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ウクライナ戦争で進行する史上最悪の食料危機【前編】

https://youtu.be/usLR-0zspWU

幸福実現党党首 釈量子

◆史上最悪の「食料危機」が到来

世界中のメディアがロシアとウクライナにくぎ付けになるなか、水面下でジワジワと食料危機が進行しています。

5月4日、「世界食糧計画(WFP)」(※1)は、突発的な事案で十分な栄養を摂取できずに命や生活を危険にさらす状態を示す「急性飢餓」の人口が、2021年から約4000万人も増加、過去最悪の1億9300万人に上ったことを明らかにしました。

3月末にWFPのビーズリー事務局長は「ウクライナでの戦争は第2次世界大戦以降、目にしたことのないような大惨事を地域の農業と世界の食糧・穀物供給をもたらそうとしている」とし、「大惨事の上の大惨事」と最大級の警告で表現しています。

なぜなら、今回の戦争が、世界有数の穀倉地帯ウクライナとロシアとの間で行われているからです。

◆世界の2つの「食料庫」を直撃するウクライナ戦争

FAO(国連食糧農業機構)が毎月発表している、世界の食料価格指数(肉、酪農品、穀物、野菜・油糧、砂糖、2014~2016年平均=100)を見ると、2022年2月には1990年の統計以来の最高値141.1ポイントを記録しています。

更にウクライナ戦争が本格化した3月度は159.7と食料全体で未曽有の高騰を見せています。その中でも上昇が目立ったのが穀物で、170.1とこちらも過去最高値となっています。(※2)

小麦の世界の生産量は、2021年が7億7587万トンです。ロシアとウクライナの合計は、1億1835万トンで、2か国の生産規模は、全体の13.5%にあたります。

また、小麦の輸出量ベースを見ると、ロシアは世界第1位、ウクライナが世界第5位、2か国合計で国際穀物市場に流通する小麦の約25%~30%を占めます。

両国に小麦輸入の3割以上を依存している国がなんと50か国近く(世界196か国中)もあるという驚くべき状況です。

フランスのデータ分析会社(ケイロス)は6日、ウクライナの22年度産の小麦生産量は前年比で35%以上減少する見通しだと発表しています。

トウモロコシについても、ウクライナが世界第4位の輸出国で、世界の約20%を賄っています。

植物油の原料になるヒマワリ油に至っては、ロシア・ウクライナの2か国だけで世界流通の70~80%を占めているのです。

◆「食料争奪戦」による争いが世界中で起こる?

特にウクライナへの小麦依存度が6割に上る、エジプトやトルコ、イランなど中東・北アフリカの国々では、すでに食料価格の急激な上昇に喘いでいます。

例えば、エジプトなどでは主食であるパンの価格が50%も上昇し、人口1億人の約3割にあたる貧困ライン(1日1.9ドル以下)を下回る人々の生活を直撃しています。

2011年に北アフリカのチュニジアからエジプト、中東全域に広がった「アラブの春」の革命のうねりは、実は、前年度のロシアやウクライナでの小麦の不作によりパン価格が高騰し、庶民の不満が渦巻いたことに端を発しました。

結果的に、複数の政権が転覆、カダフィ政権が倒れたリビアは未だ内戦状態、アサド政権打倒で内戦に突入したシリアも未だに混迷を深めています。

また、ロシアやウクライナに輸入依存していない国々であっても、不作や冷害などがひとたび起きると、それまで輸出に回していたものを、国内向けに確保するという動きになります。

そして、国際市場に出回る量が一気に減少してしまうために、世界的に一気に急騰する傾向があります。

◆史上最悪の「食料危機」、真犯人は誰か?

さて、ロシア・プーチン大統領は、4月5日、閣僚等と行った「農林水産業開発会議」において、食料供給については「ロシアに対して敵対的な政策を堅持する輸出を注意深く監視しなくてはならない」と述べました。

この食料危機において、自国の強みとしての穀物を「戦略物資」として、十二分に活用し、少しでも外交を有利に進めるつもりでいます。

実際に、ロシアは3月中旬に小麦の輸出制限を発表する一方で、ウクライナ産の小麦が手に入らないエジプトに対しては、ロシア産小麦を前年比の6倍近くまで輸出を急増しました。

イラン、トルコ、リビアにおいても前年比の2倍超を輸出しており、ウクライナ産が手に入らず困窮する国々に小麦を売り、結果的には、紛争の拡大を抑止している形になっています。

対してバイデン政権は食料危機に苦しむ国々へ870億円(6億7千ドル)規模の食糧援助を発表してはいます。しかし、今回の戦争の発端は、ロシアを挑発し、ゼレンスキー大統領をあおりに煽ったバイデン大統領の責任を問わねばなりません。

(後編につづく)

(※1)世界食糧計画(WFP)53カ国や地域を対象とした食料危機に関する2021年度の調査報告書
https://ja.wfp.org/news/shiliaoweijiniguansurukuroharubaogaoshushiliaobuannojilugengxin
(※2) https://www.fao.org/worldfoodsituation/foodpricesindex/en/?msclkid=6b1d3212cea311eca461734688c9448c

釈 量子

執筆者:釈 量子

幸福実現党党首

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