ニッポンの防衛費――米国兵器依存から日の丸防衛産業の復活を【後編】
幸福実現党党首 釈量子
◆日本が見習うべき、ドイツ・ショルツ政権の特別防衛基金
日本にとって大きな参考になるのが、ドイツ・ショルツ政権が決断した防衛費に関する新たなイノベーションです。
日本は「財務省主導型」、いわゆる従来の「予算要求型」で、防衛省が財務省に予算を下さいとお願いする形では、機動的で、十分な防衛配備はできません。
こうした限界を超えるために、例えばドイツ・ショルツ政権は、ロシアによるウクライナ侵攻が欧州に及ぶ危機に対応する形で、「GDP比2%程度」の防衛予算と共に、特別防衛基金として「13兆円規模」のファンド創設を決断しています。
このように、「財務省主導型」から「防衛省(連邦国防省)主導型」に移行することで、より柔軟で機動的な防衛体制の構築につながることは間違いなさそうです。
◆兵器の米国依存脱却、「日の丸」軍事産業を立ち上げろ!
現在の混迷を深める極東情勢において、中国による台湾や尖閣諸島・沖縄への侵略行為や、北朝鮮によるミサイル攻撃、ロシアによる北海道侵攻など、いつ何時、日本が攻撃される事態が起こってもおかしくない状況になりつつあります。
幸福実現党は、「日本の未来を本当に守り抜くためには」という命題に対して「国防費」についても考えていきたいと思っております。
また、日米首脳会談によって、「防衛費の相当な増額」がなされたといっても、結局、日本の血税は、「相互運用」というアメリカとの「お約束」によって、すべて米国の軍事産業に流れていくのも不都合な真実でしょう。
実際に、海上自衛隊の装備も、ほぼ米国製だともいわれています。
今後、日本では、「防衛産業」を日本の基幹産業として立ち上げていく必要があると我々は考えております。
例えば、北海道の室蘭は「鉄の街」と言われ、日本製鉄や日本製鋼がありますが、その周辺にも、加工技術に優れた中小企業が数多く存在しています。
地元の室蘭工業大学にも航空宇宙工学を研究する学部があり、宇宙開発の研究も盛んに行われているという特徴を備えています。
ロケット発射技術は、電波で誘導すれば軍事で転用できます。日本の地方都市でも大きなポテンシャルがあると言えます。
◆兵器の米国依存の脱却、「日の丸」軍事産業の立ち上げを
しかし、最後にボトルネックがあります。それが「憲法九条」です。「国を護る」のは、予算があって、武器があればいいというものではありません。
いわゆる「平和憲法」の呪縛が、この国の手足を縛り、国防論議もされない中において、「防衛費の相当な増額」を大きな成果だと考える現政権に、はたして国を護り抜くことができるのでしょうか。
更に言えば、日本では大学で軍事に関する研究すらできません。どの国でも大学は国益に資する研究を競って行っています。
軍事研究によって革新的な技術が生まれてきた事例としては、コンピューター、人工衛星、GPS、インターネットなどがあります。アメリカでは大学の軍事研究が国に大きく関わっています。
今の日本は、未だかつてない国防上の危機に立たされています。自国で軍事研究を行うことは、国家の自助努力として欠かすことはできません。
軍事転用できる技術というのは、他国が常に狙っているため、「軍事研究するな」という規制を廃し、防衛力強化につなげていかなくてはならないはずです。
◆政府がやらなくてはならない仕事
幸福実現党は次の参議院選挙においては「減量の経済学」を掲げております。
デジタル庁や子ども家庭庁や、また新設予定の「健康危機管理庁(仮称)」など、無駄な省庁や役人を減量し、「政府はやらなくてよい仕事はするな」と訴えています。
しかし、「政府がやらなくてはならない仕事」、それが国民の生命・安全・財産を護る「国防」という仕事です。防衛費の拡大と、バラマキや政府の無駄仕事などと、同じにしては断じてなりません。
ウクライナ支援のために、6億ドルを拠出する岸田政権ですが、であるならば、ノーガードの北海道防衛や、いつ何時起こってもおかしくない、中国による尖閣・沖縄など南西諸島侵攻に万全の備えを構築することこそ、必要なのではないでしょうか。