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中国主導RCEP、アジア影響拡大、菅親中外交の限界

https://youtu.be/yQftp1iUau0

幸福実現党党首 釈量子

◆RCEPの懸念(1)アジア諸国の中国依存度が高まる

アジア太平洋地域のASEAN10か国と日本、中国、オーストラリア、ニュージーランド、韓国を加えた15か国間の貿易を円滑化する「地域的な包括的経済連携(RCEP)」が合意されました。

国内総生産(GDP)の合計が世界の3割を占める巨大経済圏が誕生します。参加国は新型コロナの感染拡大で打撃を受けた経済を復興させたいという期待もあります。

しかし、懸念すべきは、アジア諸国の中国依存度が高まり、中国の影響拡大につながる点です。

トランプ政権の制裁によって貿易や技術分野の米中分断が進んでいましたが、習近平国家主席は、今年4月の共産党の会議で、次のように号令をかけました。

「国際的な産業チェーンの我が国との依存関係を強め、外国が供給を止めることに対する強力な反撃・抑止能力を作らなければならない。」(11/1発行・党理論誌「求是」)

こうした中国の国家戦略のもとに、RCEPが位置づけられていることを知る必要があります。

RCEPは当初、16か国で協議を始めていましたが、2019年にインドが脱退を表明しました。インドは中国などの安価な製品が国内に大量に入ってくれば、インドの対中貿易赤字が拡大し、製造業を守れないと判断したからです。

RCEPにはGDP世界1位の米国は加わらないので、3位の日本としては、2位の中国に主導権を握らせないために、5位のインドを組み込み、バランスを取ることを望んでいましたが、これが叶いませんでした。

李克強首相は11月12日、ASEAN加盟10か国の首脳に対して「ASEANは最大の貿易相手だ」、さらに「南シナ海を管理するための智慧と能力があることを国際社会に示そう」と呼びかけました。

これは米国抜きで、中国がアジアの面倒を見ると言っているに等しいわけです。

その後、11月4日には、軍事拠点として南シナ海に設けた人工島を守るため、中国海警局に武器の使用を認める法案を発表しました。

中国は今後、南シナ海で領有権を争っている国に対して、領土問題で譲歩を迫っていくはずです。中国海警局の武器使用を認める法案は、南シナ海だけでなく尖閣諸島もその対象に入っています。

日本の国益を守るためには、尖閣の領海侵犯を止めるまで、RCEPに合意しないという判断もあったのではないでしょうか。

◆RCEPの懸念(2)米国の間隙を突き、中国は台湾の孤立を狙う

台湾の輸出は国内総生産GDPの66%を占めていますが、今後、RCEPに加入していない台湾の輸出企業は相対的に競争力が落ちることになります。

特に、石油化学製品や繊維製品、工作機械などの輸出品が打撃を受けると言われています。

中国共産党のメディア・環球時報は、台湾国民党の元立法議員の邱毅の言葉を借りて、「台湾にとってRCEPに加入するための唯一の方法は、中国との再統一だ」という主張をしています。

一方、台湾の外交当局は、「新南向政策のもとで、TPPに入る方向で努力している」と話しています。

11月12日、ポンペオ国務長官が「台湾は中国の一部ではない」と発言すると、その直後に、中国当局が「台湾独立派」のリスト作成を進めているという報道がありました。

台湾独立を主張した人物や活動資金の支援者が対象で、外国人も含まれます。中国の刑法が定める「国家分裂罪」に問われる恐れもあります。

日本は、中国主導のRCEPを推し進めることが、台湾の孤立を促していることを知らなくてはなりません。

◆日本主導で「インド太平洋の自由と繁栄」構築を!

もしバイデン氏が大統領になれば、国内でコロナ感染拡大が収まらない中、企業の法人税増税と医療保険料の負担増、そして最低賃金引き上げに踏み切り、間違いなく雇用は悪化します。

地球温暖化対策でも、2050年までに温室効果ガス排出ゼロを目指し、4年間で2兆ドル(約209兆8400億円)を投資する予定です。その予算を捻出するため軍事費を削減することになるでしょう。

バイデン政権になれば、経済的にも軍事的にも弱体化し、アメリカ頼みの時代はあっさり終わってしまう可能性が高くなります。

日本は、「インド太平洋の自由と繁栄」を構築するために、大きな責任と自覚を持たなければなりません。

安全保障面では、日本と米国、オーストラリア、インドによる「日米豪印戦略対話(クアッド)」を強固なものとしていかなくてはならないでしょう。

経済面で、日本は台湾との自由貿易協定FTAや、日本主導で台湾やインドを含んだ自由貿易協定を構想し、中国包囲網を築いていかなくてはならないと考えます。

釈 量子

執筆者:釈 量子

幸福実現党党首

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