朝鮮戦争へのカウントダウン。北朝鮮のミサイル連射とバイデン外交の失敗。【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆北朝鮮ミサイル連射
北朝鮮のミサイル発射が止まりません。防衛省の発表では、2022年の一年間でミサイルを73発発射し、過去最多だった2019年の25発を大幅に上回りました。
北朝鮮の金正恩総書記は1月1日、「韓国は明白な敵である」と指摘した上で、2023年の目標として「戦術核を幾何級数的に増やせ」と指示を出しました。
さらに「我々の核兵器の第二の使命は防衛ではなく他のところにある」として先制攻撃も辞さない姿勢を明確にしました。
このように北朝鮮の対決姿勢はどんどん強さを増し、戦略的に取り組んでいたのが、「戦術核」の開発です。
◆戦術核とは何か
「戦術核」とは通常兵器の延長線上で、実際に戦場で使用することを想定した「小型核」のことです。
北朝鮮は韓国の港湾施設、飛行場、司令部施設、アジアの米軍基地など朝鮮半島内外のターゲットを攻撃するために戦術核の開発を急いでいます。
2017年には、水爆の開発や大陸間弾道ミサイルICBMの発射実験を行ってきましたが、昨年9月9日新たな軍事力として、金正恩総書記は最高人民会議で「核兵器政策」に関する法令を発表しました。
特に注目を集めたのは「核兵器の使用条件」です。
それによると、「北朝鮮国家そのもの」「国家指導部と国家核戦力指揮機構」「国家の重要戦略対象」に対して「相手からの攻撃や攻撃が差し迫ったと判断される場合」に核兵器を使用するとしました。
◆核の先制使用
国家指導部への攻撃には金総書記を狙って特殊部隊を投入する斬首作戦が含まれます。いわゆる「核の先制使用ドクトリン」と呼ばれるものです。
ポイントは「攻撃が差し迫ったと判断される場合」も含まれており、敵による攻撃の兆候が確認された場合でも、核兵器を使用するとして核先制攻撃を排除していません。
しかし、北朝鮮はそもそも偵察衛星を一つも持っていないので、危機が迫っていることを正確に感知できません。
したがって、金正恩氏の腹一つで核兵器を使用できる状況にあると思っておいた方がよさそうです。
また、金正恩氏は「非核化に関する協議には二度と応じない」と強調しました。
トランプ大統領の頃には朝鮮半島の非核化に向けて首脳会談が行われ、北朝鮮のミサイルが全く飛ばない時期がありましたが、金正恩氏はバイデン政権と交渉するつもりは全くないということです。
◆緊迫する朝鮮半島
昨年9月25日から10月9日にかけて北朝鮮は合計7回のミサイル発射を行いました。これは戦術核運用の訓練として行われたものです。
9月28日は「韓国の飛行場の無力化」、10月6日と9日は「敵の主要軍事指揮施設と主要港湾攻撃」をそれぞれ想定して訓練を行いました。
12月31日には「超大型放射砲」と呼ばれる新型短距離弾道ミサイル30基を配備し、韓国全土を射程に収めることができます。
これは戦術核搭載可能なミサイルで、2023年1月1日に実際にミサイル発射しました。金正恩氏は「敵に恐怖と衝撃を抱かせる兵器だ」と自画自賛しています。
北朝鮮の挑発に対し、韓国のユン・ソンニョル大統領は「一戦を辞さない構え」で北朝鮮の挑発に対して確実に報復するよう指示を出しています。
このように、朝鮮半島はいつ偶発的な衝突が起き、紛争が拡大してもおかしくない一触即発の状況にあります。
今後の焦点は、7回目の核実験です。その目的として指摘されているのが、核弾頭を小型化・軽量化して戦術核兵器を完成させることです。
日米韓は、北朝鮮が7回目の核実験が行えば、かつてない連携のもとで強力かつ断固とした対応を行うと発表しています。その際に朝鮮半島の緊張度が一気に高まる可能性があります。
(後編につづく)