「沖ノ鳥島」周辺が戦場に?日本最南端の領土と領海を守れ【後編】
幸福実現党党首 釈量子
◆中国が「南シナ海」でやったこと
1988年3月14日、スプラトリー諸島(中国が言う南沙諸島)のジョンソンサウス礁(中国が言う赤瓜礁)で、中国とベトナムのにらみあいがありました。
ベトナム海軍の兵士が上陸して測量し、ベトナム国旗を掲げたところ、中国軍が艦艇からボートを出してベトナム兵70名以上を銃撃して殺害しました。
その後、中国は赤瓜礁に高脚屋という「掘っ立て小屋」を建てて領有権を主張し、満潮時には1,2メートルも水没する岩礁を埋め立て、人工島を建設して軍事拠点化していきました。
ちなみに、沖ノ鳥島は水没することはありません。
2016年フィリピンは、中国が人工島を建設することは、国際法に違反すると提訴しましたが、オランダ・ハーグの国連の常設仲裁裁判所は中国の主張に「法的根拠なし」との判断を示しています。
しかし、中国はその判断を認めませんでした。
◆沖ノ鳥島の戦略的重要性
中国が沖ノ鳥島を狙う理由は、ずばり戦略的な問題からです。
アメリカのシンクタンク「プロジェクト2049研究所」は、2020年から2030年の間に、中国が尖閣諸島と台湾を「同時」に軍事侵攻する可能性が高まっていると警鐘を鳴らしています。
沖ノ鳥島は、沖縄、台湾、グアムからほぼ等距離の位置にあり、アメリカと中国の双方にとって、重要な戦略ルートになるわけです。
台湾有事となれば、横須賀の米軍基地から第七艦隊空母機動部隊とグアムの原子力潜水艦が台湾に接近します。
中国はそれを阻止するために、機雷を敷設したり、潜水艦を展開しようとしています。すでに水中では米中の激しい「つばぜり合い」が展開されていると考えられます。
中国にとって、沖ノ鳥島近海は原子力潜水艦の「ハイウェイ」であり、台湾海峡を通らずに太平洋に抜け、米国本土を核で攻撃することが可能です。
すでに2011年6月には、中国海軍艦隊11隻が沖ノ鳥島から米軍基地のあるグアム島に至る海域で、大規模な軍事演習を行っています。
また、沖ノ鳥島近海は、海上輸送路として南シナ海のシーレーンが封鎖された時の迂回路になります。
日本にとってもオーストラリアから石炭などエネルギー資源や鉱物資源も輸入している沖ノ鳥島近海は非常に大事です。
◆日本は何をすべきか
すでに日本政府は、沖ノ鳥島に灯台を設置したり、海洋温度差発電やサンゴの移植などの試みも始めています。
最近の沖ノ鳥島海域で勝手に調査する中国船に対しては、取り締まりが可能になる法整備の検討に入っています。
日本は憲法を言い訳に、これまで最悪の事態に備えることを放棄してきたのですが、「まず自分で守る努力もしなければ、誰も守ってはくれない」という原則に立ち返るべきだと思います。
幸い米軍は、2019年5月に「海洋圧迫戦略」を打ち出しています。
具体的には、「第一列島線」(日本―台湾―フィリピン)で中国軍を封じ込め、また、長射程の対艦ミサイルを分散して、「中国艦隊」の「船を沈める」という方針を柱にしています。
台湾とオーストラリアも対艦ミサイルの保有を決めており、日本も「台湾有事は日本の有事である」ことを明確にし、米軍の戦略と一体化させるべきです。
また、アメリカ国防省は「インド太平洋戦略報告書」で台湾を「国家」と表現していますが、日本も日台交流基本法の制定を急ぎたいところです。
日本が中国の言いなりになってひれ伏したならば、「地球としての正義」が崩れることは間違いありません。
自国の平和のみならず、自由・民主・信仰の価値を守るためにも、「地球的正義」の観点に立ち、沖ノ鳥島の重要性について、考えを深めていく必要があるのではないかと思います。