ニッポンの防衛費――米国兵器依存から日の丸防衛産業の復活を【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆「防衛費の相当な増額」、それは日本の防衛に本当に足りるのか?
5月23日、日米首脳会談の後、岸田首相は「防衛費の相当な増額を確保する決意」について、アメリカの支持を得たことを明かしました。
ここでの「相当な増額」について、安倍元首相は「6兆円の後半という意味ではないか」とコメントしましたが、現時点でははっきりしていません。
2021年度の当初予算は約5.3兆円でしたが、その後、防衛費6兆円を初めて超す予算の補正が加えられました。
安倍元首相が言った「6兆円の後半」が本当であれば、昨年に続いて大幅アップとなることは間違いありません。
しかし、いま日本を取り巻く周辺国の「脅威」からみて、「その防衛費は、はたして妥当なのか」「日本を守り抜くことが出来るのか」、そうした議論が尽くされた上で算出されたものとも言えません。
適正な防衛費を図る一つの指標である、「防衛費GDP比」から見ても、日本は「GDP比1%」の枠から上回ることもなく、ここ50年以上、国際情勢などの激変は無視するかのように、ほぼ横ばいで推移しています。
この「GDP比1%」をその他の主要国と比較してみると、シンガポール約3%(2.98%)、韓国2.78%、英国は2.2%。
他にも、米国3.74%、インド2.88%、ロシア4.26%、イギリス2.25%、サウジ8.45%、ドイツ1.4%、フランス2%など、他国との差は歴然。日本は極めて低水準であると言えます。
◆横這い日本とは比較にならない軍拡をとげる中国
日本が「GDP比1%」の呪縛に囚われ続けてきた中、急ピッチで軍事費を拡大し続けたのは、お隣の中国です。
実際に、中国政府が2022年に公表した軍事費は約26兆3000億円と、日本の4倍以上ですが、実際はもっと多いとみられています。
その根拠が、アメリカが2021年度に作成した報告書によると、「中国が公表する軍事費はいくつかの主要な項目を省いている。公的な研究機関によれば実際は公表値(26兆3000億円)の1.1~2倍になる可能性がある。」と述べています。
この事実を鑑みるに、4倍どころか5倍~8倍の軍事費を使っていると言えます。
それに比べると、日本の防衛費の内訳を見ると実に貧弱と言わざるを得ません。人件・糧食費が約4割(42.8%)、維持費が約2割(22.7%)、基地対策経費が約1割(9%)なので、現状維持のために実に予算の「4分の3」が費やされています。
残りの「4分の1」、昨年度でいえば「1兆5千億円強」で新たな防衛力をつくるための資金を捻出している、苦しい懐事情にあるのが実態です。
◆GDP5%程度なければ、今の日本は到底守り抜けない!?
では「いまの日本にはどの程度の防衛費が本当は妥当なのか」これまでとは違う視点で考えてみたいと思います。
自衛隊元西部方面総監の用田和仁氏によると、「本当に日本を守り抜くには今さら『倍増』では到底間に合わない。『5倍増』のGDP5%程度が妥当だ」といいます。
そして、用田氏は、最優先事項として次の項目を指摘しています。
(1)サイバーや電磁波領域の装備増強
例えば、中国は軍用無人機の開発に非常に力を入れてきました。
日本の防空識別圏に中国の無人偵察機が侵入していますが、今後、おびただしい数の攻撃型ドローンなどが、我が国の領土を襲来する可能性も指摘されています。
そのような時に、電子機器を攪乱したり、焼き切ったりするのが、電磁波領域の装備です。
また、自衛隊の人員を簡単には増やせない点を補うための「無人潜水艇」などを、海・空における無人化・ロボット化などの技術開発は促進すべきだとも指摘されておりました。
(2)次に、中国のような軍事大国に対しては「空母や軍艦を出すならそれを対艦ミサイルで沈める」といった非対称戦的な戦い方を重視し、予算を投下することです。
(3)もちろん、ミサイル防衛の整備や、水中での作戦を有利に進めるべく、攻撃型原潜等の配備の重要性も言及されていました。
(後編につづく)