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成長戦略インサイト(7)「日本は明確に対中包囲網の形成を」

幸福実現党政務調査会 西邑

―――経済協定「RCEP(東アジア地域包括的経済連携)」が、今月15日に署名される見込みです

RCEPとは、日中韓とオーストラリア、ニュージーランド、ASEAN10か国の計15か国の間で締結される貿易協定のことで、貿易をする際にかけられる関税の撤廃や税率の引き下げ、あるいは知的財産権を保護するためのルールが定められています。

これまで貿易交渉に参加してきたインドは、対中国の貿易赤字が拡大することを懸念して、交渉の最終局面で協定に加入しないと表明しています。

―――日本はRCEPに入ることになりそうですが、日本にとって懸念される点はないですか

問題点を挙げるとすれば、例えば、RCEPによる関税の優遇措置によって、中国製の安い工業製品や農産品が日本国内に入り、日本で作られた品物が国内で駆逐される恐れがあることです。

中国発の新型コロナ感染症が世界的に拡大している状況を踏まえて、日本は本来、“自らで消費するものは、自らで生産する”体制を構築すべきと言えます。その意味では、モノの自給体制の構築がままならない中、日本は今回、RCEPへ加入すべきでなかったでしょう。

さらに、本質的に問題なのは、RCEPが取り結ばれると中国の経済圏が拡大し、米国がこれまで築いてきた対中抑止策が骨抜きになる恐れがあることです。

中国は最近、米国以外の貿易協定の実現を急いできましたが、それは、米トランプ政権との「貿易戦争」を繰り広げたことで、コロナ禍の有無にかかわらず中国経済が疲弊してきたからでしょう。

中国は今、南シナ海や東シナ海などで領土を拡張しようという横暴な動きを繰り広げていますが、中国の経済力が高まれば、「世界の覇権国家になろう」という野望が現実に向かうことになりかねません。

一方で日本は今、TPPを推進しながらRCEPにも加入しようとしています。TPPは中国包囲網を形成する性質があるのに対し、RCEPは中国の経済圏を拡大させる意味合いを持ちます。

日本が、両方の協定に入ろうとしていることが意味しているのはすなわち、「中国に対して明確な姿勢を持っていない」ということでしょう。「八方美人外交」を繰り広げる日本の外交姿勢がよく現れています。

今後、日本は、米国をはじめとした自由主義圏との連携を強化しながら、主導的に対中包囲網の形成を図るべきです。

また、今回、経済協定に参入しないことを決めたインドは将来的に、経済大国の一つになると予想されています。対中包囲網を形成する上では、インドは日本にとって極めて重要な国家です。対中包囲網の形成の一環として、日本は今後、インドとの経済連携を一層深めるような枠組みを作ることを検討すべきでしょう。

以上

西邑拓真

執筆者:西邑拓真

政調会成長戦略部会

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