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「外国人の土地取得問題について」【1】

http://hrp-newsfile.jp/2021/4105/

幸福実現党 政務調査会 都市計画・インフラ部会長 曽我周作

◆外国資本による土地取得が進む日本

本年6月にいわゆる土地規制法案といわれる法律が可決・成立しました。正式名称は「国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する法律案」というものです。

この法律が検討されたのは、外国人や外国法人、つまり外国資本による土地買収が問題とされたことから始まっています。

また、そもそも誰が所有している物件なのか、外国人によって土地が取得されたのかどうか分からない土地も多くあります。

所有者不明土地問題研究会(座長:増田寛也氏)が2017年12月に発表した資料(※1)によると、2016年時点の所有者不明の土地面積は約410万haと推計されています。

これは九州本島の面積約367万haよりも大きい規模になります。

また、外国資本による森林買収が問題になっている北海道では2019.年12月末現在における海外資本等による森林所有状況は、北海道庁が把握しているだけでも面積が2,946ha、所有者数が220に上ります。

しかも、何のためにその土地を利用しようとしているのかについて「不明」という場所がいくつもあります。(※2)

また林野庁の発表によれば、2019年の一年間での国内における森林の買収は、把握されている分だけでも、62件、451haにも及び、2006年から2019年までの累計では465件、7560haにもなります。(※3)

産経新聞編集委員の宮本雅史氏の著書『爆買いされる日本の領土』などで、北海道以外でも、例えば対馬市、奄美市など、特に中国・韓国資本による土地の買収の問題事例が多く指摘されています。

中には自衛隊の基地に隣接した土地が買収されているなど、外国資本による土地の買収に一定の歯止めがかけられるようにならなければ、安全保障上でも大きな問題になりうるという実態が浮かび上がってきました。近年この問題は広く認識されるようになりました。

◆外国資本による土地取得に規制のない日本

 
戦後の日本では、これまで外国資本による土地取得になんらの規制も設けられてきませんでした。

実は「外国人土地法」という法律が現在でも存在しますが、この法律は敗戦後から現在まで運用されていません。

この「外国人土地法」は大正14年に制定された法律です。外国資本による土地取得等に規制を設けることができる旨を規定した法律になります。

実は「外国人や外国法人が日本において土地に関する権利を取得することを原則として認めるとともに、その例外を定めた法律」(※4)といわれるように、明治期の日本では外国資本による日本の土地の買収は認められていませんでした。

この外国人土地法では「相互主義の観点から、外国人や外国法人が属するその外国の法律が、日本人による土地に関する権利の享有を制限しているときは、政令によって、そういった外国人や外国法人の日本における土地に関する権利の享有についても同様の制限的な措置をとることができる」(※4)こと、「国防上必要な地区については、政令によって、外国人や外国法人の土地に関する権利の取得につき禁止をし、または条件もしくは制限を付することができる」(※4)ということが定められています。

しかし、これらに規定による政令は現在定められていません。

外国人でも日本の土地はどこでも自由に買うことができ、そして自由に転売することができます。

しかも「工夫次第で外国人なら保有税を支払わなくても済む」(※5)ともいわれています。しかも、日本では所有権は一定の物を直接排他的に支配する強力な権利である物権です。

所有権は自由にその目的物を使用し、収益し、処分することができる権利として強く保護されています。

◆なぜ外国人土地法は使えないとされたのか

ではなぜ、この法律は運用できないのでしょうか。

それについては、第185回国会の法務委員会(2013年10月30日)の政府側の答弁の中で、「権利制限や違反があった場合の措置等について、法律では具体的に規定がないので、政令に包括的、白紙的に委任がされていると考えられるため、それが現在の日本国憲法の四十一条や七十三条の六号(※6)に違反するおそれがある」という主旨のことが指摘されています。

また、1994年につくられたGATS(サービスの貿易に関する一般協定)によって「原則、国籍を理由とした差別的制限を課すことは認められていない」との見解が示されています。
 
一点目については法律を改正することで対応可能とも考えられます。

二点目のGATSについては例外規定として、公衆道徳の保護、公の秩序の維持、生命・健康の保護のための措置も認められていますし、また安全全保障のための措置も認められています。(※7)

諸外国も何らかの規制をかけていますし、そもそも外国人の土地所有を認めていない国もあります。

ともあれ、「外国人土地法」は外国資本による土地取得に制限をかける上で、使えない法律だという見解が政府側から示されました。

しかし、何も規制ができないようでは安全保障上重大な危機を招く恐れがあるため、新しい法律の制定に向けた検討が進み、この度の法律制定につながりました。

これは前進ではありますが、まだまだ問題の根本的な解決には不十分です。次回は、法律の中身についてお伝えしたいと思います。

※1 所有者不明土地問題研究会 最終報告概要 2017年12月13日
https://www.kok.or.jp/project/pdf/fumei_land171213_02.pdf

※2 北海道庁 海外資本等による森林取得状況 2020年5月公表
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/srk/gaishi.html

※3 林野庁 外国資本による森林買収に関する調査の結果について 2020年5月8日
https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/keikaku/200508.html

※4 第185回国会 法務委員会 第2号 会議録 2013年10月30日
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigirokua.nsf/html/kaigirokua/000418520131030002.htm

※5 『領土消失 規制なき外国人の土地買収』 宮本雅史、平野秀樹 角川新書
ISBN978-4-04-082262-4

※6 日本国憲法
第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
第七十三条の六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。

※7 サービス貿易に関する一般協定(GATS)(基本構造と主要な権利・義務) 第2回国際化検討会 外務省サービス貿易室 2002年2月
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/kokusaika/dai2/2siryou3_2.html

そが 周作

執筆者:そが 周作

幸福実現党 政務調査会 都市計画・インフラ部会長

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