違反者は50万円以下の罰金?――天下の悪法「プラスチック新法」
幸福実現党党首 釈量子
◆4月1日施行の「プラ新法」とは
4月1日から「プラスチック資源循環促進法(プラ新法)」が施行されました。
同法は、プラスチックの過剰消費の抑制や、環境問題への意識付けを目的としたもので、事業者や自治体に、製品の設計からプラゴミの処理まで、プラスチックの量を減らす取り組みを促すものです。
2020年6月から、「容器包装リサイクル法」に基づき、「レジ袋の有料化」が始まりましたが、今回の新法は、「プラスチック」という素材そのものをターゲットに削減を促す法律です。
プラスチックの世界の生産量は、1950年は200万トンでしたが、2015年には3億8,100万トンで、70年で200倍近くも増加えており生活に根付いています。
日本政府は、2030年までに使い捨てプラスチック製品を累積で25%排出抑制するなど、野心的な現実離れした目標を掲げました。
指定のプラスチック製品を5トン以上、無償で提供する企業は、削減に取り組まない場合は最悪、社名が公表され、50万円以下の罰金となります。
もちろん、5トン以上指定のプラスチックを提供しない業者も削減に取り組むことが求められます。
有料化の対象として、フォーク、スプーン、マドラー、歯ブラシ、ハンガーなど12品目のプラスチック製品を規制しています。
◆企業の負担拡大
企業は、有料化するか、プラスチックの使用量が少ない製品に替えるなど、とにかくプラスチックの使用量を削減しなければいけません。
某大手ホテルチェーンでは歯ブラシやクシ、ひげ剃りなど、プラ製の使い捨てアメニティを客室に置くのをやめて、希望者には竹製のハブラシやヒゲソリなどを有料で売るそうです。
某大手飲食店は、植物由来のバイオマス配合のプラに切り替えも考えていますが、しかしプラ製のものと比べてコストは2倍以上かかります。木製に切り替えれば負担はさらに重くなります。
コンビニは、持ち手に一部穴を開けてプラスチック使用量を削減した軽量スプーンと併用し、木製に一部切り替えるという、苦肉の策で対応するところもあるようです。
◆政府の規制拡大
この法律の問題は、規制する具体的な内容が政府の命令で決められるというところで、今回対象となったプラスチック製品12品目は今後拡大する可能性大です。
罰金の対象となる「5トン以上」も、法律ではなく、政府が決めています。
法律を通すのは時間がかかりますが、政令は法律に決められた範囲内ならば、政府の指先一つでルールが決められます。
ちなみにレジ袋有料化の際にレジ袋製造大手企業は、有料化前後で売上高が激減し、今年の1月に希望退職者を募るという報道がありました。
今回、プラスチックという素材が対象となると、業界や日本の産業、消費活動にもレジ袋とは比較にならない影響があるでしょう。
他にも同法律は、プラスチック削減の確認するために企業に報告を求めたり、倉庫や事務所に立ち入り、帳簿や書類などを検査することができます。
このような政府が経済を強く規制するようなやり方は警戒が必要だと思います。
◆炭素全体主義
日本で消費した原油のうち、プラスチック生産に使われたのはわずか2.7%で、ほとんどは、自動車や火力発電所で使われています。
ちなみに、2019年の日本の温室効果ガスの内訳を見ると、農林水産業によるものが3.9%あり、その内訳は牛などのメタンガスを含むゲップ(家畜消化管内発酵)です。
原油比2.7%のプラスチックで規制するなら、農林水産業を対象にして、ゲップが少ない牛への品種改良を義務付けて、ゲップの量を報告させる新しい法律ができても文句は言えません。
つまり、地球温暖化を名目に、国民の自由をどんどんと縛ろうとする「炭素全体主義」と言うべき動きが進んでいるわけです。
これが、「プラ新法」の正体と言えます。
◆壮大な無駄
こうした法律は、無駄な仕事をどんどん増やしていきます。
「プラ新法」の運用のめに、監査や立ち入りなどをする人員が増え、事実上、環境省の雇用対策のための法律ではないかと言わざるを得ません。
また今回の法律と合わせて、「グリーンライフ・ポイント」なる環境配慮の行動にポイントを与える制度が4月から始まり、101億円の予算が投じられます。
更に、この法律に対応するための設備投資や実証実験に今年と昨年の補正予算で136億円が費やされています。これも壮大な無駄でしょう。
以上、今回は脱炭素の観点から、プラスチック新法の問題点を述べました。次回は「海洋ゴミ削減」の観点から見ていきたいと思います。