産拠点をインドにシフトしており、2025年までにiPhone生産の25%をインドで行う予定です。
インドでのiPhoneの販売も増えており、今後、生産拠点だけではなく、市場としての魅力も増していくのではないかと思います。
中国共産党の一党独裁が続く以上、世界の工場が中国からインドにシフトしていく流れは止められないのではないでしょうか。
日本企業の本格的なインド進出が始まることを期待したいと思います。
また、報道によると、インドが輸入する原油に占めるロシア産原油の割合は、2021年には2%だったが、2022年にはほぼ20%に達し、10倍に増えました。
その結果、インドは昨年の会計年度で約50億ドル(約6700億円)を節約することができました。
安いエネルギーを輸入できることは、インドが工業国家へと押し上げることにつながると思います。
(3)ウクライナ戦争のキャスティングボード
経済面だけではなく、外交面でもインドの存在感が増しています。
ウクライナ戦争では米国とロシア、中国の対立が激化するなか、インドは中立の立場を保っています。
このことが、インドの存在感を高めています。インドがどちらの側につくかで世界の方向性が決まるという、キャスティングボードを握っています。
G7広島サミットでは、グローバルサウスの代表国としてインドも招待され、6月にはバイデン大統領がモディ首相を国賓として招待します。
こうした事実がインドの存在感が高まっていることを物語っています。
◆カシミール地方を巡る中印の衝突
しかし、インドにとって悩みの種は、中国の存在です。
最近、インドは中国やパキスタンとの係争地になっているカシミール地方でG20の会合を開催しました。
これに対して、中国はG20の会合をボイコットして反対しました。
カシミール地方を巡っては、中印両軍はこれまでも衝突を繰り返しています。2020年には中印両軍が衝突し、少なくとも24名が死亡しました。
今年3月、インド陸軍のマノジ・パンデ参謀長は、次のように述べています。
「中国政府は年を追うごとにかなりの部隊増強をしており、実効支配線(LAC)沿いで飛行場や兵舎など軍事インフラを整備している。中国という全体主義国家は、多方面からの戦略を用いてアメリカを追い落とし、世界に君臨する超大国になろうとしている。」
インドは北部国境沿いにおいて、軍事インフラの整備も強化し、カシミール地方の東部にあたるラダックに通じるトンネルを建設しています。
この地域はヒマラヤ山脈で、冬場は氷点下40度になるそうです。トンネルの長さは8.8キロで、アジア最大規模と言われています。
現在、トンネルが一部開通し、ラダッカに物資を送れる状況にあり、今後、全面開通すれば、インド軍の兵士を大量に移送できるようになります。
インドはウクライナ戦争を教訓に「戦争が起きれば数年単位の戦争になる」と見て準備を進めています。
(後編につづく)