人民元・基軸通貨への挑戦VS日米豪印クアッド+欧州【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆中国王毅外相、中東6カ国訪問
3月24日~30日、中国の王毅外相は中東6カ国(サウジアラビア、トルコ、イラン、アラブ首長国連邦、オマーン、バーレーン)を訪問しました。
その狙いは、中国は経済協力や新型コロナウイルスのワクチンをテコに、中東との関係を強化し、ウイグルや香港の人権問題を巡る米欧の圧力に対抗することです。
3月27日には、中国の王毅外相とイランのザリフ外相が、25年間の「包括的戦略パートナーシップ協定」に署名をしました。
今回の公式発表では、協定の詳細は明らかになっていませんが、昨年夏にリークされた協定内容によると、中国は、原子力や港湾、鉄道などインフラ投資、原油・ガスのエネルギー開発、5G通信の科学技術協力などを行う見返りとして、イランの原油を安価で購入するというものでした。
中国は、約4000億ドル(約40兆円)の巨額投資を行う予定です。イランにとっては、安定した原油の買い手を確保したことになります。
中国外務省の発表によると、王毅外相は署名に先立ってロウハ二師と会談し、「世界がどのように変わろうとも、中国とイランの関係は変わらないだろう」と話しました。
また、外国勢力の介入や理不尽な制裁を非難し、米国のイランに対する経済制裁を牽制しました。
中国はイランと接近し、米欧の民主主義陣営への対抗軸をつくろうとしています。
◆ペルシャ湾に中国軍駐留か
このような動きをする中国は、具体的に何を狙っているのかでしょうか。
一点目は、中東での軍事的影響力拡大、エネルギー資源確保です。
中国は米中対立が激しくなる中、ここ数年、戦略的にイランへの関与を強めてきました。
例えば、2016年、習近平国家主席初となるイラン訪問を行いました。
今回の協定は、習近平氏のイラン訪問以降、水面下でずっと進めてきたものです。
イランの地元メディアによると、今回の協定で、中国はイランからペルシャ湾のキーシュ島を25年間借りて、中国軍の兵士が最大5000人駐留することができるようになります。
これは、ペルシャ湾に中国人民解放軍が駐留するという事態になります。
さらに、中国はホルムズ海峡の外側に位置する戦略的要衝のジャスク港(Jask Port)にインフラ投資し、軍事拠点化する可能性があります。
ジャスク港を押えればホルムズ海峡を押えることができます。
また、イラン以外でも、2015年、アフリカのジブチに中国人民解放軍の海外初の軍事拠点を設けました。
ジブチは「アフリカの角」と呼ばれ、バブ・エル・マンデブ海峡の南端にあり、アデン湾から紅海、スエズ運河へと船が通過する戦略的要衝です。
ジブチは中国に対してGDPの約70%の債務があります。債務の罠で、中国に掠め取られた国の一つです。
中国はすでにスリランカを「債務の罠」にかけ、スリランカのハンバントタ港を実質的に手に入れています。
スリランカ、パキスタン、イラン、ジブチの港をつなげると、中国の「真珠の首飾り」がより強固なものになることがわかります。
これらの動きを見ると、中国が中東やインド洋で軍事的影響力を拡大し、アメリカなどの影響力を排除しようとしていることがわかります。
(後編につづく)