デジタル庁に迫る中国軍の魔の手――私たちの個人情報が危ない? 【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆デジタル庁の3つのコンセプト
9月1日、菅政権の肝いりの「デジタル庁」が発足しました。
発足式では、菅総理から「我が国全体を作り変えるくらいの気持ちで、知恵を絞っていただきたい」という激励の言葉もありました。
デジタル庁のコンセプトは、「情報の集中」と「一元管理」です。そのために、あらゆるデータのデジタル化を試みています。
平井デジタル大臣は、デジタル庁の3つの柱として、(1)『行政のデジタル化』、(2)『産業社会全体にわたるデジタル化』、(3)『誰もが恩恵を享受できるデジタル化』を掲げています。
(1)「行政のデジタル化」とは、マイナンバーを基盤として、スマホであらゆる手続きをオンラインでできるようにすることです。
そのために、地方自治体との情報管理システムの壁を取っ払って、政府の情報の一元管理を進めます。
(2)「産業社会全体にわたるデジタル化」では、具体例として、医療・教育・防災を挙げています。
つまり、「今まで眠っていたアナログのデータ、例えば、紙に書かれた医療情報をデジタル化して、今流行りのAIを使ったら、便利で儲けられる」という話です。
(3)「誰もが恩恵を享受できるデジタル化」は、デジタル庁が音頭を取って、データを使いやすいように標準化を進めることです。
◆中国軍に狙われるデジタルデータ
このように、デジタル庁は、便利さを追求するために、データの標準化・デジタル化を進めるわけですが、これは諸刃の剣です。
使い勝手のいい、便利なデータが、集中するということは、それだけ情報流出したときの被害が大きくなるということです。
しかし、日本のデジタル情報の防衛力はお世辞にも高いとは言えません。
イギリスのシンクタンクIISS(国際戦略研究所)は今年6月、日本のサイバー能力を3段階のうちで最低のグループにあると評価しており、これは中国やロシア、イギリス、フランスよりも低い評価です。
もちろん、デジタル庁もサイバー・セキュリティに取り組むとしていますが、日本は既にかなりの劣勢です。
特に、中国のサイバー攻撃部隊は精強で、17万5,000人規模とされ、このうち、サイバー攻撃部隊は3万人とも指摘されます。数だけで言えば、おそらく世界一でしょう。
アメリカのサイバー任務部隊は、6200人規模。我が国は、今年新設予定の自衛隊サイバー防衛隊で、160人です。
また、日経新聞の報道によれば、2020年度末の段階で、陸海空を合わせたサイバー関連の人材は660人で、2023年度までに1000人越えを目指すということですが、中国の3万人と数だけ比較すれば、非常に厳しい現状です。
2018年には、アメリカ海軍の契約業者が中国政府のハッカーによって、潜水艦搭載の超音速対艦ミサイルに関する極秘情報が流出しました。
加えて、尖閣を狙う、海上民兵のように「サイバー民兵」の存在も指摘されています。
例えば、平成28年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)など国内約200の企業や研究機関を狙ったサイバー攻撃に関与した疑いが強まったとして今年4月に中国共産党員の30代の男を書類送検されました。
サイバー民兵の狙うものとして、個人情報も挙げられます。2015年に日本年金機構へサイバー攻撃が行われ、氏名や住所を含む個人情報が125万件、流出しました。
(後編につづく)