ウクライナ戦争の背後で台湾に迫る中国。このままだと日本はウクライナ化する?【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆台湾問題で中国を挑発するアメリカ
現在、台湾における緊張が密かに高まっています。きっかけはアメリカ国務省のWebサイトの変化です。
サイトでは、台湾とアメリカの関係について、以前は「アメリカは台湾の独立を支持しない」あるいは「台湾は中国の一部」と書かれていました(※1)。
それが、5月5日のWebサイトの更新で突如、こうした文言が消え去ったのです。
そして、新しく付け加わったのが「すぐれた民主主義や技術の原動力として、台湾はインド・太平洋において重要なパートナーである」という文言です(※2)。
これに対して、5月10日、中国外務省の趙立堅(ちょうりっけん)副報道局長は記者会見で「台湾問題をもてあそび、台湾海峡の現状を変えようと試みるもので、将来必ず身を焦がすだろう」と批判しました。
中国軍は、明らかに台湾への牽制に動いており、中国海軍の空母「遼寧(りょうねい)」は、サイトの更新があった5月5日に、台湾近海で1週間近く演習を続けました。
5月13日には遼寧からの艦載機の発着艦回数が200回を超えたと防衛省が発表しました。
◆アメリカの曖昧な戦略
もちろん、アメリカが台湾を中国とは別の独立国家として認めること自体は望ましいことです。
しかし現状では、アメリカの「台湾関係法」は、防衛義務までは定めておらず、いざというときにアメリカが台湾を守る保障はどこにもありません。
これを「戦略的曖昧さ」と呼んでおり、アメリカは態度を明確にしないことで、台湾と中国の関係が緊張しないようしてきたわけです。
台湾を国として認めるような動きをする一方で、防衛面では曖昧なままで、台湾をかえって戦争に引きずり込みかねません。
◆プーチンを罠にかけたバイデン
現在のウクライナ戦争でも大きなきっかけになったのも、バイデン政権の度重なるロシアへの挑発です。
ウクライナがNATOに加盟すれば、ウクライナからわずか7分でモスクワを核攻撃できようになります。そのため、プーチン大統領は、これがレッドラインだと繰り返し警告してきました。
しかし、バイデン政権はNATOの東方不拡大を一貫して拒否し続け、その一方では、12月8日に「(米国は条約に基づく防衛)義務がおよばない」と発言しました。
さらに2月10日、「ロシアがウクライナに侵攻してもアメリカ軍をウクライナ国内に派遣することはない」と断言しました。
「米軍はウクライナを守らない」と誘いをかけて、ロシアの軍事作戦を呼び込んだわけです。
◆バイデンが中国を挑発する意図
バイデン大統領は、昨年11月の習近平主席との電話会談においても「台湾独立は支持しない」と述べていました。
日本としては、アメリカに「台湾が戦場にならないように、最後まで責任を持って守れ」と言うべきです。
日本は日米同盟がありますが、実のところ、日米同盟があるからと言って、戦争を防げるか分からないくらい事態は緊迫化しています。
◆東アジアの守りが手薄に
もはやアメリカには、米ソ冷戦時代ほどの軍事力はありません。
膨大な軍事費に耐えかねて、ベルリンの壁崩壊時点では200万人以上いた米軍は、現在、約130万人です。GDP比6%近くあった軍事費も4%を下回っています。
それでも、急拡大する中国に対抗するために、ロシアや中東にいる米軍を東アジアに移していく戦略を進めていました。
しかし、アメリカはウクライナへの武器支援によって、対戦車ミサイルのジャベリンを7000発提供し、在庫が3分の2に、対空ミサイルのスティンガーは2000発提供し、在庫は4分の3になったと報道されています。
今回、ウクライナに供与されたジャベリンとスティンガーのどちらの兵器も、すぐに増産できるものではなく、在庫が尽きれば、極東情勢に影響を与える可能性があります。
この間、中国は無傷であるため、東アジアの軍事バランスは崩れ、戦争が起きかねない不安定な状況になりつつあります。
(※1)
http://web.archive.org/web/20220503165930/https://www.state.gov/u-s-relations-with-taiwan/
(※2)
https://www.state.gov/u-s-relations-with-taiwan/