尖閣諸島に中国船100日以上連続侵入、「国家主権」とは何か【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆中国公船の尖閣連続領海侵入
今日は、尖閣諸島の領海侵入と「国家主権」について考えてみたいと思います。
中国公船による尖閣諸島周辺海域への侵入が、7月22日に連続100日を超え、7月30日(映像収録時)も連続記録を更新中です。
(※最終的には、中国公船は8月2日まで確認され、連続航行日数は111日。)
国際法上、「海」の場合、領土への「侵略」や「領空侵犯」とは違い、交易で行き来する経緯もあって、そのまま通り過ぎるだけなら問題はありません。「国連海洋法条約」で「無害通航権」が認められています。
しかし、海上保安庁の尖閣周辺海域によける中国船の動向によると、2012年9月11日に、尖閣諸島を国有化して以降、荒天の日以外、毎日のように接続水域や領海への侵入が続いています。
侵入の時間も、7月5日の約40時間と一回あたりの滞留時間は過去最長となり、国連海洋法条約「継続的かつ迅速」な航行(第18条2項)ではなく、居座っている状況です。
尖閣に現れる「海警局」の船も、2018年3月の組織改編で、海警局が、人民解放軍指揮下の「武警(武装警察部隊)」の傘下に入ってから、世界最大クラス1万トン級の巡視船などに大型化しています。
大型船は波が高くても平気で、76ミリ砲など武器の搭載も確認されています。6月の全人代では、「平時は軍と共同で訓練し、戦時は「中央軍事委員会」の指揮を受けるよう定められ、「軍との一体化」が着々と進んでいます。
◆国家主権とは
尖閣について海上保安庁は「中国公船が我が国の主権を侵害する明確な意図をもって航行している」と説明しているのですが、「主権を侵害」とはどういうことでしょうか。
一般に、国家が成立するには、「国土(領土、領海、領空)」、「国民」、「主権」の「3つの要素」が必要とされます。
「主権」とは、「国土や国民を統治するパワー」「最高の権力」のことです。たとえ国民がいても、それを統治する「主権」という機能がなければ、国家としては成立しません。
日本では、「国民主権」という言葉は、社会科でよく習います。「日本国憲法の三原則」が、「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」です。
憲法を勉強すると、真っ先に「主権を持っているのは国民だ」と教わるわけですが、「主権」それ自体の概念である「国家主権」について教わります。
憲法の教科書のように使われる芦部『憲法』」には、主権について
(1)国家権力そのもの(国の統治権)
(2)国内においては最高、国外に対しては独立であること
(3)国政においての最高の決定権
という意味合いが書かれています。
◆「国家主権」の特徴
「国家主権」として、最も代表的なものは、他の国との関係、つまり「外交」です。
例えば、「コロナウィルスの感染が拡大しているC国からの入国は受け付けない」ということを、日本国として決定し、実行することが出来ます。
この場合、C国がその措置にいくら反対しても、日本政府の決定に逆らえません。なぜかというと、これは、日本の国家主権の問題だからです。」
このように、世界のすべての国は、他の国の言いなりにならない、それぞれに独立した力を持っています。これが国家主権の性質の一つです。
もうひとつ、「国内において、最高の権力である」という意味があります。
日本国内には、様々な県や市区町村があり、それぞれに議会があり、地域の政治を決めていますが、「国家主権というのは、こうした地方自治体の権力よりも上位にある」ということが原則です。
「日本はコロナウィルスの感染が拡大しているC国からの入国は受け付けない」と国が決定します。
そこに東京都が、「国としては入国を認めないかもしれないけれど、東京都としてはC国からの入国を受け入れます」といっても、勝手に受け入れることはできません。
国家主権の及ぶ問題は、国としての専権事項であるので、地方自治体はその決定に従わなければならないのです。
このように、「国内において最高の権力である」というのが、国家主権のもう一つの特徴です。
(つづく)