最低賃金引き上げで大失敗した韓国。日本は同じ過ちを犯すのか? 【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆最低賃金引き上げで大失敗した韓国
先の参院選では、多くの政党が最低賃金の引き上げを政策として掲げました。
しかし、幸福実現党は、最低賃金の引き上げには反対です。その理由は、最低賃金の引き上げは、若い人達の就労のチャンスを奪うことになるからです。
ギリギリのところで経営している企業にとって、最低賃金を強制的に引き上げるとなれば、誰かの首を斬らないと経営が厳しくなります。
その場合、給料に見合わない働きをしている若手から首を斬られる可能性が高いわけです。
そうした反作用が実際に起きたのが韓国です。
文在寅前大統領は、2017年の就任のとき、5年間で最低賃金を5倍にするという目標を掲げました。1年目には16.4%引き上げ、5年間の任期中に累計41.6%上げました。
その結果、何が起きたかというと。不況と若者の大量失業です。
GDPの成長は低迷し、所得下位20%世帯の月平均所得は2017年第4四半期から、2019年第4四半期には、日本円で月収が2万円近く減少しました。
失業率を見ると、2021年は3.0%と一見、低く見えるのですが、これは税金を使って無理やりバイト雇用を充実させたからだと元駐韓国特命全権大使の武藤正敏氏が指摘しています。
それも、この税金主導のバイト雇用で増やしたのは、シニア層ばかりで、若者の失業率は7.8%と高く、失業者の3人に1人が若者世代でした。
参院選で、最低賃金引上げを訴えている政党は、単純な引上げだけではなく、賃上げを政府が負担するもので2つのパターンがあります。
◆補助金による賃上げ
1つ目は、れいわ新選組などが提言している補助金による賃上げです。賃金引上げによって生じる企業の負担を、政府に負担させるもので、つまり、バラマキです。
人件費分を政府が負担するというなら、これは公務員を増やすことと同じであり、行きつく先は企業の国有化で、旧ソ連などの共産主義の国と変わりません。
政府がお金を負担してくれるなら、企業も労働者も新しい価値を生み出したり、給料に見合った働きをしたりする必要がなくなります。
れいわ型の補助金による賃上げは国民の勤勉の精神を破壊しかねない極めて危険な政策で、日本を没落させてしまいます。
◆助成金による賃上げ
「賃金をあげて、生産性も上げた企業に補助金をあげ、減税をする」というタイプもあります。
そのひとつが「業務改善助成金特例コース」です。コロナ禍で特に業績が厳しい中小企業を対象にして、賃金を引き上げ、設備投資などを行った場合に補助金を支給します、というものです。
ただし、賃金を引き上げた人数によって支給額が変わったり、投資の内容や条件などが細かく決められたりしている複雑な制度で、かえって企業の仕事の邪魔になってしまいます。
結局、政府が民間に介入するやり方では、賃金は上がりません。その証拠に、政府の支出が増えれば増えるほど、実質賃金が減っていきます。
なぜなら、お客様のためによいサービスや製品を生み出すことではなく、補助金をもらうことに民間のお金や時間を使うことになるからです。
政府が賃上げのためにすべきことは、「企業がビジネスしやすい環境を創り、企業が成長する後押しをする」ことです。
◆勤勉に働ける体制を
幸福実現党は、法人税の実効税率を10%台にすることを掲げています。
複雑な条件を付けずに、まずは10%台に引き下げることで、企業は自由に使えるお金が増やし、節税など、余計な仕事に力を入れなくてもよくなります。
実際、トランプ政権で、法人税を10%台にしたことで、従業員の給料やボーナスは上がりました。
◆企業の新たな価値創造を後押し
ただし、法人税の減税だけでは不十分です。
未来の見通しが明るくなければなりません。今後も日本が繁栄していくという見通しが見えなければ、企業は新しいチャレンジをしません。
そして何より、日本を豊かにしたいという志を持つ人たちが増え、勤勉に働いてこそ新たな価値は生まれます。
豊田佐吉や松下幸之助など、日本経済を発展させてきた人物は、多くの人を便利にしたい、日本を豊かな国にしたいという志を立てて努力を重ねてこられた方ばかりです。
そうした人物を育み、応援できるよう、幸福実現党は、すべての人が自由意志に基づいて勤勉に働ける体制をつくりたいと考えています。後編では、そのために必要な4つの提言を致します。
(後編につづく)