SNSアカウントも続々凍結?バイデン政権が「偽情報」監視か【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆アメリカの「言論の自由」の危機
今、自由と民主主義の国、アメリカが言論の危機にあります。
バイデン政権が4月末に設立した「ディスインフォメーション・ガバナンス・ボード(DGB)」は、日本語では偽情報統治委員会で国土安全保障に関する偽情報に対処するための機関です。
4月29日付のAP通信の報道によれば、特にロシアや不法移民に関する偽情報に集中して対応する予定でしたが、共和党や一部のメディアが猛反発したことで、わずか3週間で停止に追い込まれました。
しかし、報道ではあくまで、「pause」(一時停止)と報じており、将来的に復活する可能性もあります。
国土安全保障省はDGB設立時に「偽情報の拡散は、国境の安全、災害時のアメリカ人の安全、そして私たちの民主的機関に対する国民の信頼に影響を与える可能性がある」と発表していました。
一見、とても正しい発言にも聞こえますが、これは、「言論の自由」をめぐる攻防であり、議論が沸騰しました。
例えば、ウォール・ストリート・ジャーナルは、DGBについて「バイデン政権は、国家による監視社会を描いたジョージ・オーウェルの小説『1984』を誰も読んでいないのではないか」と皮肉っています。(※2)
◆DGBトップの問題
DGBのトップになった、ニナ・ジャンコウィッツ氏は、2020年の大統領選のときに、汚職疑惑があがったハンター氏のノートパソコンをトランプの選挙運動のために作り出されたウソ情報と見るべきだと主張しました。
ちなみに、彼女自身は過去の二回の大統領選でバイデン氏とヒラリー氏を公然と支持していたとフォックスニュースは報道しています。
さらに、2021年3月21日にはTwitterで、ハンター氏のノートパソコンが疑わしいもので、おそらくロシアの影響工作の一環だとツイートしています。
しかし、アメリカ当局の捜査が進んだ現在、これはフェイクでも何でもなく、本物で副大統領の息子の立場を利用してウクライナや中国で商売をしていた証拠もあることが報道されています。
また、今年の3月末にはアメリカの大手メディアが司法省による刑事事件捜査が進展していることを一斉に報じました。
DGBのトップとなったニナ氏は、過去にこのような重要な真実を、誤ってフェイクニュースと断じていたわけですから、「トップになる資格があるのか」と非難が巻き起こり、今回辞任に追い込まれました。
バイデン政権は、事実上の撤回となったDGBについて「委員会は、どんな方法であれ決して検閲も言論の取締りもしない。憲法上の核となる権利を守りながら、祖国を守るという私たちの使命を確実に果たすように設計された」と弁明しています。
つまり、政府は情報が本物か偽物のジャッジをするだけで、検閲はしないのだから、「言論の自由」は守られるという建前を言っているわけです。
しかし、政府が検閲しないと言っても、政府が本物か偽物のジャッジするのなら、マスコミやソーシャルメディアがその判断を基に、発言の削除などができるわけです。
◆強まる言論統制
アメリカでは既に、政治家とメディアが融合することで言論の統制が始まりつつあります。
2020年大統領選中のハンター・バイデンをめぐる汚職疑惑でも、民主党がフェイクだと断定するのに合わせたように、Twitterなどのソーシャルメディアも、情報を検閲しました。
選挙直後に実施されたアメリカのメディアリサーチセンターの調査によれば、バイデン氏に投票した4.6%の人がハンター・バイデンの疑惑を知っていたら投票しなかったと答えています。
ワクチンをめぐる問題でも、政権の動きに沿ってTwitterが検閲を行った例があります。
2021年7月16日にバイデン大統領は、フェイスブックなどのSNS上でmRNAワクチンに対する反対意見の存在を許すことで、「人々を殺している」と発言しました。
このバイデンの発言の数時間後、ワクチンやマスクの義務化に異議を唱えていたジャーナリストのアレックス・ベレンソン氏のTwitterアカウントが凍結されました。
ベレンソン氏は、アカウント凍結は違法だと裁判を起こし、裁判所は、Twitter社に判断の根拠を示す情報開示を4月29日に命じています。
今回のTwitter社の動きは、偽情報統治委員会DGBがなくても、既にアメリカでは、政府による言論統制が進みつつある実態を示唆しています。
(後編につづく)