日本企業で進む「脱中国」3つの理由【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆脱中国の動き
韓国や米国に比べて対中依存度が高い日本ですが、いよいよ日本企業の脱中国の動きが強くなってきました。
自動車メーカーのホンダは、現在、二輪、四輪、エンジン工場などホンダの生産拠点は日本や中国、米国、カナダなど24カ国に及びます。
今後、上海のロックダウンで生産に影響が出たことを受けて、中国からの部品供給を東南アジアやインドなどにシフトできるか検討すると言われています。
また、マツダは上海のロックダウンや半導体不足の影響で、4~6月期の販売台数が前年同期比で34%も減少しました。
今後、国内での部品生産を増やし、日本国内で安定した生産活動を行う予定です。
他にも、資生堂はこの3年間で国内工場を6か所に倍増させました。「SHISEIDO」「エリクシール」といった主力商品は、ほぼ全てが国内生産になると言います。
資生堂は、品質の高さを重要視し、信頼の高い「メイド・イン・ジャパン」を売りにするつもりで、こうした企業が相次いでいます。
◆中国撤退を決めた三つの理由
以前、尖閣諸島を国有化した際に、激しい反日デモや不買運動が起きました。
これを中国特有の「チャイナリスク」と呼びました。しかしここにきて中国の新たなリスクが顕在化しています。
(1)ゼロコロナ政策
一点目は、ゼロコロナ政策です。中国の習近平氏は、「ゼロコロナ政策」を採用し、新型コロナを完全に封じ込めるため、私権を無視し、隔離を強行しました。
中国の上海では3月末から約2ヶ月間、新型コロナ拡大によるロックダウンが行われ、日本企業の生産活動を制約し、大きな損害を与えました。
企業経営に大きな影響を与える政策が、強権のもとでいとも簡単に行われたのを見て、日本企業は中国リスクを実感したわけです。
ちなみに現在も、四川省の成都など、中国人口3億人をカバーする地域でロックダウンが行われています。
中国の電力不足も影響し、今年夏、中国は記録的な猛暑によって電力需要が増大するとともに、雨不足で水力発電量が減少しました。
中国政府は対策として、電力使用量が多い工場に生産の一時停止を通知しました。8月中旬、四川省にあるトヨタ自動車の工場の生産も一時停止しました。
(2)経済安全保障
二点目は、経済安全保障です。現在、米中対立が激しさを増す中、日本でも経済安全保障の観点から技術流出に対する意識が高まっています。
特に、先端技術を持つ日本企業にとっては、経済安全保障は重要な課題です。なぜなら、技術・データの流出が日本企業の優位性や日本の安全保障に与える影響が大きいからです。
そんな中、中国政府は昨年9月、中国でのデータの取り扱いを規制する「データ安全法」を施行しました。
これは、企業が持つデータの管理を強化するものです。同法では対象とするデータの具体例として工業、通信、交通、金融、資源、ヘルスケア、教育、技術などを挙げており、これらが主な監視対象となります。
日本企業は経済安全保障の観点から、技術流出や機密情報が漏えいすることを警戒しているわけです。
また、中国政府は、ハイテク製品の開発や設計などの全工程を中国国内で行うことを事実上強制する新たな規制を導入することを検討しています。
現在、複合機やプリンターといった事務機器を対象としていますが、今後は半導体などのハイテク製品まで範囲を広げることを検討しています。
この規制が導入されれば、日本で商品開発を行い、中国で組み立てるような企業は、中国で販売できなくなります。
(後編につづく)