プーチンは侵略者なのか?マスコミが報じないウクライナ危機の真相【第2回】
https://youtu.be/A4E221cNSRY
(2月8日収録)
幸福実現党党首 釈量子
(2)プーチンの主張:「ミンスク合意の履行」
◆プーチン論文の主張
プーチン大統領の主張の2点目は、プーチン大統領が2月1日にも強調していますが、2014年の「ロシアによるクリミア併合」の翌年、ウクライナとの間で締結した「ミンスク合意」を履行するよう強く求めています。
「ミンスク停戦合意」とも言われますが、「停戦」にとどまらないということを説明します。
プーチン大統領がウクライナについてどう考えているのか、一番良くわかるのは、昨年7月に発表されたプーチン大統領の論文「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」です。
ロシア大統領府公式サイト「プーチン論文」
http://www.kremlin.ru/events/president/news/66181
この中で、「元々、ロシア人とウクライナ人は異なる民族ではなかったが、共産主義だったソ連の民族政策によって、大ロシア人、小ロシア人、白ロシア人(ベラルーシ)からなる三位一体のロシア民族が解体され、ソ連崩壊後に、ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人という三つの個別のスラブ民族が国家レベルとして固定されたのである」と主張しています。
つまり、プーチンは「ソ連」の前のロシアを念頭に置いているのか、地政学的な安全保障の問題に加え、歴史的民族的さらには宗教的に、同じスラブ民族の「兄弟国家」だった地域を破壊されることに強い抵抗感を持っているわけです。
続けて、「ロシアは1991年から2013年に、天然ガスの値引きだけでも、820億ドル以上の値引きを行って、ウクライナを経済的にも巨額の支援を行ってきた」と述べています。
さらに「ウクライナは欧米によって危険な地政学的ゲームに引き込まれていった。その目的はウクライナをヨーロッパとロシアを隔てる障壁にし、またロシアに対する橋頭保にすることだ」と述べています。
欧州にとっても、ウクライナを市場にしたいことに加え、天然ガスのパイプラインも通っているのでエネルギーの観点からも確保したいわけです。
対するロシアは、ベラルーシやカザフスタンと結ぶ「関税同盟」に、ウクライナを引き込みたいという綱引き状態があったわけです。
プーチン論文の主張は、ロシア国民のみならず、ウクライナ東部やクリミア半島に住むロシア系住民の心に響きました。
◆一枚岩ではないウクライナ
一方で、ウクライナの首都キエフや西部のウクライナ人は、プーチン論文に反感を持ちました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアとウクライナの関係は真なる兄弟ではなく、「カインとアベルの関係を思わせる」と指摘しています。
旧約聖書では、兄のカインが弟のアベルを殺してしまい、これが人類初の殺人であり、さらに、ヤハウェにアベルの行方を問われたカインは「知りません」と答えて、これが人類初の嘘だったとされています。
このように、ウクライナは1991年のソ連崩壊後、国家として独立しましたが、国内は決して一枚岩ではありません。
◆プーチンの大義
こうした中、2014年初めに、ウクライナでクーデターが起こり、親欧米で反ロシアの政権が誕生したのをきっかけに、ロシアはクリミアの人々を守るためにクリミアを併合に踏み切ったわけです。
同時に、ロシア系住民が数多く住んでいるウクライナ東部のドンバスで、分離独立運動が始まり、ロシアは軍事的に支援し、戦闘状態が続きました。
プーチンにとっては、本来同じスラブ民族のウクライナで、ロシア文化やロシア語を排除する動きは看過できなかったわけです。
この内戦状態を収拾するために、2015年2月に、ドイツやフランス、ウクライナ、ロシアなどが結んだ休戦協定が「ミンスク合意」です。
当時のメルケル首相の働きで激しい戦闘は回避されましたが、小さな紛争は続いています。
問題は、プーチン氏が繰り返し「ミンスク合意」の履行を求めているのに対して、ウクライナは否定的な態度を採っていることです。
実際に、昨年10月には、「ミンソク合意」を破って、ウクライナ軍がウクライナ東部をドローン攻撃しました。
日本では報道もされませんが、「ミンスク合意」は、単なる休戦協定だけではなく、「ドンバス地域の強い自治権」を認めることや、「首長選挙」を行うことなどの、政治的条項が含まれていることです。
プーチン氏は、これを求めているわけです。
プーチン氏の論文からも伺えるように、ロシア文化圏に生きる人々を守ると言う大義のもと、ドンバスの自治権を守ることは「譲れない一線」だと考えています。
こうした経緯を見れば、プーチン氏が、欧米に対して「ミンスク合意」の履行を強く求めるのは、筋が通っているわけです。
こういう立場を理解することが、あるべき落としどころを模索するためには必要です。
(第3回に、つづく)