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膨れ上がる政府の借金! インフレ・ファーストは時代遅れ

幸福実現党政務調査会 藤森智博

◆インフレを期待し、36兆円まで膨れ上がった補正予算

現在、臨時国会にて、令和3年度補正予算が審議されています。その額なんと36兆円。過去最大の補正予算のようです。

ここまで予算が膨らんだ理由を考える際に、鍵を握るのが、GDPギャップです。GDPギャップとは、需要と供給力の差のことです。

お店側が「これだけ売りたい!(売れる能力がある!)」というのに対し、お客さんが「お財布事情も考えて、これだけ買いたい!」という需要と供給の差を日本全国規模で見たものになります。

どうやら、今回の補正予算では、政府は、財政出動によって需要不足を補い、GDPギャップをプラマイゼロにする狙いがあるようです。

11月15日の自民党政務調査会全体会議では「(政府が直接支出する)真水ベースで30兆円規模が必要だ」というような大規模な財政支出を求める意見が噴出したと言われています。

これは、7-9月期のGDP1次速報から試算されたGDPギャップ27兆円とも対応しているでしょう。

さらに、GDPギャップがプラスになれば、インフレに転じる可能性があります。

安倍政権以来、「2%程度のインフレになれば、好循環が生まれる」と考えられているので、インフレを目指して、支出を増やしていった結果、補正予算は36兆円まで膨れ上がったと言えるでしょう。

ちなみに、2%の超過需要を発生させるには、+11兆円で、計38兆円以上が必要になるとも試算されます。

もちろん、政府の財政支出でお金をバラまいても、例えば何も買わず、貯金する人もいたりするので、今回の補正予算がインフレを確実にするわけではありません。

◆燃料代などが高騰しているため、「円安」路線は命取りになりかねない

しかし、ここで、お伝えしたいことは、そもそもインフレありきの経済成長路線を見直さなければいけない時代に突入しつつあるということです。

御存知の方も多いかと思いますが、現在、世界はインフレと景気の停滞が同時に進行する「スタグフレーション」を警戒しています。

アメリカでは、11月の消費者物価指数が前年同月比で6.8%上昇となりました。1年前と比べて、モノの値段が6.8%上昇したということですが、これは約39年ぶりの高水準です。

また、EUのユーロ圏では、11月の統計で、物価が4.9%上昇したと報告されています。アメリカでは、高インフレを警戒し、FRB(アメリカの中央銀行)が、金融緩和を縮小させています。

インフレの原因は景気が回復している以上に、ガソリンやガスなどの燃料代が高騰したり、パンデミックによる渡航制限などのさまざまな規制によって、モノの供給が滞っているからだと言われています。

こうした事情であれば、日本も無関係ではいられません。それは企業物価指数を見れば分かります。

企業物価指数とは、企業が購入する物価の変動を示す指標です。例えば、車などの消費者が買う商品を作る前に、企業は、素材や部品を輸入したり、他の企業から買ったりします。

そうした企業の間で売買する物価を見れば、今後、消費者が買う商品の物価がどうなっていくか、ある程度予測できるわけです。

実は、日本の企業物価指数は、記録的に上昇しており、11月には9.0%台に突入しました。これは、高インフレに苦しんでいるアメリカと大きく変わりません。

アメリカは値上げに踏み切る一方で、日本の場合、景気の動きが弱く、素材の価格上昇を商品に転嫁できません。

給料が上がっていないので、値上がりしたら物が売れなくなってしまいます。上げして売れなくなるかという「進むも地獄、退くも地獄」という状況と言えます。

◆インフレを建前に、お金をバラまけば、円安を招き、かえって企業を苦しめる

こういう状況だと、「企業が値段を上げても売れるように、政府がお金をばらまけばいい」という発想もあるかもしれません。

しかし、それでは問題は解決されません。アベノミクスを思い出してほしいと思います。

アベノミクスは「第一の矢」で金融緩和をして国債を刷り、「第二の矢」で財政政策という形でお金をばらまきました。

そして、一連の政策の結果、円安が起きました。民主党政権時代の円高が、瞬く間に円安となり、空前の株価上昇となっていきました。

しかし、現在はこの円安が企業を苦しめています。

円安は輸出の際には有利ですが、現在は燃料代や原料など、輸入品の値段が上昇していることが、企業物価指数を押し上げています。円安が深刻になれば、材料の調達が困難になり、さらに企業を苦しめることになります。

お金をバラまき、需要を創出して企業を助けようとしても、それによって円安が進めば、問題は解決しないということが言えます。

◆日本企業を立て直すために必要なことは、適切な「規制緩和」と「減税」

結局、この逆風を乗り切るには、輸入品そのものを安くするか、企業の生産性そのものを上げて、逆境に強い体質にしていかなくてはいけません。

前者については、脱炭素をやめ、化石燃料に再投資したり、ロックダウンなどの必要以上の規制を撤廃していくことが重要になりますが、世界レベルの問題も含むため、日本一国の取り組みでは限界があります。

一方、後者については、政府の施策の余地は大きいです。政府をスリム化して、不要な仕事を無くせば、行政手続きで企業が浪費していた時間を「創造」できます。

また、必然的に、税金を多くとる必要が無くなるので、減税して人々の暮らしも楽になります。従って、「規制緩和」と「減税」こそが今考えるべきことなのです。

対して、今までの自民党政権のように、インフレを目指して富の創出につながらない財政出動を重ねれば、無駄な仕事をたくさん生み出し、生産性はむしろ下がっていくはずです。

今までの「インフレ・ファースト」の考え方では、もはや時代の変化に対応できないのです。

藤森智博

執筆者:藤森智博

幸福実現党 政務調査会

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